東京での上映も3週目に突入し、ますます絶好調のミュージカル・ホラー・コメディ『カタクリ家の幸福』。9日(土)には、大ヒット御礼舞台挨拶がシネ・リーブル池袋で開催され、初日に続いて登場の“日本一忙しい映画監督(それでいて撮影の合間にこれらイベントにきちっと出席する律儀さに、また脱帽)三池崇史監督、カタクリ家の惚れっぽい子持ちの出戻り娘・シズエを演じた西田尚美さん、そして本作の最終兵器?イギリス国王の血を引くアメリカ軍人・リチャード佐川が舞台に立ち、爆笑の一時が繰り広げられた。
 極秘任務の合間をぬって再び日本の地を踏んだリチャード佐川は、勿論白い軍服姿(松竹衣裳部のネーム入り)で、アコースティック・ギターを奏でつつ、シャウトしながら場内に登場。会場の女性ファンから激しい嬌声があがるが、お嬢さん方、騙されてはいけません。奴は、名うての…
 平凡な一家がささやかな幸福を求め右往左往する様を描くため、オール・スター・キャストが集結した本作。撮影現場の様子を振り返って三池監督は、「現場は楽しかったけど、皆現場以外でパワーを使い果たしちゃってたから、本番中はぐったり(笑)、さくさく撮影は進みましたよ」と語る。なお、劇中で他のキャストと同様華麗に歌って踊ってみせた丹波哲郎さんに関しては、「一生懸命やってくれて…本作が遺作となってよかったと思います」(大嘘)と、作品同様の悪ノリコメントが楽しい。兎に角、個性豊かな面子が揃っていたこともあり、「楽しませてもらって逆にこっちがお金払わなくっちゃって…毎日おひねりが飛んでました(笑)」とのことだ。
 街に出かける場面の衣裳からして、夢見る惚れっぽさ全開で笑わせてくれた西田さん。「子持ちの役ですが特に意識せず、普通に踊ったり子供といたりするところを撮ってもらいました」と演じてみての感想を語ったが、なんでもリチャード佐川との掛け合い場面では、リチャードの台詞や演技に吹きだしてしまいNGが出ちゃうことも、度々あったとか。
 さて、問題のリチャード佐川だが本作の役作りのために、事前にみっちりと勉強をしたそうである。「女ノダマシカ〜タ、タップリ勉強シマシタ。渋谷トカゴホンギナンカデ、タクサンダマシマシタ。タクサンナイテイマス。」と得意げに語る極悪非道ぶりだ。それでも、演技として自信のある場面は多々あるようで、「最初ニシンダトキノ、白眼ニナッテルノミテホシイデス。ダイジナBAMENダ!」と力強くアピールしていたので、これから初めてこの作品を観る方も、また再見、三見しようと思っている方も、ここは注目してやってください。
 なお舞台挨拶の締めは、リチャード佐川の新曲『きのう』が披露され、哀愁溢れるどこかで聞いたことのあるメロデイと、魂を震わす歌声に再び会場は陶然となったが、閉幕後舞台裏でそのネタは高校の学園祭でも演ったものであることが告白されたことを暴露しておこう。最後まで、信用ならない奴だった。その爆笑の悪事は、是非劇場で確かめてほしい。(蛇足:リチャード佐川=忌野清志郎…ただし、舞台挨拶中この名前が出ることは無い徹底ぶりでした)

なお、『カタクリ家の幸福』はシネ・リーブル池袋、シアター・イメージフォーラムほかにて、ロードショー公開中。

□作品紹介
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=1443
(宮田晴夫)