アニエス・ヴァルダとJR(ジェイアール)の共同監督作『顔たち、ところどころ』が、横浜・みなとみらいで開催中の『フランス映画祭2018』にて上映。

アニエス・ヴァルダとJR(ジェイアール)の共同監督作『顔たち、ところどころ』が、横浜・みなとみらいで開催中の『フランス映画祭2018』にて上映され、プロデュ―サーのジュリー・ガイエ氏が登壇した。

今回健康上の理由で来日がキャンセルとなったアニエス監督と、自身の展覧会のため来日が叶わなかったJRの等身大パネルを両脇に抱え、オープニングのレッドカーペットと本日行われた上映後のトークに登壇した。トークではアニエス監督と本作を作るきっかけとなった経緯や彼女のクリエイターとしてのスタンス、さらには女性監督が置かれている厳しい映画製作の現状にも言及した。

「ヌーヴェルバーグの祖母」とも呼ばれる女性映画監督の先駆者アニエスと、人々の大きなポートレイトを街に貼りだすアートプロジェクトで知られるアーティストJR。本作は、年の差54歳のふたりがフランスの田舎を旅しながら、村々に住む市井の人々との交流を通して作品を共に作り残していくドキュメンタリー。製作を手がけたガイエ氏は、20歳の時にアニエス監督作『百一夜』に女優として出演しており、以来、彼女の才能とフェミニストとしての姿勢をリスペクトし続け、その思いからプロデューサーとして、本作のサポートを買って出た。

そもそも、アニエス監督の娘で衣装アーティストのロザリー・ヴァルダが”母とJRを組ませたら面白いものができる”と発案し、企画がスタート。共同プロデューサーとして声を掛けられたガイエ氏は、「アニエス監督は、家族と仕事をすることをとても大切にしています。そういった意味でもフェミニズムにあふれ、それはとてもいいことだと思って賛同しました」とニッコリ。

アニエスの生き方が際立った例が、ある映画での記者会見で垣間見られたとガイエ氏は語る。「息子のマチュー・ドゥミ(現・俳優)さんが子供の頃、インタビューの場にいて、記者から ” お子さんがちょっと邪魔です ” と言われたのですが、彼女はインタビューを中断して、 ” 私のインタビューは、息子より重要ではありません! ” と跳ね返したんです。すると記者たちはビックリして、結局、マチューをお膝に乗せてインタビューを続けたそうです」。ロザリーやマチュー、夫のジャック・ドゥミ監督ら、家族と協力し合うことを何よりも大切にしたアニエスのブレない生き方は、本作でも、JRとのやり取りや、村の人々との交流の中にも脈々と流れている。

また今回、プロデューサーを引き受けて、改めて女性監督の立場の弱さを実感したというガイエ氏。「やはり、女性が映画をとる場合、資金調達の面で、ガラスの天井はあると実感しました。小さな予算の時はOKがもらえるのですが、大規模な予算がつく時は、なかなか難しいのが現状。アメリカでは女性監督は全体の10%くらいで、100〜200万ドルのレベルならなんとか話がつくそうですが、それ以上になると、3%くらいの限られた監督のみとなる。ちなみにフランスの女性監督は27%くらいなんですが、お給料は男性の監督に比べて4割低いという状態。私はその状態を打ち破っていきたいと思います」と、プロデューサーとして力強く語った。

映画『顔たち、ところどころ』は 2018年9月15日(土)より、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開。

【イベント概要】
フランス映画祭2018 
オープニングレッドカーペット・セレモニー
■日時:2018年6月21日(木)17:45〜
■会場:横浜みなとみらいホール

『顔たち、ところどころ』
■日時:2018年6月22日(金)15:15〜
■会場:イオンシネマみなとみらい
■登壇者:ジュリー・ガイエ氏

ジュリー・ガイエ
仏パリ郊外のシュレンヌ出身。大学で演劇やダンスを学んだ後、プロの女優としてデビューする。クシシュトフ・キエシロフスキー監督の 『 トリコロール 青の愛』(93)にはエキストラとして出演。映画誕生100周年を記念して製作されたアニエス・ヴァルダ監督の 『 百一夜 』 (95)では、ミシェル・ピッコリ扮するムッシュ・シネマの聞き手役に抜てきされる。以降、仏国内の映画・TVドラマの双方で活躍し、日本では 『 君が、嘘をついた。 』 (96)、 『 NOVO ノボ 』 (02)、 『 メトロで恋して 』 (04)などが劇場公開された。パトリス・ルコント監督の 『 ぼくの大切なともだち 』 (06)でヒロインを好演して仏国内での人気が高まり、09年の主演作 『 エイト・タイムズ・アップ」では東京国際映画祭の最優秀女優賞を受賞した。その他の出演映画に 『 キッスをよろしく 』 (07)、 『 カレ・ブラン 』 (11)など 。プロデュース作品は本作 『顏たち、ところどころ』 の他『RAW 少女のめざめ』(16)、 8月公開予定の『判決、ふたつの希望』(17)など。本年のカンヌ国際映画祭で、配給会社を立ち上げたことを発表した。

映画『顔たち、ところどころ』作品情報

行先は、はじめてなのになつかしい あの場所

映画監督アニエス・ヴァルダと、写真家でアーティストのJR。
年の差54歳の二人が、フランスの田舎街を旅しながら人々とふれあい育む、でこぼこで優しい友情。

「ヌーヴェルヴァーグの祖母」とも呼ばれる女性映画監督の先駆で、カンヌ、アカデミー両賞で名誉賞を受賞しているアニエス・ヴァルダ。そして、大都市から紛争地帯、様々な場所で、そこに住む人々の大きなポートレートを貼り出すアートプロジェクトで知られるアーティストJR(ジェイアール)。
『顔たち、ところどころ 』は、そんなふたりがフランスの田舎街を旅しながら、人々とふれあい、作品を一緒に作り残していくロード・ムービースタイルのハートウォーミングなドキュメンタリー。

第90回 アカデミー賞 ドキュメンタリー部門 ノミネート
第70回 カンヌ国際映画祭 ルイユ・ドール(最優秀ドキュメンタリー賞)受賞
第42回 トロント国際映画祭 観客賞ドキュメンタリー部門受賞

間違いなく今世紀最高のノンフィクション映画の一本。
――CriterionCast

不完全かつ、かけがえのない記憶の地図だ。
――LA Times

完璧。ヒューマニズムの奇跡!
――Rolling Stone

映画『顔たち、ところどころ』
監督・脚本・ナレーション:アニエス・ヴァルダ、JR
出演:アニエス・ヴァルダ、JR
音楽:マチュー・シェディッド(-M-)
字幕翻訳: 寺尾次郎
配給・宣伝:アップリンク
(2017年/フランス/89分/1:1.85/5.1ch/DCP)

【タイトル】
顔たち、ところどころ

【公開表記】
2018年9月15日(土)より、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開

【コピーライト】
© Agnès Varda – JR – Ciné-Tamaris – Social Animals 2016.

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