「講談社青い鳥文庫」で累計発行部数300万部を誇る人気シリーズ「若おかみは小学生!」(原作:令丈ヒロ子・絵:亜沙美)。4月よりテレビ東京6局ネットにてTVアニメも放送され話題を呼び、さらに、「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」等、数多くのスタジオジブリ映画の作画監督でも知られる高坂希太郎が『茄子 アンダルシアの夏』(03)以来15年ぶりとなる劇場公開作の監督を務めた劇場版『若おかみは小学生!』が絶賛公開中!

公開直後から、SNS上では「自然と涙が出てきた」「今年一番泣いた映画だった!」と感動の口コミが溢れ、おっこをはじめとする劇中キャラクターのファンアートを描いてアップする人が続出。TOHOシネマズの多くの劇場で再上映が始まり、さらには、『君の名は。』の新海誠監督や『GANTZ』作者の奥浩哉氏、『モテキ』の久保ミツロウ氏、『ちはやふる』の末次由紀氏らもツイートで絶賛するなど、“若おかみ旋風”が巻き起こっている。

先月、韓国で開催された第20回プチョン国際アニメーション映画祭の長編部門において、2016年に受賞した『君の名は。』以来となる優秀賞(Special Distinction Prize)と観客賞(Audiences Prize) をダブル受賞に輝いた本作。
公開7週目を迎えた本日11月3日(土)、TOHOシネマズ渋谷にて舞台挨拶が実施され、物語の主人公・おっこ(関織子)の声優を務めた小林星蘭と、高坂希太郎監督、音楽プロデューサーを務めた田中統英が登壇した。

公開から1か月以上経つにも関わらず、舞台挨拶には多くのファンが押し寄せ満席状態に。登壇した3人がそれぞれ開口一番に感謝を述べると、場内は盛大な拍手に包まれた。「こんなに長い間沢山の方々に観ていただけてるんだなと思うと本当に嬉しいです。」感無量の表情で喜びを語った小林は、別の仕事場でも本作に関してよく声をかけられるとのことで、「沢山のスタッフさんから『映画観たよ』とか『めちゃめちゃ泣いちゃった』って言っていただけたりして、(反響の高さに)びっくりしています」と笑顔でコメント。続く高坂も、東京や大阪での舞台挨拶を重ねながら反響の高さを実感しつつ、「気が付かないだろうと思っていた細かいところまでちゃんと作品を観てくださっていて嬉しい」と笑顔を見せつつ、「同時に、次回作を作る時に手が抜けないなとも思いましたね」と明かし、笑いを誘った。
一方、初登壇となった音楽プロデューサーの田中は、「音楽プロデューサーと言うとすごく大げさというかおこがましいのですが…」と前置きをしながら、「音楽プロデューサーは、作曲家、監督、演奏家などと相談し、必要なところに必要な音楽を用意する。皆さんに観ていただく完成品に至るまで、音楽に関して最後まで責任を持つ立場です」と自己紹介。初仕事となった高坂について、「音響監督を務められた三間(雅文)さん等からお噂は色々と聞いていました(笑)」と冗談を飛ばしつつ、「当然ですが、監督はこだわりが強い方が多いので覚悟していた」と当時の心境を明かした。
それを受け、高坂から「僕はあまり音楽に関しては勉強不足で、上手く意図を伝える手段が無く、田中さんとは『どんな感じにしましょうか?』と初めは相談からさせていただきました。ちなみに、三間さんからは『めんどくさい奴』って噂されてました?(笑)」と振られた田中は、苦笑いで首を横に振り、「漠然と曲を確認してもらうのではなくて、全て映像に付けた状態で聞いていただいたり、なるべく高坂監督の負担にならないように具体的に進めていくことを心がけていたこともあり、始まってみると思ったほどの苦労はそれほど無かったです」と釈明。高坂からは事前に「直球の作品なので、あまり捻ったメロディじゃないもの」と希望があったそうで、「音楽で過度に盛り上げたりしんみりさせたり煽らないように、鈴木慶一さんと相談して進めていきました。劇中には、鈴木さんらしい各キャラクターに合った特徴的な曲も織り交ぜていただきましたが、全体のモチーフは定まっていたので、それ以外の曲はメインテーマのアレンジを変えて同じフレーズを繰り返すようなカタチで、美しく仕上げていただきました」と制作過程を述懐し、小林も「シンプルに、台詞と一緒にすっと心に入ってくるような感じがして、聞いていて楽しかったです」と仕上がった楽曲を聞いた際の感動を振り返った。

イベントでは、多くの鑑賞者から「もう一度聞きたい!」と反響の高い劇中の挿入歌『ジンカンバンジージャンプ!』を小林が生披露。場内が一層盛り上がる中、田中は、本楽曲の制作について「通常あまりやらないやり方なのですが、まず、数名の作詞家に歌詞のモチーフをそれぞれ作っていただいて、その中から高坂監督に選んでいただきました。その後、選んだ歌詞に改めて4パターンくらいの曲を作曲家の方々に作っていただき、画に合わせて改めて監督に聞いていただいて。最終的に鳴瀬シュウヘイさんに作っていただいた本楽曲に決めました」と説明。こうしたこだわりの背景には高坂の強い歌詞へのこだわりがあったとし、高坂自身「この曲は、おっこが事故の影響でPTSD(心的外傷後ストレス障害)に陥ってしまうところから、如何に楽しい場面へと繋げていけるか、という重要な節目となる楽曲だった」と述懐。こだわりはタイトルにも及び、「物語全体として、『禍福は糾える縄のごとし』や『人間万事塞翁が馬』(※どちらも、「人の運命は予測できず、一時のそれに一喜一憂しても仕方がない」といった意味)のような展開になっているので、ちょっと真面目な内容と楽しい部分を合わせたようなものにしたかった」とタイトルに込めた想いを明かした。

最後に、第20回プチョン国際アニメーション映画祭で受賞した優秀賞と観客賞のトロフィーがお披露目され、高坂と小林が代表してその重みを手に。客席から改めて盛大な拍手が贈られる中、高坂は「監督していて言うのも変ですが、奇跡のような本作に関わることができて、本当に良かった。」と、感慨深い様子で感謝の言葉で締めくくった。