太平洋戦争末期、子どもたちを守り抜いた保母たちを描いた実話『あの日のオルガン』が、絶賛公開中です。本作は、親元から遠く離れた荒れ寺へ、
53人の園児たちと疎開生活をスタートさせ、託されたいのちを守りぬこうとするヒロインたちの奮闘を描いた真実の物語です。
本作では、若き保母たちが、迫りくる空襲から子どもたちのいのちを守るべく親たちを説得し、日本で初めて保育園を疎開させようと模索する中、1944年11月24日、東京で初の空襲が起き、200人ものいのちが失われるという出来事が起こります。そして翌日、保母たちは子どもたちを連れて、現埼玉県蓮田市にある妙楽寺へと出発します。到着してからは、問題が山積み、24時間保育が強いられつつも奮闘する日々に、待ったなしの空襲が東京を襲い、遂には1945年3月10日、10万人ものいのちが失われた「東京大空襲」が起き、遠くはなれて住む園児や保母たちの家族にも悲劇が訪れます。
この度、劇中でも描かれている、多くの大切な命を失った「東京大空襲」を、忘れてなはならないという思い、そして、来たる新しい時代に向けて平和への願いをこめたスペシャルイベントを実施いたしました。
当日は、平松恵美子監督、本作の企画を担ったシネマとうほくの鳥居明夫さんと共に、劇中に登場する園児“けんちゃん”のモデルである田辺健之さんや、同じく園児だった佐瀬玲子さんと長尾満栄さん姉妹が登壇。
当時、田辺さん自身は、空襲には合わなかったものの、「東京大空襲」によって家族全員を亡くし、一方の姉妹の姉・佐瀬さんは、実際にその空襲を経験し、その時の経験がトラウマとなり、子どもながらに東京を離れて自ら疎開することを決意しました。疎開先である妙楽寺で共に過ごした経験をもつ田辺さんと佐瀬さん長尾さん姉妹ですが、三人が再会するのは、なんと74年ぶり。月日が経った今だからこそ伝えなければならない「東京大空襲」について、そして、疎開時の思い出や経験談を語っていただきました。
 さらに、元は阪神・淡路大震災時の復興支援ソングである本作の主題歌「満月の夕2018ver.」ですが、3/10は東京大空襲、翌日3/11は東日本大震災が起こった日であることから、鎮魂歌としてアン・サリーが、平和の祈りを込めて生歌を披露いたしました!

【 映画『あの日のオルガン』スペシャルイベント 概要】

■日時:3月10日(日)
■場所:新宿ピカデリー スクリーン6 
■登壇者(予定):アン・サリー(主題歌)、平松恵美子(監督)、鳥居明夫(企画)、当時疎開保育園の園児3名
(田辺健之[現78歳/当時5歳]、佐瀬玲子[現80歳/当時6歳]、長尾満栄[現76歳/当時2歳]) (敬称略)


1945年3月10日、ちょうどいまから74年前の今日この日に起こった「東京大空襲」。映画『あの日のオルガン』でも、遠くはなれて住む園児や保母たち家族にも悲劇が訪れる様子が描かれましたが、今回、10万人もの大切ないのちが奪われた“東京大空襲”を忘れてはならないという想い、そして来る新しい時代に向け平和の願いをこめ、スペシャルイベントが開催されました。ゲストには平松恵美子監督、企画の鳥居明夫さんが登壇。そして劇中で疎開した園児“けんちゃん”のモデルとなった田辺健之さんと、同じく妙楽寺へ疎開をしていた佐瀬玲子さんと、長尾満栄さんご姉妹が本イベントで74年ぶりに再会!まずは平松監督と鳥居さんが「当時は日本のあちこちで空襲があり、10万といわず、30万とも50万とも被害者がいたと言われています。この3月10日という東京大空襲の日に、このように皆様と一緒に哀悼の意を捧げられることを嬉しく思っています」(監督)、「この企画が立ち上がってから、42年の歳月が経ちました。再度調整を初めてからは5年の時間を有しています。今の時代に子どものいのちと平和への祈りを語ろうとした私たちの想いは、素晴らしい作品となって完成しました。この作品は都市部の映画館だけではなくて、丁寧に時間をかけ、全国津々浦々に広めたいと思っています。そんな私たちの想いに手を重ねていただけますと幸いです」とこのイベントに対する想いを込めて観客へ挨拶。続けて監督が「おねしょもしなくなった、賢いけんちゃんー?」と、劇中のみっちゃん先生のセリフで呼びかけると、「はーい」とけんちゃんのモデルとなった田辺さんから元気よく返事があり、「皆様、みっちゃん先生よかったですよね。あのときみっちゃん先生と一緒に石を投げていた、けんちゃんです。みっちゃん先生は東京に帰ってからも、この疎開体験を一生懸命伝えようとしていました。新聞に本に、テレビ、そして今回このような立派な映画にしてもらい、皆様に観てもらえたことがとても嬉しいです。ありがとうございました」とコメント。エンドロールにご姉妹お写真で登場する姉の佐瀬さんは「昭和20年3月9日と10日、東京は大きな空襲の被害にあいました。防空壕から出ると辺りは焼野原で、赤ちゃんをおぶっているお母さんや、子どもたち、沢山の人が亡くなっていました。兄妹がどこにいるかも分からずなんとか父親を探し出し、その後、皆とも再会できましたが、子どもながらに“本当に大変な世の中になってしまった、戦争なんて早く終わってほしい欲しい”ただそれだけでした」と当時鮮烈な記憶を、生々しく語ります。妹の長尾さんは「今、わたくしは77歳になりました。生き延びたんだなと感じます。姉が当時2歳の私を連れて、あちこちに逃げ回ったんです。そういった経験を今の若い方たちには、絶対にさせたくないと思います。どうぞ皆さん、色々なことに感心をもっていただきたいと思います」と、挨拶を送りました。

