8/31(土)シアターセブンで上映中の『夏のホラー秘宝まつり2019』の舞台挨拶が行われた。幽霊に女性が犯されるというショッキングな題材を描いたエロティック・ホラー『シオリノインム』から佐藤周監督・松川千紘さん・古谷蓮さん。心霊映像の撮影に命をかける”怪談新耳Gメン”が、心霊スポットに体当たりの殴り込みをかける、一切のやらせなしのガチンコ心霊ドキュメントシリーズの最新作!『怪談新耳袋Gメン
孤島編』谷口恒平監督、山口幸彦プロデューサー。大盛況となった当日の模様を紹介したい。

 

『シオリノインム』編

企画のなりたち

去年、松川さん出演した『心霊ツアーズ』。オーディションの参加者タレント数人が「幽霊とセックスをしたことがある」と語ったという。
「プロデューサーの山口さんが“面白い!幽霊とセックスする映画を撮ろう!”となり、僕もニヤニヤ顔で“いいですね!幽霊とセックスする映画撮りましょう!”となりました」と佐藤監督。
 
『心霊ツアーズ』は4人のタレントが水着姿などミッションに沿って心霊スポットを攻略し、ポイントを競い合う作品。さらにキネカ大森での観客の審査ポイントを合計してキャンペーンガールの座が確定する。見事1位となり、『ホラー秘宝ガール』となった松川さん。出演作品がホラー秘宝まつりで上映されると言う特典のもと、山口プロデューサーと佐藤監督が企画していた『シオリノインム』に主演が決まった。
当初は体当たりの演技が必要なこの作品を松川さんに受けてもらえるのか心配だったという佐藤監督。オファーを受けた松川さんは、「企画の内容というよりは、主演で作品を作って頂けるということで気持ちが舞い上がっていて内容は全然耳に入っていませんでした(笑)」
その場では2つ返事で引き受けたが、家で企画書を読んで驚いた。
「いろんな意味で。エロとホラーの闘いみたいな(笑)」
「プロットは“目に見えない影と交わる詩織”とか書いてあって、どう撮るのかよく分からないものを渡したので混乱しただろうなと」と、佐藤監督。
制作が進むにつれ、官能小説のような内容が当初とは変わりホラーの王道に寄った内容になっていったという。

ホラーファンなら『シオリノインム』のあらすじから『エンティティ/霊体』(’82)を連想するだろう。霊が女性をレイプする映画で、大ファンだという佐藤監督。別途それに近い企画も書いていたという。
「プロデューサーの山口さんが『心霊ツアーズ』のオーディションに来た女の子たちに話を聞いたところ、幽霊とのセックスは気持ちいいらしいと。それもどうかと思うんですけど(笑)、そういう子が何人かいて、そっち側に寄せていった方がいいのかなって。かつ、“快楽が罪”とするために、ドラッグやギャンブルなど、危険な快楽、依存症が裏テーマとしてあります」と語った。
 
 

怖いシーンは?

松川さんがお気に入りのシーンについて
「一番はベッドで襲われて揺れてるところにユウスケが入ってくる。あそこが好き」と語る。佐藤監督は
「バケモノに襲われているところは横位置で狙って撮りました。松川はすごいなと思った。目を見開いたままで」長尺のカットの松川さんの集中力に感嘆したという。
 
 

アナログへのこだわり

ちなみに霊現象のシーンは人力でベッドを揺らしたり、松川さんの下半身を押したり引いたり、助監督を務めた『愛の病』の吉田浩太監督他、スタッフ総出で行った。
松川さんが引きずり倒されるシーンでは、ダンボールを下に敷いて滑りやすくしたり、アナログで効果的な手法が取られている。佐藤監督は
「バケモノは合成ですが、基本は“アナログ万歳!”が裏テーマ」と明かした。
バケモノは黒い塗料をペイントするだけでは、安っぽく、ローションを塗ることで禍々しいものになったという。
口に手を入れられるシーンに臨んだ松川さんは、当初コーラ味と聞かされていたが。
「コーラじゃない、化学薬品?寿命が3年縮みました。禍々しい味(笑)」と苦労を振り返った。
 
 

古谷さんにオファーした訳とは

詩織に思いを寄せる同僚ユウスケを演じた古谷さん。「最初にいいなと思ったのは、見ての通りのイケメン。鼻から下が長い」
と佐藤監督。これには古谷さんも「そんなこと初めて言われた!」と爆笑。
「いやらしい感じがいい(笑)。声質もいい。後半の展開から身長差が良かった。期待によく応えてくれたと思います。そもそも芝居がちゃんとできているから」と信頼を寄せた。

古谷さんが詩織のために塩を盛るシーンはどういう気持であの表情になったのかよく聞かれる、という佐藤監督。
「なんの意味あるんだろうと(笑)」と古谷さんは戸惑ったことを明かす。
アップのシーンはどれだけきれいな手付きで盛れるかということにこだわったという。
「どれだけきれいに、慣れた手付きで、どれだけ少ない回数できれいに盛れるか」
その甲斐あって、可笑しくも妙な緊張感があるシーンとなった。
 
 

作品を盛り上げるキャストの力

お節介な詩織の友人役で登場した辻凪子さん。佐藤監督の現場は初めてだったが、
「現場で率先して盛り上げてくれた。助けられた」と佐藤監督。
辻さんは松川さんと同年代を演じるにあたって「おばさん化した」という。
古谷さんも「見事でしたよね」と感心する。
イタリアンの店のオーナーを演じた宇田川さや香さんは「下世話な役をいい感じに演じてくれた」と佐藤監督。
「セリフが擬音ばかりだったので、人と一緒のシーンの安心感ときたら(笑)」という松川さん。期待に応えようと喘ぎ声を研究した。ピンク映画やアダルトビデオ観て、地味な役を演じる女優さんの喘ぎ声や逆に野獣、女豹の叫びに近い感じ、とバリエーションを研究して撮影に臨んだという。
 
 

作品のこだわりについて

観客の質問を受け佐藤監督は自身の作風について、
「学生時代から映画を撮っていたが、人を殺せば面白くなるというのは安易。殺さずに面白く撮りたかった。彼女の依存症への無限地獄が始まる恐怖を描きたかった」とこだわりを語った。

他の観客からは、詩織がキャンドルづくりにはまっている設定は、松川さんの趣味に合わせて書いた脚本なのか?という質問が。
指摘のとおり、劇中に出てくるキャンドルのアイディアは、松川さん自身がこだわって出したとのこと。この設定により、詩織のキャラクターに奥行きが加わったことは間違いない。
 
 

インム感のあるキャンドル

最後に松川さんお手製のおっぱいキャンドル2個セットと、3人のサイン入りチラシを巡ってじゃんけん大会が行われた。
松川さんが「いつもバラのボディソープを使っていて、バラの香りのするので同じ香りをつけています。いいインムが見られるかも」とキャンドルを紹介。
じゃんけん大会は大盛り上がりで、勝ち残った上位3人がすべておっぱいキャンドルを希望するという結果に。
トーク終了後もロビーでは観客たちと3人の交流が続いた。
 
 
★9/6(金)、第6回『夏のホラー秘宝まつり』ホラー総選挙で『シオリノインム』はグランプリを獲得した。

(レポート/デューイ松田)