「一人の若い女性の話を描いてみたくなった」と語るホウ・シャオシェン監督。
撮影は、今年の1月から2月の日本・夕張国際ファンタスティック映画祭の期間中の夕張でのロケを含めて製作され、すでにカンヌ映画祭などに出品させているが、まだ未完成な作品であると語る。今回は、出品したくなかったと編集段階でのカンヌ版よりさらに10分短くなったディレクターズカット版、まだカットしたいと、新しいテーマに取り組んだ本作は、予告編に過ぎない。
時折日本語で語り、日本には多くのファンをもつホウ・シャオシェン監督の最新作に多くの観客が集まった。
台北で撮影されたシーンは100%室内シーンのみの閉ざされた場所での彼女の生活から夕張の雪の中での使い分けは、絶妙ともいえる映像美は美しい。今後の続編への意気込みにも期待感は高い。

Q.過去に夕張映画祭に審査員として参加され、今回撮影に夕張を使われた感想をお聞かせください。
———8年前に夕張映画祭の審査員として行ったときと印象は特に変わっていませんでした。撮影する前にロケハンをしまして何が同じだったかというと、ある居酒屋がありまして、母と娘3人がいました。娘さんの2人はその時は不在で映画祭の期間だけ手伝いに帰ってくるだけでした。ロケハンでお店を探したのですが、どこのお店も似たような状況で、その中で今回のお店のおばあちゃんの場合は、特に顕著な例で40年前に嫁いできて、子供も育ってしまって帰ってくるのは、お墓参りの時だけ。町の状況がそんなに変わっていないという理由です。
今回、夕張をディテールとしてしっかり描いていないのは、僕の持つ夕張のイメージが口ではいい現しできないような、さみしさというか時間性みたいなものを感じているからです。今回撮影で気がついたことで町並みにキネマ街道という看板がありまして、新作映画というより旧作、名作映画が多く、実は8年前に無かったのですが、あの看板を見て僕はかつての名作を見て、台北の若い人たちがきっと、あるその人のその人の若い青春の時間というものがどこか、それに関わった人たちの記憶の中に留まっているものと似ていると感じました。
Q.来年の夕張映画祭では上映するんですよね?
———はーい(日本語で)夕張の市長さんは27年以上も市長をやっていて、そろそろ定年退職ではないかと思いまして、市長さんがやめてしまうと映画祭も無くなってしまうのです。
Q.映像の出来事は、2001年の1年間の出来事なのか数年の出来事なのか?
———映画の流れの中では1年なのか何年なのかは、私の中ではあまり重要なことではないので、2001年以前もあればちょっと先のこともあります。この作品、2001年がひとつの映画の切り口になっていて、この先俳優さんを追って先のことを製作していくつもりの壮大な予告編になっています。
Q.『フラワーズ・オブ・シャンハイ』の半野さんが音楽
———まず、彼は変な人です。実はこの映画のために半野さんは音楽を作ってくれましたが、使っていません。使った音楽は、リン・チャンの音楽を使っています。当初、私の考えをお伝えして半野さんは、半野さんなりの考えて音楽を作ってくれたのですが、映画が完成しないままになってしまい、中途半端な形でストーリーがどんどん変わってしまったので、使う事ができなくなってしまいました。半野さんには申し訳ないと思っています。
Q.今回、現代の台北をあらわすのに、ほとんど室内で印象に残ったのは、ほとんど日本。監督がこだわった理由は?
———まだ、ちゃんと撮れていないので、次にはちゃんと撮ります。あとガウが日本に来てなにをやってどうしたのかなど、アイディアはあったのですがスケジュールの関係とこれ以上詰め込み過ぎてはと考え撮っていません。ある意味では予告編みたいになっています。次の作品を期待していてください。
Q.5月のカンヌ映画祭版と9月のトロント映画祭版の違いは?
———3月の始めまで撮影しており、1ヶ月のポストプロの作業で5月のカンヌには出したくなかったのです。編集のディテールや長さの間などどうしても満足いかなかったので、カンヌ版より10分短くなっていますが、これでもまだ長いなぁと感じており、1時間30分くらいにしたいと思っています。今のバージョンがディレクターズカット版です。

本作は、ギャガ・コミュニケーションズの配給で公開が決まりました。

□第2回東京フィルメックス
http://www.filmex.net/
(外川康弘)