平松監督はこれまで『母べえ』や『母と暮らせば』など、山田洋次監督と共に“戦争”について描いていきましたが、本作について「戦後74年以上経ち、戦争を題材にした映画は、作られにくくなっているという現状があります。大事なテーマは手を変え品を変え、何度も繰り返しメッセージとして伝えていくべきだと思います。同じメッセージでも30年前には、役者さん、考え方、演出家、当時の方に一番届きやすい形で作られています。本作は戸田さんや大原さんをはじめ、旬の俳優さんを招き、今の人たちに一番届きやすい形を意識して、平和へのメッセージを綴りました」と熱い想いを吐露。そしてこの真実の物語を今の世代の方々へ伝えるべく、企画者として立ち上がった鳥居さんは「あの戦火の時代、そして惨禍を極めたあの東京大空襲から74年というとても長い時間が経過しました。この間に戦争体験者の方たちもお亡くなりになり、戦争体験の風化という言葉が語られて、ずいぶん久しくなっています。本来戦争というのは、どんなに思想を語ろうとも人類の罪悪であるし、平和な思想信条は、皆様が共有するべき人が生きる再前提だと思っています。そんな想いをこめて、現代社会に平和への想いを伝えようとしたんですが、平松監督をはじめスタッフ・キャストのおかげで大変素晴らしい映画ができました。これまでにも戦争を描いた作品は多々ありましたが、この作品は観終わったあと、不思議と幸せな思いを観客の胸に灯す映画になっています。戦渦を終えて、未来を生きようとする子供たちの想いが見事に結晶した作品です。幸い全国で上映が始まっていますが、こんなに素晴らしい反響をいただいた作品は、これまでに経験していません。何とか丁寧に作品を広げて参りたいです」と、完成した本作への自信を語ります。劇中でも描かれているように、田辺さん自身も“東京大空襲”によって家族全員を亡くされましたが、「私が東京に帰ってきてから、再び(みっちゃん先生のモデルとなった)福地先生と巡り会い、二度とこのようなことがないよう、一生懸命伝えていこうとする姿をみて、私も協力したいと思いました。一人でも多くの人たちに観てもらいたいと思います」と辛い状況の中、支えとなった保母さんと再び繋がりを持ちながら、この経験を未来の世代へ伝えていく使命を語ります。当時2歳だった長尾さんも「体験的には覚えていませんが、戦時中の経験を子どものときから現在に至るまで、姉から聞き及んでおります。皆様も反戦の意が込められたこの作品しっかりご覧になって、家に帰ってもご兄弟や親御さんに、ぜひお話していただきたいと思います」と、自らがそうであったように、本作を通して語り継ぐことの重要性を述べます。

本イベントで74年ぶりの再会となった田辺さんとご姉妹ですが、「妹と一緒に、けんちゃんにはよく泣かされていたんですよ(笑) 親が恋しくなって泣き出すこともありましたし、保母さんには『そこで大声で泣いていなさい!』とお風呂場に連れて行かれたり。でも泣いた後にはお花やお菓子、大根の葉に色をつけたものを食べさしてもらったりしていましたね」(佐瀬)とけんちゃんとの疎開生活や、保母さんとの思い出話に花を咲かせました。

