いよいよ9月1日(土)より、テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国公開となる映画『寝ても覚めても』。この度、映画の公開を記念し、8月24日(金)に原作者・柴崎友香さんと濱口竜介監督のトークショー&サイン会が都内で行われました。原作「寝ても覚めても」を映画化した理由や、柴崎さんが本作を観た感想など、二人の

原作者が聞く!『寝ても覚めても』を映画化した理由とは?

ついに今週公開となる映画『寝ても覚めても』。原作者・柴崎友さんは今の心境について「ついにですね。公開まで長く感じられたけれど、まだ実感がわかないです」と一言。濱口竜介監督は「まだ公開していなかったのという感じもしますが、いよいよという気持ちでもありますね」
とコメントし、二人ともどこか緊張が感じられる面持ちでトークショーはスタート。
まず初めに、柴崎さんから「この原作をなぜ映画化してくださったんですか?」という質問に濱口監督は「本当に面白かったからです。原作を前情報もなく読んだのですが、まず物語の途中で登場人物の麦がいなくなってしまう。麦は突拍子もないキャラクターですが、生活が地続きに進んで行く。しばらくしてから亮平が出てきますが、ある瞬間リアリティががくっと変わって、その時に“映画化したい!”って思ったんですよね。
不意を突かれる感じや、ラストまで読んでいくと驚きの連続で、本当に面白かったんです」と感動した様子で映画化への敬意を明かした。
「たしかに、いろんな人から映像化したら面白いんじゃないかと言われていたんですよね。そんな時に濱口さんが映画化するとお話がきて、過去の作品を観ていたので嬉しかったですし、どういう映画になるのか楽しみにしていました」と、柴崎さんの言葉に濱口監督は気恥ずかしそうに「ありがとうございます」と返した。


東出昌大は“麦”似!?二人も驚く意外な性格が判明!

4年前に『寝ても覚めても』の映画化の話が進み始めたが、それと同時期に別で東出さんとの企画が始まっていたと明かす柴崎さん。
「8月31日に「つかのまのこと」という東出さんをイメージした小説が出版されるのですが、企画がスタートしたのが映画化の話と同時期だったんです。
映画『寝ても覚めても』では一人二役ですし、私の小説で東出さん、一人三役やってくださっているんですよね。なにかご縁があるんだなぁと感じました」
と感慨深く語った。そこから東出さんと接していく中で、二人は共通の印象をもっているという。まず柴崎さんは「ここにいるんだけれど、同時に別の世界も見ているという存在感がありますよね。現実と、違う世界の間にいるような存在」。それに濱口監督も「そう思いますね。映画『桐島、部活やめるってよ』やバラエティ番組で話す東出さんを見て、初めは“いい兄ちゃん”的な印象を持っていて、亮平っぽいなと思ったんですよね。しかし実際お会いすると、会話が噛み合わない瞬間があるんです。彼のことが好きという大前提で言わせていただきますけれど、半歩ずれている感じがするんですよね(笑)」
と意外な印象を明かす。「黒沢清監督に出演している東出さんを観ていると、そういう部分がうまく映っているし、本作についても“自分の性格は麦似ですね”と言っていて、納得する部分がありました」と、意外なキャラクターとの共通点を語った。柴崎さんも「キャラクターそれぞれに東出さんの共通点がある。
ただ演じ分けているわけではなく、東出さんであり、亮平であり、麦なんです」と、演技では表せない“何か”を感じたと言う。

