ミュージック・ビデオやドラマの演出などで独自の世界が注目されていた二階健監督が初の劇場用作品として、元LUNA SEAのSUGIZOさんを初主演と音楽に迎え、共演には昨年『バトル・ロワイヤル』をはじめ多くの話題作で活躍した柴咲コウさんを配したスピリチュアル・ファンタジー『Soundtrack』を完成した。音楽と映像が分かち難く織り成すその作品世界は、3月にスペインで開催されるファンタスティック映画祭のコンペ部門に出品されるなど、早くも内外からの注目を集めている。
 この作品の3月のロードショー公開に先立って、2月25日HMV渋谷にて二階監督、SUGIZOさん、柴咲さんによる『Soundtrack』完成記念トークショーが開催され、若い女性を中心にした熱心なファンがつめかけた。
 舞台に登場した3人は、まずそれぞれ完成した作品に関してコメント。
 「この映画は皆さんが想像されるどの映画とも違います。目に見えないものを具現化し目に見えるものを抽象化して描いてますので、頭が固い方が観るとコメカミを押さえて代えることになりますし、子供に帰って観れる方は試写会でも腰が立たないくらい泣いてくれました。たくさん映画がある中で、こういうひねくれた映画があってもいいかと思いました。」(二階監督)
 「5万人の前でも緊張しなかったのに、凄く緊張してます。どうしよう(笑)。二階さんが、素晴らしい映像とメッセージのこめられたとてもひねくれた映画を作りました。僕らはその世界に参加させてもらった感じなのですが、本当に気持ちがオープンで子供の人は楽しいかも。でも、本当の子供に見せたら、怖いとなきました(笑)。今の邦画の中で、いい意味でういた作品だと思います。」(SUGIZOさん)
 「二人のミサを演じました。いつも取材で「映像と音楽が素敵なんです」と言っていたら、監督から「そればかりかい」と言われてしまいました。でも、本当にそうなんです、そういった部分を見て欲しいです。」(柴咲さん)
 トークは撮影中のエピソードから、音楽や映像に関してまで多岐に渡り、とぼけたユーモアを見せるSUGIZOさんを中心に、和やかなムードで進行した。そのエピソードをいくつか紹介すると、本作の撮影は昨年の夏に行われたが、なんでもそのスタジオには“出た”らしいのである。「ネムジャがいたんですよ。あるポイントに来ると、皆眠ってしまうんですよ。霊感とかはあるほうじゃないけれど、スタジオに泊らなくちゃいけない時は怖かったですね。」(SUGIZOさん)。どうも、その口調から冗談なのかマジなのかは判別がつきかねるのだが、ネムジャというものは共通認識だったらしい。「汗とネムジャと戦いながらの撮影でしたね」(柴咲さん)。撮影待ちの時間などには、衣裳のままラーメンを食べに行ったり、バレーボールやバトミントンをしたりで、汗だくになっては監督のお叱りを受けたようだ。「映像は、美しいけど現場では汚かったですよ(笑)」(SUGIZOさん)。
 実は子供の頃から映画がやりたかったというSUGIZOさんだが、本作では先に書いたとおり音楽も担当。ほとんどオリジナル・アルバムといってもいいような、サウンドトラック盤になったとか。「監督から、クランク・イン前に全曲作ってくれって言われて、最初はイメージが湧きずらかったのですが、リハーサーサルでつかめて1週間くらいで書きました。そのリハーサルの時の空気がパックされているんです」(SUGIZOさん)。「日本映画の音楽の使い方はイマイチだなと思ってたんで、事前に全曲作ってもらって、どの曲をどの場面で使うか決めていたんです。それで撮影時も、その音楽を流しながら芝居に合わせていきました。ミュージカルでも、MTVでも、映画でもない新しいものになりました」(二階監督)。こうした拘りから生まれた、全く新しいタイプの日本映画の全貌は、3月9日からのシアター・イメージフォーラムでのロードショー公開で体験しよう。

http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=2569
(宮田晴夫)