写真左から、丸岡役の小林陽翔くん、谷口恒平監督、北山役の埜田進くん、ダイナマイトウルフ役の赤城さん、主人公ヒロト役の松田優佑くん、いじめっ子の輝男役の神保舜莉紋くん

3/22(金)、大阪市北区のシネ・リーブル梅田にて、映画『おっさんのケーフェイ』の公開が始まった。この作品はCO2の助成作品として2016年に制作、翌年’17年に大阪アジアン映画祭で初上映。19年1月の東京・K’s cinemaでの公開を経て、関西に戻ってきた。

カツアゲにあった小学生のヒロト(松田優佑)は、正体不明の酔っ払い中年・坂田(川瀬陽太)にプロレス技で助けられる。坂田が引退したダイナマイトウルフだという確信を持ったヒロトは、友達を巻き込んでプロレスを教えてもらうことに。プロレスに夢中になるヒロトたちに、いじめっ子の輝夫が「なぜロープから跳ね返って相手の技を受けるのか』と揶揄するが答えられない。そんな中ダイナマイトウルフが政界進出するというニュースが。虚実入り乱れる日常に彼らが見つけたものとは?

関西公開初日舞台挨拶には、谷口恒平監督、ダイナマイトウルフ役の赤城さん、主人公ヒロト役の松田優佑くん、ヒロトとプロレスに引き込まれるデコボココンビである丸岡役の小林陽翔くん、北山役の埜田進くん、いじめっ子の輝男役の神保舜莉紋くんが登壇。子どもたちとは約2年ぶりの再会という谷口監督は「久しぶり!大きくなったね」と感慨深げだった。

赤城さんの映画出演は、斉藤工さん、中川翔子さん共演の『兜王ビートル』(’05/河崎実監督)に続き今回が2度目。谷口監督から当時と比べての感想を聞かれた赤城さん。登場シーンの多さだけでなく、より俳優としての演技も求められたことを挙げ、
「プロレスラーだから勉強になったというのはちょっと違うかもしれないけど、すごい勉強になりました」

覆面を取る覆面レスラーというキャスティングで苦労したという谷口監督。
「道頓堀プロレスの方に協力してもらって、その中で唯一顔出しOKの覆面レスラーということで、赤城選手をご紹介いただいたんです」
「それだけですかね。僕が選ばれた理由っていうのは(笑)」
と、赤城さんがすかさず突っ込む場面も。


登壇した面々の中で俳優としてのキャリアが一番長いのは、主人公ヒロト役の松田優佑くんだという。小学校2、3年生の頃から演技を始めた。撮影で印象に残ってるシーンを尋ねられ、坂田の家に行くシーンを挙げた。坂田との会話で谷口監督から泣くよう指示が出た。
「何で俺が泣く必要あるんかなと思いながら泣いたのに、何も言われなくて(笑)」
「ごめんごめん。今思えばそんなに泣かなくても良かった(笑)。あなたの方が正しいです」谷口監督の謝罪に笑いが起こる。

同じシーンに同席したいじめっ子の輝男役の神保くんは、坂田を演じる川瀬陽太さんをこう回想する。
「いつも飲んでいる鬼殺しをぶんって投げた時に、めっちゃ汁がかかりました。あの時の怒ってる気迫がこっちにも伝わってきて、すごい怖かったです」
「あのシーンの撮影が終わった後に、神保くんが川瀬さんに“川瀬さん演技上手いですね”って。それを聞いて死にたくなったと川瀬さんが」と谷口監督。東京公開の際、事あるごとに川瀬さんがネタとして披露していたというエピソードに場内は爆笑となった。
「すみません(笑)」と恐縮する神保くんに谷口監督は、
「いやいや。でも正直な反応だから」と勇気付けた。

ダンススクール・EXPG STUDIOに通っている神保くん。将来はダンスも演技もできることを目指したいと言う。
憧れのダンサーはビデオ見て感銘を受けたという、スキーターラビット(スチーブン・マーク・ニコラス)。演技では『まんぷく』の松坂慶子さん、自分を役柄に寄せる姿に憧れるという。その説明に四苦八苦する神保くんに、
「ありがとう、気持ちは伝わった(笑)」と谷口監督。


同じくEXPG STUDIOからオーディションに参加したのが、丸岡役の小林陽翔くん。現在は高校受験を控えているためダンスをやめたという。
「たまにノリのいい音楽が流れたりするとたまに踊りたくなるときがあります」
「そういう時は踊ったらいいと思う。自分を抑えずに」
と、谷口監督はエールを送った。

演技が初めてだった小林くんは、学校の撮影で後悔しているシーンがあるという。
「北山も俺も忙しいねん、というところが変なトーンになっちゃったんです」
谷口監督は「今やったら、どんな感じでやる?」と突っ込みつつ、
「あのシーンはプロレスを教室の中でやるというところで、子供達も演技じゃないですけど、そういう要素を取り入れてやっていたから OKだったと思います」と安心させた。

北山役の埜田進くんは短編映画への出演経験がある。この映画をきっかけで映画を撮る方にも興味が出たという。オーディションを受けたり、『おっさんのケーフェイ』の後他の映画に出演した。そして“のだすすむ”名義の自作の手描きアニメ『新人小野』がGYAOとAmuseの「NEW CINEMA PROJECT」で審査員特別賞を受賞した。

撮影で印象に残っていることを尋ねられ、実況の台詞を全部覚えるのが大変だったと明かす。
谷口監督も、長台詞の上、撮影の終了時間が迫る中一人でカメラに向き合う大変な撮影だったと回想する。プロレスシーンの記憶を辿りながら一生懸命やったという埜田くん。
「本当脳味噌が熱くなって 大変でした」


最後に一同から観客に向けて感謝の言葉が贈られた。
赤城さんは「この映画はまだまだ動いていくと思うので、それが落ち着いてからでもいいので『おっさんのケーフェイ2』を期待してます。その後の おっさんがおじいになったって言う(笑)」


松田君からも「映画見ていただいてありがとうございました!2があれば、出来れば出してください」
谷口監督は「もちろんです!」と力強く答えていた。


「この映画は2016年の年末に大阪の道頓堀プロレスの人たちと子どもたちと一緒になって作りました。2017年の大阪アジアン映画祭でこのシネ・リーブルで上映させてもらって、時間かかりましたけどもロードショーという形で戻って来れて本当に嬉しく思います。これからこの映画をもっとどんどん大きくしていきますので、温かく見守ってください。今日本当にありがとうございました!」
と谷口監督が締めくくった。


舞台挨拶を見て気が付いたのが、子供たちが随分と言葉に気を使っていることだった。対象にした相手に失礼がないよう、言葉を言い換える場面が何度かあった。大人たちと仕事をしていく中で身に付いた配慮だと思われるが、仕事や日常生活を円滑に送るための気遣いは今後も彼ら自身を守ることになるだろう。
そんなある意味大人な彼らに、谷口監督が何気なく発した言葉が印象に残っている。
「そういう時は踊ったらいいと思う。自分を抑えずに」
谷口監督の姿が坂田と重なった。

今後の上映については、3/23(土)から愛知・シネマスコーレ。4/6(土)から京都・出町座、神奈川・横浜シネマリンの予定となっている。出町座は1週間限定上映で初日は谷口恒平監督、川瀬陽太さんの舞台挨拶を予定している。
ぜひ劇場で彼らの大一番を見届けて欲しい。

(レポート・デューイ松田)