1月12日、タリバン支配下のアフガニスタンの人々を描いた映画として話題の『カンダハール』が公開初日を迎え、イランのモフセン・マフマルバフ監督が来日。新宿武蔵野館で舞台挨拶を行った。アフガン情勢の報道がなされない日はないという時節柄か、舞台挨拶の予定された1回目・2回目の上映はいずれも満員札止め状態。客席は年齢層も幅広く、人々の関心の高さがうかがわれた。
 壇上、マフマルバフ監督は、この映画を作ったのは9月11日の事件よりの8ヵ月前であったことから話し始め、ワールドプレミアとなったカンヌ映画祭での上映時を振りかえり「カンヌでいろいろな取材を受けたが、必ず『なぜアフガニスタンなのか? たいして大切ではない問題なのに、それを描いたのは何故なのか?』と聞かれた」と、かつて世界がアフガニスタンに対して無関心であったことの悔しさを吐露。
 また、「9月11日の事件の後に報道されたアフガニスタンの映像の中には、アフガンの民を本当に説明している映像はひとつもなかった。本当のアフガン人がどういう生活をしているのか、何を考えているのかということは伝えていない。この映画をご覧になることで、少しでも彼らの痛みをわかってもらえたら、それで自分の目的は果たされたことになる」と語った。
 本作の撮影準備でのリサーチなどを著作「アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない、恥辱のあまり崩れ落ちたのだ」(現代企画室刊)としてまとめ上げた監督は、映画完成以降、昨秋よりユニセフの依頼でイラン・アフガニスタン国境地域でアフガン難民の子供たちに関するドキュメンタリーの撮影を開始し、彼らに教育を授けようというアフガン子供教育運動(ACEM)に参加している。
 今回の舞台挨拶では、監督のACEMでの活動に思いを馳せた不登校児たちの学校・東京シューレの代表の生徒が花束を贈呈する一幕もあり、監督は「日本の若い少女から花をいただけて嬉しい。できることなら、アフガニスタンに持って行き、一生懸命に勉強をしようと望んでいるアルガニスタンの子供達に日本の子供達からの贈り物だと言って渡したい。彼らに不足しているのは、希望と美しいものだから」と、最後までアフガニスタンを気遣っていた。(みくに杏子)

□マフマルバフ・フィルム・ハウス
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