夢や理想をもとめて学生たちがバンドマンとして活動を始めるが現実の厳しさから地元にかえってくる。現在、韓国でも公開されたばかりの最新作『ワイキキ・ブラザーズ』。前作の青春映画で鮮烈なデビューを飾ったイム・スルレ監督の第2作目。イム・スルレ監督が来日できなかったため、メッセージを託されてプロデューサーのイ・ウンさんがQ&Aに参加しました。

イム・スルレ監督からのメッセージ
———「この作品の音楽の大半が韓国の大衆歌謡で構成されており、韓国の人たちにしか理解できない人物が登場しています。日本の観客の皆様が受け入れていただけるか気になります。東北アジアには普遍的な感情の流れがあって、その感情は共感できるものではないかと思います。人々の生きる姿というのも、どの国でもやはり似ているのではないかと思いますので、日本でも好意的に受け止めいただけるのではないかと思っています。
私は韓国で日本映画が上映禁止されている頃、パリに留学しておりまして、パリで小津監督、溝口監督、黒澤監督の作品を見る機会がありました。私はそこで小津監督の作品を拝見しまして、日本人の人たちに対するマイナスの感情を払拭することができました。
それはなぜかと言いますと日本のお父さんの姿が韓国のお父さんの姿とまったく同じですし日本の庶民の生きてく姿というのも韓国の人たちの姿と同じと思ったからです。
私は映画の力というのは自分とは違うものだと何かが普遍的に感じられたり本質的なものを見つけられるそういうものが映画の力ではないかと感じました。ですから皆様も『ワイキキ・ブラザーズ』をご覧になって韓国の庶民の人たちに愛情をもっていただければ幸いですし、もし韓国の人たちに対してよくない感情があったとしたならば、この映画をマイナスの感情を払拭していただけたらと思います。そうなってくれたら幸せです。」

Q.イム・スルレ監督の前作とはかなり本作はテンポが異なる作品なのですが、製作するにあたってプロデューサーからの指示なのか監督の意図したことなのか?
———監督の前作をごらんになった方で、本作を見た方は、皆さんずいぶん明るくなったねといわれます。結論から言いますとこの作品のスタイルに関して私から彼に影響を与えたということはありません。『ワイキキ・ブラザーズ』に関してイム・スルレ監督だけの世の中を見つめる視点というものが含まれていました、それは前作『スリー・フレンズ』においても同じで監督の世の中を見つめる視点というものが含まれており、前作製作時にかなり暗いイメージなので今回は、できるだけ明るい作品にしようと思っていたようです。
これは私の推測ですが、イム・スルレ監督は、世の中を暖かい目でゆっくりと見つめていくスタイルの作品をこれからも作っていくと思います。
Q.劇中でバンドの演奏シーンや歌などは、実際に役者さんが演奏したり歌っているのでしょうか?
———今、ソウルのほうで興行的に明かしていない秘密になっていまして、あまり言いたくないのですが、男性主人公の人だけは吹き替えでそれ以外の人たちはすべて本人による演奏です。そして録音方法なのですが、最初、事前に音楽の専門家の人たちに演奏をしてもらいまして、それと同じ空間で役者の人たちが演奏にあわせて演技をしたものをそのまま撮影しています。
Q.日本では70年代に学生が映画の中のドラマのように盛んにバンド活動をしていたのですが、韓国ではこの当時は現実的に厳しい状況ではなかったかと思いますが、現実にどうなのでしょうか?
———韓国で私たちが高校生だったころひとつの流行になっていましたが、実際にバンドを組んで演奏活動するとなると、もし模範生だったとしたら模範生を放棄しないといけなかったかもしれません。親からも反対させると思います。かなり勇気をもって活動しないといけないと思います。
Q.韓国は学生時代にバンド活動をしたことがあったのでしょうか?
———私の記憶では、無いと思います。
Q.作品のポスターと作品のイメージとはかなり異なるのですが、なぜあのようなポスターを作ったのでしょうか?
———興行的に韓国の人はシリアスな映画を好まないのでポスターを明るいイメージにしました。
Q.日本では三池監督がプロデューサーのイ・ウンさん製作の『クワイエット・ファミリー』をリメイクして『カタクリ家の幸福』を製作しましたが、感想をお聞かせください。
———私はまだ見ていませんが、見た人の意見をきくととても面白い作品に仕上がっているということなので、早くみてみたいです。

□第2回東京フィルメックス
http://www.filmex.net/
(外川康弘)