そして本日は、スペシャルゲストとしてもう一方、主題歌を担当するアン・サリーさんが登場!主題歌の「満月の夕 2018ver.」は、元々阪神・淡路大震災時の復興支援ソングだった曲を監督立会いのもと新たなバージョンとして収録されたもの。本日3月10日の東京大空襲、そして明日3月11日は東日本大震災が起こった日であることから、平和の祈りを込めたこの曲を鎮魂歌として生披露!魂に語り掛けるような安らかで美しい歌声を披露したアンさんは「この曲は震災のあとに作られた曲ですが、そのあとも沢山の方が歌い継いでいます。曲中の“焼け跡”という歌詞などは、震災後の景色でありながら、まるで戦争の後のような景色でもあり、今日は3月10日、そして明日は11日ということに、とても感慨深いものを感じました」と、この日、この場所でこの曲を歌う意味をコメント。アンさんの歌声を聴き、「私はアンさんが歌うこの曲が大好きなんです。アンさんにオファーしお返事をいただいてから、2週間後にレコーディングをして、その1週間後には映画が完成されたという非常識なスケジュールの中で引き受けていただき、本当にありがとうございます」と監督は改めてこの場で感謝を伝え、アンさんも「監督は映画のみならず、レコーディングのときに、『このように歌ってください』と、主題歌もディレクションしていただことで、特別な音楽になりました。私も感謝しております」と、互いに称え合います。鳥居さんは「明日が8年目となる東日本大震災でもこの曲が歌われています。実は私の会社は仙台なんですが、そこから沢山の方々の支援で立ち上がり、やっとこの作品の完成に辿り着きました。この間を振り返ると、“いのちのかがやき”という言葉が、私の胸の中で大きな位置を占めていました。そんな意味でもアンさんのこの歌が、映画のラスト、見事にいのちを輝かせてくれた思っています」と、心震えたことが窺えます。

最後に、今日のイベントを見にきていた疎開保育園に通う園児のやっちゃん役・中島琴音ちゃんが登場。いのちのバトンを繋がれここに立つ琴音ちゃんが、実際に戦争を体験した田辺さん、佐瀬さん、長尾さんに挟まれ笑顔を見せる様子に、平松監督は「つまりはこういうこと、皆さまが今見ているこの光景なんです。昭和20年から、平成の今、そして次の世代へと、このように平和への想いを繋げていく。そんな想いを込めて、この作品を届けました」と来る新しい時代に向け、平和の願いを込めてメッセージ。悲惨で無意味な戦争という存在を語り継いでいかなければならないこと改めて実感させられる意義深い時間となり、イベントは幕を閉じました。  

以上。

【あらすじ】東京も安全ではなくなっていた1944年。戸越保育所の主任保母・板倉楓は、園児たちを空襲から守るため、親元から遠く離れた疎開先を模索していた。別の保育所・愛育隣保館の主任保母の助けもあり、最初は子どもを手放すことに反発していた親たちも、なんとか子どもだけでも生き延びて欲しいという一心で我が子を保母たちに託すことを決意。しかし、戸越保育所の所長がようやく見つけてきた先は古びた荒れ寺だった。幼い子どもたちとの生活は問題が山積み。それでも保母たちは、地元の世話役の協力をえて、子どもたちと向き合い、みっちゃん先生はオルガンを奏で、みんなを勇気づけていた。戦争が終わる日を夢見て…。そんな願いをよそに、1945年3月10日、米軍の爆撃機が東京を来襲。やがて、疎開先にも徐々に戦争の影が迫っていた―

■出演:戸田恵梨香、大原櫻子、佐久間由衣、三浦透子、堀田真由、福地桃子、白石糸、奥村佳恵、林家正蔵、夏川結衣、田中直樹、橋爪功
■監督・脚本:平松恵美子 ■原作:久保つぎこ『あの日のオルガン 疎開保育園物語』(朝日新聞出版)
■音楽:村松崇継 ■主題歌:アン・サリー「満月の夕(2018ver.)」(ソングエクス・ジャズ)
■配給:マンシーズエンターテインメント ■コピーライト:(C)2018「あの日のオルガン」製作委員会 ■文部科学省特別選定作品(一般劇映画)
■オフィシャルサイト:anohi-organ.com ■オフィシャルツイッター/フェイスブック:@anohinoorugan #あの日のオルガン