山本英夫原作のアナーキーな人気コミックを、“日本一忙しい映画監督”三池崇史が、やはり休むことなく映画出演を続ける浅野忠信ら実力派キャストにより映画化した『殺し屋1』が12月22日に初日を迎えた。上映劇場中、シネ・リーブル池袋では、初回上映後と二回目上映前の二回にわたり三池崇史監督を筆頭に、浅野忠信さん、大森南朋さん、塚本晋也さん、SABUさんらキャスト陣と原作者の山本英夫さんが来場しての初日舞台挨拶が行われた。
 二回目上映前、女性を中心に盛大な歓声の中迎えられた、本日のゲストの面々。「よかったと思ってますよ。さっきの回終わった後の舞台挨拶では、皆ぐったりしてたからね。皆さんも観終わったらぐったりして帰ってください」(三池監督)、「さっき観終わった人達はみなすごく静かだったですよね」(浅野さん)。苦笑しながら挨拶する面々。しかし、その鑑賞後の反応こそ作品の持つ過激さ(R=18指定作品)とパワフルさの証明だ。観客の期待もますますヒート・アップしていくのが感じられる。
 今回の映画化にあたり三池監督は、脚本のよさも含め原作のよさがのり移ったものであると、特に原作から変えたという意識はなかったそうだ。それでは、演じた皆さんはどうだろう。
 究極のマゾであるヤクザの垣原を演じた浅野さんは、大分前から読んでいたので自然と作品の世界観に入っていけたそうだ。そのヘラヘラした演技は、「かなり地で演じてますね」ということだ。一方、「最初の頃はプレッシャーも随分あったが、監督に全てを託しました」というのは、主人公イチ役の大森さん。撮影にあたっては、かなり空手の稽古もしたということで、人間を一刀両断に断ち切る足捌きには注目だ。
 インディペンデントから出た世界のカルト監督として名高い塚本さんは、1を操るジジイを怪演。やはり原作を読んでいたということで、「最初は新劇っぽく演じようかと思いましたが、原作ではジジイは30くらいの男がジジイになってる設定なんです。だから、顔はジジイだけど(笑)その必要はないかなと気負わずに演りました」ということだが、その存在感はなかなかのもの。その服の下には、唖然とさせられることうけあいだ。同じく監督でもあるSABUさんは、一見一番まともな漢であるが、強い暴力衝動を秘めた鉄砲玉・金子を演じている。その役作りは、「原作読んでいないんです。そう言ってれば、誰か送ってくれるやろと思ってたけど、送られてこなかったですね(笑)」とのことで、脚本のみから作っていったとのこと。
 さて、原作者である山本さんは、作者としてまた観客として映画をどのように観たのだろうか。「やはり漫画と映画は大きな差がある。これから観る人は、音に注意して観てもらうと違った楽しみ方ができると思う」、活字とは違う映画のポイントを語った山本さんであったが、作品の表面的な差異にも一言。「僕の場合は、血と精子が多いんですが、三池監督は内臓が多いね。そこが大きな違いです(笑)」。
 興味深い話題は色々つきないのだが、肝心の映画も待ち遠しいということで、最後は三池監督による舞台挨拶を締めるメッセージだ。「是非少年少女にも薦めていただいて、突破せよ!ということで(笑)。自分も思い出の中で、こっそりとはいっちゃいけないところに入って観たのは貴重な体験で、許されていいはず。それが正しい映画の見方かと。僕、仕事が無くなったら映倫にいきますから(笑)」。

 なお、『殺し屋1』は、渋谷シアター・イメージフォーラム、新宿ジョイシネマ3、シネ・リーブル池袋、お台場シネマメディアージュで、ロードショー公開中だ。

□作品紹介
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=57568
(宮田晴夫)