『メアリと魔女の花』のスタジオポノックが新設した短編アニメーションレーベル「ポノック短編劇場」の第 1 弾作品『ちいさな英雄―カニとタマゴと透明人間―』の完成披露プレミア試写会が 8 月 19 日(日)に東京・品川のステラボールにて開催。
『カニーニとカニーノ』で声優を務めた木村文乃、鈴木梨央、『サムライエッグ』の尾野真千子、篠原湊大、坂口健太郎、『透明人間』の田中泯、それぞれの作品のメガホンを握った米林宏昌監督、百瀬義行監督、山下明彦監督による舞台挨拶が行われた。

■日程:8 月 19 日(日)16:30~17:15
■会場:品川ステラボール(東京都港区高輪 4-10-30 アクアパーク品川内)
■登壇者※作品順:「カニーニとカニーノ」 米林宏昌監督/木村文乃、鈴木梨央
「サムライエッグ」 百瀬義行監督/尾野真千子、篠原湊大、坂口健太郎
「透明人間」 山下明彦監督/田中泯
エンディングテーマ/木村カエラ ※敬称略

さらに、エンディングテーマを手がけた木村カエラも駆けつけ、初披露となるエンディングテーマ「ちいさな英雄」を熱唱し、スタジオポノックの西村義明プロデューサーは本作について「実は完成したのは 6 日前くらい。ギリギリまで最高の映画をと思って作り続けていました」と明かす。3編の短編で構成されているが、実はもともとの構想では 4 編あり、残りの 1 編を今年 4 月に亡くなった高畑勲監督に作ってもらおうと考えていたと告白。「厳しい方だったけど、すごく応援してくれる方だったし、アニメーションに挑戦していこうというこの 3 作品の中に高畑勲監督は生きていると思う。今日もこの会場でこっそり見てくれているんじゃないかと思います」と語った。

各作品の登壇陣は、それぞれの作品にまつわるキーワードをもとにトークを展開。『透明人間』のキーワードは「存在」だが、山下監督は本作について「そこにいるんだけど、いないも同然の扱いを受けている人がいるんじゃないか?ちゃんといるんだよってことを認めた方がいいし、透明だと思われてる人も自信を持ってほしいという思いを込めた映画です」と説明。
田中さんは「僕も小さい頃は、いないも同然のような子どもでした。大人になって、僕のほうは小さい時の友達をみんな覚えてるけど、あちらの人たちが僕を覚えてなくて、(自分は)いなかったのか…という思いは随分しました。見えていてもいないのと、見えていなくていないのは違いますよね」とうなずいた。

田中さんは盲目の男役を演じているが、アフレコの際、役柄に合わせてあえて目をつぶって演技をしたという。「見えてしゃべるのと、見えないでしゃべるのでは全く世界が違います。画を全く見ない状態でやらせてもらいました」と明かした。

『サムライエッグ』のキーワードは「歯」。尾野さんは「ちょっと歯が出てくるんです」と意味ありげにニヤリ。坂口さんも「歯がすごく印象的なシーンがあったり、(主人公の少年)シュンくんに繋がるんです」と説明。尾野さんは、〝プレスコ“と呼ばれる先に声を収録し、それに合わせて画を作っていく方法で今回の役に臨んでおり「とても苦労しました!声優さん、超すげーなって尊敬しました。」とその難しさを振り返ったが、百瀬監督は「女優さんであられるので、セリフを言いながら自然と演技に出てくるものがあって、それを見ながら画に活かすことでよりリアリティが出ました」とあえてプレスコで制作した意図を語った。

シュンを演じた篠原くんは、この日、初めて父親/医者の二役の坂口さん、母親役の尾野さんと対面を果たしたそうで「すごく優しくて感激です!」と満面の笑み。「最後の最後にママからの大切な言葉があるのでそこに注目してください!」と大人顔負けのコメントで喝采を浴びていた。また、物語の舞台となる東京・府中市は坂口さんが「学生の時、よく行っていた」という馴染み深い街。「学生時代に遊びに行っていたお祭りのシーンが出てきたり、街並みが懐かしい感じがありましたね」と嬉しそうに語っていた。

そして『カニーニとカニーノ』のキーワードはずばり「カニ語」!米林監督は「日本語ではなく全編カニ語です」と木村さんが演じるカニーニ、鈴木さん演じるカニーノの兄弟らが、カニ語とジェスチャーで会話をすると説明。木村さんは「伝えたい気持ちがあったら、意外と言葉の形ってあまりいらないんだなって思えました」と述懐。カニ語に関してはアフレコしながら常に相談しながら作っていったそうで「大人たちが皆揃って真剣にカニ語を考えるというシュールな現場でした(笑)。アドリブで、どう言ったらいいんだろう? と思ってうっかり(日本語で)『よいしょ』と言ってしまったりして…(苦笑)」と現場を振り返る。鈴木さんは「あまりカニ語って意識せず、木村さんと 2 人でアフレコをしていて、気が付いたら 2 時間も経っててびっくりしました」と語り、木村さんも「一緒にやらせてもらって、兄弟感が出たと思います」と壇上でも仲睦まじい様子を見せていた。

そして、スペシャルゲストとしてエンディングテーマを担当し、自ら歌詞も書いた木村カエラさんが登場! カエラさんは「とにかく、真っすぐで明るい曲にしよう! お客さんが見終わって、口ずさんで劇場を後にできるような明るい曲なれば、と言葉選びをしていきました。親子で見てほしいという西村プロデューサーの願いもあって、子どもがどろんこになっても、どういう状態になっていても抱っこできるような、“無償の愛”、子どもがのびのびと育っていく喜びとかを入れられたらいいなと思って、書きました」と歌詞に込めた思いを説明。

また「西村プロデューサーに聴いてもらうのに緊張し過ぎて、前日の夜、家で泣いたんです(笑)。自分でこの曲が『いいな』と思えたら、余計に緊張して作り手の気持ちに合っているのか? とかいろいろ考えたら涙ぐんでしまって…」と制作秘話を明かしたが、そうして完成したエンディングテーマ「ちいさな英雄」をこの日、初めて観客の前で熱唱!その明るく力強い歌声に包まれ会場は大きな盛り上がりを見せた。