12/14(土)、渋谷・ユーロスペースにて、映画『ツングースカ・バタフライ ―サキとマリの物語―』が公開初日を迎えた。井口昇、山口雄大、中平一史、友松直之、城定秀夫、西村喜廣、光武蔵人等、個性的な監督達に愛され、セクシー&バイオレンス映画のミューズとして活躍してきた亜紗美。日本だけではなく、北米、ヨーロッパのジャンルムービーファンの間でも熱狂的なファンを生んできた。そんな亜紗美の引退作となる本作。

過去の自分の過ちから逃れられない生活を送るサキ(亜紗美)。孤独な少女マリ(丁田凛美)と出会い、友情を育むがマリの母が特殊詐欺グループのボスの手に落ち、マリにも魔の手が及ぶ。サキは怒りと後悔に打ち震えながら反撃に出るのだった!

監督はゆうばり国際ファンタスティック映画祭等でインディーズ映画界のレジェンドと評される『ダイヤモンドの月』、『シークレットワルツ』の野火明。アクション監督は、『女体銃 ガン・ウーマン/GUN WOMAN』、『KARATE KILL/カラテ・キル』に続いて亜紗美と3回目のタッグとなる田渕景也。ラストバトルにふさわしく、亜紗美を知り尽くした男が亜紗美の潜在能力を極限まで導き出す!

満席となった観客の前に亜紗美、加藤理恵、JONTE、黒板七郎、笠原竜司、エグゼクティブ・プロデューサーの久保直樹が登壇した。
劇中のサキのいでたちで登場した亜紗美は、感激を抑えきれない表情で、
「最後の作品に共演者の方に恵まれて初日を迎えられたこと、感謝しかない。泣いても笑っても最後の作品になるので、皆様にどう思って頂けるのか楽しみでしようがないですね」と語った。

亜紗美と壮絶なバトルシーンを演じた笠原竜司は、
「作って2年経ちましたので、今日は新鮮な気持ちで見させて頂きたいと思います」と劇中とはうって変わって穏やかな笑顔を見せる。
軽妙な演技で登場シーンを和ませた黒板七郎は、
「映画はみんなに見て頂いて完成でございます。皆さんが胸に刻んで拡散して頂ければと思います」と作品が広がるよう呼びかけた。

引退作にいつも以上に熱い思いで臨んだと言う亜紗美。引退作の製作を快諾したという久保エグゼクティブプロデューサーは、当初「桶川ストーカー事件」を元に原案を作ろうとした。試行錯誤の末、子どもの虐待、特殊詐欺、といった現代の社会問題や犯罪を背景に置くストーリーとなり、人間模様を大きなテーマとしたアクション映画として完成したという。

加藤理恵は、本作を“女性の葛藤が繊細に描かれている映画”と語る。
「アクションだけではなく、女優・亜紗美、人間・亜紗美の魅力もすごく詰まっています。この作品は現代を一人で戦わなきゃいけない女性たちの話でもあると思っているので、女性の方にも見ていただきたいと思います」
初挑戦となった母親役について、マリの母親・歌子を
「母親になる自覚や覚悟もないまま母親になってしまった女性」と解説。
「子供への愛情もありますし、それと自分自身の欲望や自分かわいさと戦っている役。私にとっては新しい挑戦だったので、とても思い出深い作品となりました」
亜紗美の名前を間違えかけたことを亜紗美に突っ込まれつつ、華やかな笑顔を見せる。

映画初出演のJONTEは、「楽しく現場を過ごさせていただきましたけども、試写会で見るとすごくこそばいと言うか」とはにかんだ表情を見せながら、
「緊張もありましたけど、楽しく過ごさせて頂きました。いい経験になったと思っています」
普段はライブで自由にパフォーマンスを披露しているが、登壇者が整列する舞台挨拶の場は少し緊張していると明かす。
「ちょっと慣れないところがありますね。ちゃんと喋らないと、みたいなね」
亜紗美から「喋れてるよ、喋れてる!」と暖かい合いの手が入ると「あー、よかった」と深く息をつく場面も。
劇中では、ファンにとって衝撃的な役柄を演じた。
「初映画なので全て見ていただけたらなと思います」

最後に亜紗美は、
「これが亜紗美最後の作品になります。素晴らしいキャストの皆さんに支えていただいて出来上がった作品です。温かい目で最後まで見ていただければと思います。本日は本当にありがとうございました」

一緒に現場を闘った者同士のチームワークの良さが感じられる舞台挨拶の間、座長として共演者のコメントに突っ込みや合いの手で率先して明るく場を盛り上げる亜紗美の姿が印象的だった。

サプライズで、発案者の黒板と共演者一同に見守る中、ジェラトーニを再現したバルーンアートが亜紗美に贈られ、テンションが上がりまくる一場面も。

ファンの心尽くしの花束を手に、大きな拍手に送られて亜紗美は目を潤ませながら舞台を後にした。

渋谷・ユーロスペースでの公開は12/19(木)まで。連日舞台挨拶を行う。
12/21(土)より名古屋・シネマスコーレにて1週間の上映予定。
俳優達のそれぞれの役を生きた演技、涙腺崩壊の肉弾戦のアクションが一体となった、まれに見る傑作。亜紗美のファイナルバトルを見逃すな!

 

レポート:デューイ松田