タンゴ界に革命を起こし、20 世紀で最も偉大な作曲家の一人として知られるアストル・ピアソラの音楽ドキュメンタリー映画『ピアソラ 永遠のリベルタンゴ』(12/1 より Bunkamura ル・シネマ他全国順次公開)の公開を直前に控え一般試写会上映前にトークイベントが行われました。

■日程:11月 26 日(月) 19:00~19:25
■会場:日比谷コンベンションホール (日比谷公園 1-4 日比谷図書文化館内)
■登壇者:三浦一馬さん(バンドネオン奏者) MC:奥浜レイラさん

タンゴ界に革命を起こし、20 世紀で最も偉大な作曲家のひとりとして知られるアストル・ピアソラ。2017 年にピアソラ没後 25 周年、クラシカ・ジャパン開局 20 周年記念作品として製作されたドキュメンタリー映画日本公開を記念して、プレミア試写会を実施。
上映前に本作の広報大使を務めるバンドネオン奏者の三浦一馬さんが登壇。自身もキンテート(五重奏)編成のバンドを組み、10 月 24 日には全曲ピアソラ楽曲の CD「LIBERTANGO」をリリース、ピアソラへの熱い思いを語りました。


―本作を観て

「僕にとってピアソラは神様みたいな存在なので、今回広報大使をやらせていただけることになって、大変うれしく思います。今まで音楽家としてのピアソラを描いた映像はありましたが、本作のようにこんなにもパーソナルな人間味溢れる素顔を見たことはありませんでした。音楽家なのでどうしても演奏しているところやステージ映像が多くなりがちですけど、ON/OFF 両方の姿、これまで我々がみたことなかったピアソラ像がとても興味深かったです。」

―印象に残った、驚いたシーンは?

「ラテンの男性らしい、お茶目でけんかっ早いところですね。演奏中は眉間に皺を寄せて汗を飛ばしながら、演奏しているけど、そうでない時は変顔してみたり、小道具を持ち出して変な格好をしたりと本当にお茶目でした。
皆さんご覧になる前なので、楽しみをそいでしまわないように気を付けますが、電話での怒鳴り合いのシーンなどもあります。(この姿は)他の資料からは全然見えてこないです。(笑)あとはこの映画の原題が〝鮫の時代“なんですが、ピアソラは鮫釣りというとてもワイルドな趣味を持っていて、演奏と同じくらいそういう時間を大事にしていたのが分かるんです。何かを作っては壊す、ピアソラという人ほどそれを繰り返した人はいないんじゃないか。
音楽家としても見習うべきだと思いました。」

―タンゴには楽譜が存在しないと聞きましたが。

「そうなんです。楽譜というものは存在しないので、参考にできる資料は音源しかない。裏を返せば音源は沢山残っているということなんですが、例えば『リベルタンゴ』を演奏したいと思ったら何種類もの残っている音源を聴いて、楽器のパートを聞き取って初めて演奏になるんです。夜な夜なコーヒーを何十杯飲みながら楽譜を作っています。映画の中でピアソラがとある方法で楽譜を処分してしまうシーンがあるんですが、僕から言わせればなんで取っておいてくれなかったのか!と思います。」と切実な訴えには会場からは笑いと驚きの声が上がった。
今はほどんど作られていないがゆえに絶滅危惧楽器と呼ばれるバンドネオン、この日三浦が携える楽器は師匠から譲り受けたそう。リクエストに応えひとたび、音を出すとその美しい音色に会場からは歓声が上がった。

―ピアソラの音楽の魅力とは?

「本当にストレートで本能に従った音楽だと思います。濃く人生を生きた人でないとこういうメロディは書けないと思います。ピアソラという人は年代によって様々な音楽を作り出し晩年に向かうにつれその功績が段々と認められた人でした。そこに向かうまでの間、ずっと模索し続け、闘い続けてまさに男の生き様を感じます。そして聴衆たちは何を求めていったのか。まさにそれを感じることができる映画になっていると思います。」
最後に本作の魅力、見所をあますことなく語りトークイベントを締めくくった。

タイトル:『ピアソラ 永遠のリベルタンゴ』公開直前トークイベント
公開表記:12 月1日(土)より Bunkamura ル・シネマほか全国順次ロードショー
配給:東北新社 クラシカ・ジャパン
クレジット:© Juan Pupeto Mastropasqua/©Daniel Rosenfeld