また、ヒロイン役を務めた唐田えりかさんについて柴崎さんは、「小説は朝子の10年間が描かれていますが、映画は8年間になっている。撮影当時の唐田さんはまだ19歳の可愛い女の子だったけれど、8年間の間で成長していく大人の女性をしっかりと演じていて驚きました」と語る。またオーディションで唐田さんを抜擢した理由について濱口監督は「映画を撮る上で、役者さんがそもそも持つ多義性が映ればいいなと思っていました。なのでオーディションではニュアンスを抜いて本読みをしていただいたんです。感情が全くないまま文字面を読んでもらったら、唐田さんの声がとてもしっくりきて。本作は朝子の決断の物語といってもいいと思うんですけど、彼女はぴったりだと感じました」と明かした。柴崎さんも「唐田さんの声はとても心に残る声ですよね。『寝ても覚めても』を思い出すと、唐田さん演じる朝子の声が聞こえてくる感じがします。またフィルムで写真を撮る趣味を持っているのを知って、小説の中の朝子も写真を撮るから、共通点があってなんだか嬉しくなりました」と嬉しそうに語った。


「この小説を書いてよかった」!原作者・柴崎友香が絶賛!

この日は、事前にお客さんから質問を事前に受け付け、二人が回答する時間が設けられた。
「実際に出来上がった映像を観てどうだったか?」という質問に柴崎さんは「作者なので、まだ客観的に観れないところはあります。最初に観た時の感想は、映画は完成したものを見ないとどんなものになるかがわからないんだな、ということです。あと映画の中で麦がクラブでお客さんを蹴るシーンがあるんですが、その身も蓋もない蹴り方が麦ってこんな感じかもと思わせてくれて、観ていて面白かったです」と本作の印象や好きなシーンを明かした。

また“寝ても覚めても“というタイトルがとても素敵という意見があり、「どのようにして思いついたのか?」という質問に柴崎さんは「私タイトルを考えるのが本当に本当に苦手で(笑)一度短編につけたタイトルが「寝ても覚めても」だったんですけれど、それを編集の人が気に入ってくださったので、そうなりました」
と明かし、さらに「そういえば、カンヌ国際映画祭へ出品が決まった時に、ノミネート作品の紹介でタイトルが読まれるんですよね。てっきり私は英題『ASAKO Ⅰ&Ⅱ』
と言われると思ったのですが、『ネテモサメテモ』と呼ばれて!あの瞬間“私が考えたタイトル!”と、とても嬉しかったのを覚えています!」と興奮気味に語った。

最後の質問になり、「原作を映画化する上で大事にしたシーンは?」と濱口監督へ聞かれると、「朝子の選択・行動です。原作を読んでいても驚きつつも深く納得するシーンだったので、その通りではないけれども、朝子の行動は物語の核になる、気が付いたらそれは起きていた、という描写は受け継ごうとしました」と答えた。
柴崎さんも「台詞も少し違いましたけど、その場面の一部の撮影を見にいって、私はこの小説を書いてよかったなぁと思ったんです」と濱口監督へ絶賛のコメントを投げた。
最後に一言ずつ「来週公開がまだ信じられませんが、観る人によって思うことがある作品だと思うので、それぞれの意見を聞けるのが楽しみです!」と柴崎さん。
濱口監督は「『寝ても覚めても』と「つかのまのこと」、3人の東出昌大を楽しんでいただければと思います。公開されましたら是非、劇場へ足を運んでください」とメッセージを残した。

違う名前、違うぬくもり、でも同じ顔。運命の人は二人いた。
二人の同じ顔をした男とその間で揺れ動く女の物語である映画『寝ても覚めても』。主演・東出昌大が、同じ顔をしていながらも全くタイプの違う男・亮平と麦(ばく)という一人二役に挑み、新星・唐田えりかがヒロイン・朝子を演じる。濱口監督自ら熱望した芥川賞作家の柴崎友香の小説「寝ても覚めても」の映画化で、満を持して商業映画デビューを果たし、初の世界三大映画祭への出品ながら、第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出された。瀬戸康史、山下リオ、伊藤沙莉、渡辺大知、仲本工事、田中美佐子の豪華キャストが脇を固め、tofubeatsが初の映画音楽を担当し主題歌を書き下ろした『RIVER』にも注目が集まる。

【映画『寝ても覚めても』情報】
©2018 映画「寝ても覚めても」製作委員会/ COMME DES CINEMAS
9月1日(土)、テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、 渋谷シネクイントほか全国公開!