昨日、第2回東京フィルメックスのオープニング作品として上映され、スケールが大きくなおかつ繊細なドラマ展開に満員の客席から喝采を受けた韓国映画『武士(ムサ)』の公開プレス・ミーティングが19日の午後2時より、有楽町西武A館8Fに特設されている“東京フィルメックス情報サテライト”にて開催され、主演のチャン・ウソンさん、キム・ソンス監督、チョン・ミヌファンプロデューサーがあ出席した。
 挨拶では、ミヌファンP、ソンス監督がそれぞれ『武士(ムサ)』という作品が、韓国映画の枠を越え日・中・韓の共同プロジェクト“アジア映画”であることを強調。ウソンさんは、会場に来ていた一般のファンの方に視線を送りながら「いい日に、いい人たちとお会いできて嬉しく思っています」。続いて質疑応答が行われた。

Q.チャン・ウソンさんに、今回の役柄のどのような点に遣り甲斐を感じましたか。また、チュ・ジンモさんが演じた将軍役もやってみたかったと伺いましたが?
チャン・ウソン——最初にシナリオを読んで、ヨソルという役はこれまで私が演じてきた役とは違う印象を受けました。非常に重みがあり深い内面を持った人物だです。また、将軍の方もとても素敵な人物に思えました。素敵なだけではなく、人間的な感情の幅も広い役柄だったので、そちらの方にも少し惹かれたのです。今まで韓国の評論化家が考えるチョン・ウソン像というものがあったら、それとはガラリと変わる印象が出せるし、欲を言えばこれを演れば賞が貰えるのでは?という気もして(笑)。映画が終わってから、やはりヨソルの方でよかったかなと思いますがもう少し役になりきれればよかったかなという気もします。俳優と言う職業を選んでよかったと思うのは、映画を作り終わった後に観客にそれをお見せして、観客に夢を与え満足していただけるという点だと思うのですが、もう一つ俳優と言うのは映画の中で様々なことが学べるということがいいと思います。今回は、馬の乗り方を習ったりできましたよ。

Q.キム・ソンス監督に、これまでの3作品は現代劇でしたが、今回の作品で時代劇を取り上げた理由はなぜでしょう。また、2作目以降全てチョン・ウソンさんを起用されてますが、そのことに関してお聞かせください。

キム・ソンス監督——私自身が都市に生まれ育ってきたので、他の韓国の若い人々と同様に大都会の中で培われた考え方・経験を描いた作品が多かったです。でも、今回の作品は私が学生時代から作たく思い、またプロデューサーとも作りたいと話してきた夢がかなった作品なのです。私は映画の勉強をしていた頃にサム・ペキンパー監督の『ワイルド・バンチ』『戦争のはらわた』、黒澤明監督の『七人の侍』などを観て、そうした作品を作ってみたいと思いました。それらの中には、苦難の道を生きる男達の姿がありのままに描かれていました。そして、苦難にぶちあたったときに、平凡な人たちはどのような絶望を感じて、どのように生きていくのかということに興味があり、『武士(ムサ)』のような作品を作ってみたいと思ったのです。もう一つ、アジアの有能なスタッフ・キャストといい場所で撮影をしたいと常々思っていました。映画は国境や言葉を超えて語り合えるものですし、言葉を超えたプロジェクトをやりたいと思っていたのです。
チョン・ウソンさんとは『ビート』『太陽は無い』『武士(ムサ)』と3作品を撮っていますが、これからもできることなら、彼とずっと映画を作っていきたいと思っています。普段のチョン・ウソンさんは控えめな方で、現場でも本当に一生懸命演技をする素晴らしい俳優で、どんなスタッフとも一緒に仕事ができる方です。私は俳優としては勿論、個人的に普段の誠実で控えめで人間的に素晴らしい点に感動します。彼は映画で、観客から親しみを感じてもらえる俳優であり、また特別なカリスマも兼ね備えていると思います。

Q.チャン・ウソンさんに、砂漠のシーンは大変だったと思うんですけど、苦労話お願いします。
チャン・ウソンさん——ロケ地は昼間は48度〜50度、そして夜になると寒さを感じるほどに下がります。どちらかというと、昼の暑さでスタッフの皆さんは苦労されていたようです。それでも、私達が思い描いている映像を作るための過程だと理解していましたので、大変だとか辛いとか思ったことはありませんでした。今回の作品は、これまでの作品以上に思い出深く残ると思います。

 チャン・ウソンさんは記者会見終了後、会場に来ていたファンの方々に時間が許す限りで握手に応えていたり、監督の言葉どおり気さくな人柄がうかがえた。
 なお、有楽町西武A館8Fで“東京フィルメックス情報サテライト”では、一般の観客もその場で楽しめる関連イベントが連日開催されている。今後の予定は、

11月21日 13:30〜15:00グレゴール教授の公開授業“ベルリン映画祭への道”
11月22日 13:30〜14:30『カンダハール』主演女優ニルファー・パズィラ公開プレスミーティング(急遽中止となりました)
11月24日 13:30〜14:10(企画検討中)
11月25日 12:15〜12:35『フラワー・アイランド』監督ソン・イルゴンQ&A
11月25日 15:00〜15:20第2回東京フィルメックス結果発表先行ミニ会見

などが開催される。映画の合間に立ち寄ってみよう。

□第2回東京フィルメックス
http://www.filmex.net/
(宮田晴夫)