2015年アメリカで4館から1600館に異例の拡大公開、さらには全世界で大ヒットとなり、クエンティン・タランティーノに「こんなホラーは観たことがない」と言わしめた『イット・フォローズ』のデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の最新作『アンダー・ザ・シルバーレイク』が、遂に10月13日(土)より全国公開となりました!

セレブやアーティストたちが暮らすL.A.の街<シルバーレイク>を舞台に、忽然と消えた美女を探すうちに、街の裏側に潜む陰謀を解明することになるオタク青年サム(アンドリュー・ガーフィールド)の暴走と迷走を描いた本作は、今年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、海外メディアからは「ヒッチコックとリンチを融合させた悪夢版「ラ・ラ・ランド」だ!」(la Repubblica)などと評され、早くも世界中を震撼!さらに、日本でも、「カルト化必至の大怪作が爆誕!」(ライムスター宇多丸/ラッパー/ラジオパーソナリティ)、「陰謀論好きにとっては絶対見逃せない映画。成功者だらけの街で陰謀にハマる心理に感情移入し、恐怖と共感の嵐でした。」(辛酸なめ子/漫画家・コラムニスト)、「リンチもピンチョンも軽く凌駕する、新世紀の神話に遭遇する興奮!」(中原昌也/音楽家・作家・映画評論家)等と、各界から続々と絶賛のコメントが寄せられています。

この度、そんな業界騒然の本作の公開記念トークショーが東京・新宿バルト9で行われ、映画評論家の町山智浩氏が登壇。劇中に数多く隠された謎について持論を展開し、集まった観客を魅了しました。

初日は各劇場満席が続出するヒットスタートとなった本作。登壇するや早速映画を観終えたばかりの観客から感想や疑問を聞きに回った町山氏は、導入として、「シルバーレイクいう街は、16~7年前は変な人しか住んでいなかった」と述懐。「僕が訪れた時も、首元に垢のついたワイシャツを展示する服飾アーティストや、テルミンしか使用しないバンド、ゲテモノしか置いてないレンタルビデオ屋に一日中いるZ級映画の研究家など、ピンクのキャデラックを乗り回す職業不明の金髪美女など、「この人たちは何をしている人なんだろう」って分からない人たちが沢山住んでいたんです。コーエン兄弟も売れていない時にシルバーレイクで女優とシェアハウスしていました」と続け、「でもジョセフ・ゴードン=レビットやジェームズ・フランコが家を買ったことで、土地の値段が上がり、一気にオシャレな街になった。却ってアート系の人々が住めなくなり、昔の文化としては廃れてしまいましたが」と説明した。

アンドリュー・ガーフィールド演じる本作の主人公・サムについても「明らかには描かれていないが、そうしてシルバーレイクがオシャレになり家賃が高くなったことで、今まで通り住めなくなってしまった人物だと推察します。サムのような人は、本当にハリウッドに多い」と語った町山氏。客席から「劇中のシーンが、どこから夢でどこから現実なのか分からない」と聞かれると、「確かに、サムが見たからといってそれが現実なのかは途中から全く分からなくなる。辻褄を合わせようとするとどんどん深みハマってしまう作りになっているところが面白い」と解説。

さらに、町山氏は、ヒッチコックやマリリン・モンローなど本作に登場する無数のオマージュについて、「本作は、“夢”に関する映画が多く元ネタになっている。劇中、サムの母親が大好きな映画として登場するジャネット・ゲイナーの「第七天国」も、ラストが夢なのか現実なのか、当時から論争になった作品」と分析。続けて、「この作品を観たデイミアン・チャゼル監督が、「求めている願望が現実として描かれるエンディングが素晴らしい」と感銘を受け、『ラ・ラ・ランド』のラストで描かれる、“別の時間軸”のエンディングを作ったんです。」と話した。

話題が『ラ・ラ・ランド』へと移ると、町山氏は「本作は『ラ・ラ・ランド』が明らかにこの映画の軸になっている」と言及。「どちらの映画もグリフィス天文台が登場するが、『ラ・ラ・ランド』のセバスチャン(ライアン・ゴズリング)とミア(エマ・ストーン)ではプラネタリウムを上に向かっていきますが、本作のサムは、どんどん地下に潜っていく。これは、デヴィット・ロバート・ミッチェル監督自身が実際に10年くらいシルバーレイクに住んでいて、サムのように中々芽が出なかった時の想いや経験を反映されている」と語り、「そんなサムをエマ・ストーンの元婚約者のアンドリュー・ガーフィールドにやらせたのも良いなと(笑)、本作は残酷なキャスティングも面白い」と独自の視点で称賛した。

最後に、「この映画は日本で言えば、六本木とか吉祥寺でも作れる話だなと思いますよ(笑)『あそこで有名な人が歌っていた曲を探っていくと実はこんな謎が隠されていた』みたいな物語。こういう話は実はいっぱいある」と述べた町山氏は、「ロバート・アルトマン監督の「ロング・グッドバイ」が非常に近い。あとは、ミッチェル監督も言っていましたが、アルドリッチ監督作『キッスで殺せ!』や、デヴィッド・リンチ監督作『マルホラント・ドライブ』の要素もある」と次々に例を挙げて解説。「主人公が途中まで何を追っているのか観客には分からない、とんでもない”ハリウッド迷宮もの”を監督は作りたかったんじゃないか」と分析しつつ、「本作は、北米公開が日本よりも後。皆さんが先に観た感想をアメリカ人が読みますよ(笑)中々珍しいですよね」と貴重な機会として本作をPRした。