今回の上映作品の中で1本だけ日本映画が出品されているのが『ポルノスター』や『アンチェイン』などで話題を提供してくれる豊田利晃監督。新作『青い春』は、今、人気コミック作家として話題の松本大洋の短編を初映画化した作品。
自伝的な青春映画を原作者や豊田利晃監督の実体験に近いエピソードも取り入れ、かつ個性派の役者をうまくキャスティングし新鮮な映像フィルムが完成している。
この日、会場には主演の松田龍平、新井浩文といったメインキャスト、スタッフも会場に集まりいち早いお披露目試写会的な雰囲気の中ティーチインが行われた。

Q.主演の松田龍平さんに対して原作を読まなくていいよと言ったそうですが何故ですか?
———龍平くんに言ったのは、脚本の決定稿が出る前に彼が出演をOKしてくれたので、そのまま原作を読まないで欲しいとお願いしました。それは、コミックと違うものを目指していたので、ほかの出演者の皆さんにも原作のキャラクターのイメージに引きずられないようにとお願いしました。
Q.本作もそうですが監督の作品のエンドクレジットでテーマカラーのような背景色を使っていますが、その意味はあるのでしょうか?
———エンドロールの最後までが僕の映画だと思っていますので、お客さんがエンドロールで席を立たないで欲しいと思って考えたことです。
Q.映画監督になるための秘訣はありますか?
———僕はなにも訓練も受けていないのですが、最初に言われたのは、脚本を書けと言われたので、私も監督になりたかったら脚本を書けといいます。私も脚本に一番苦しんでいます。
Q.助監督だけの経験で映画学校などにもいかなくてもいいのでしょうか?
———助監督だけは2回だけやりましたが、2回は必要だと思います。現場が一番学べると思います。
Q.撮影期間は?撮影中に脚本が変わったということはありますか?
———撮影期間は、3週間です。撮影中にも脚本の手直しをしました。
Q.監督の作品では、音楽でかなり叩きつけるようなロックを使われていますが、今回は“BEAUTIFUL DREAMER”がかなり効果的に使われておりましたが、選曲に関してお聞かせください。
———本当は“禁じられた遊び”を使いたかったのですが権利料で使えなくて(笑)、タイトルが気に入って“BEAUTIFUL DREAMER”を使いました。役者の高岡(蒼佑)君はギターが弾けなかったのですが、連取してもらって弾いてもらいました。血塗れで倒れているところのバックで流れる“BEAUTIFUL DREAMER”は僕が弾いています。
Q.今回、顔のアップの時に下からなめるようなカットが多かったのですが、それは今回の無常感のようなものを意識したものでしょうか。また、屋上での夜通しの高速撮影はどのように撮影されたのでしょうか。
———あまりなにも考えていません、生理的なモノですね。サッカーの場面は、カメラマンの笠松さんが一緒に走って撮影しています。龍平は兎も角、笠松さんは体力的なこともありましたが(笑)。屋上のシーンでは、夕方の5時くらいから朝の6時くらいまでコマ撮りで撮っています。ただ、真夜中の3時間くらいは休んでます。新井君も笠松さんも
Q.売店のおばさん役で小泉今日子さんが出ていましたが、その経緯は?
———小泉さんが松本大洋さんの大ファンで、脚本を読まれて是非出たいということになりました。お姉さんが、実際学校の売店のおばさんだそうです。それと、去年一緒にカラオケにいったから、また会いたかったのかな(笑)。
Q.青木(新井浩文さん)の剃りこみは実際にいれたのでしょうか?
———本人凄く嫌がったけど、眉までそらせました。その状態が少し伸びたところで『GO』に出ましたね。
Q.手をたたくシーンは実際に撮影したんですか。
———はい、屋上の上に屋上がある設定になっていましたが、上の屋上は可動式のセットで、落ちる場面ではその動かした下の部分にマットがひいてあり、そこに落ちてもらっています。体をワイヤーで括って撮影している部分もあります。
Q.キャスティングはどのように選ばれたのですか?
———松田龍平くんは是非仕事がしたいと思っていてお願いしました。後はオーディションですね。
Q.このストーリーを読んでどこに惹かれて映画化を考えられましたか。また監督の高校時代はどのような生徒だったのでしょうか?
———原作は『幸せなら手をたたこう』というすごく短い短編で青木と九條が出てきますが、短い分まだまだ描ける部分が沢山あるなと思い作りました。高校は大阪で悪い学校ベスト3に入る男子校で、将棋をやってましたので1年間に70日くらい休んで、3年の時に中退しましたよ。こんなに不良じゃなくて、それを遠くから見る少年でしたね。
Q.学校の先生にマメ山田さんを起用した理由は?
———キャスティグ中にマメ山田さんのことを知って、ああいう先生がいたら一つのファンタジーとして見えると思って出てもらうことにしました。
Q.私の高校時代も閉塞感を感じていたので、「ここは天国だよ」「それじゃ未来はみつからないね」という台詞がすごく心に残ったんですが、監督が脚本を書いていて心に残った台詞はどれでしょうか。また、撮られていてご自身の高校時代と重ね合わせて撮られていたシーンはありますか?
———台詞に関しては、全体のバランスだと思いますので、特に一つというものはないです。僕の高校時代では、トイレのエピソードや髪を握ったまま殴るというのはありました。屋上で手を叩くというのは、原作者の松本大洋さんの実体験です。

なお、『青い春』は2002年の春に渋谷のシネマライズにて公開される。

□第2回東京フィルメックス
http://www.filmex.net/
(外川康弘・宮田晴夫)