3月24日、大阪市淀川区のシアターセブンにて映画『ミスムーンライト』の1週間公開が始まり、舞台挨拶が行われた。
ミスムーンライト』は、【ひと脱ぎ系青春群像ムービー】と銘打つだけあって、水着!アイドル!グラビア!ゴースト!POV撮影!このポイントに惹かれる人なら観て損なし。しかし、意外なことに人間関係や仕事にストレスを抱える女性こそ大いに共感できる快作でもある。

映像部に所属している高校生のマキ(梅村結衣)は、仲間たちと地元の観光PRビデオを撮影するが、平凡な仕上がりに不満を募らせる。新たな企画案を思いついたマキは、春休みの合宿で仲間と顧問を巻き込んで再度撮影に挑む。しかし、元映像ディレクターの博和の参加でマキの暴走に対する不協和音がマックスに!

脚本、監督、出演と三役をこなした松本卓也監督と、主人公マキに対して反抗的な後輩ナッツ役で出演したゆうなんこと山崎佑奈さんが登壇した。

 

『おくりびと』よりじわじわと

ミスムーンライト』は約一年前に新潟県新発田(しばた)市で撮影された。松本監督は、
「新潟で先行公開して、去年の後半から東京、千葉、神奈川、和歌山、名古屋とついに大阪に来て。ちょっとずつ増えていくという。この感じは『おくりびと』以来じゃないですか。『おくりびと』よりじわじわですけど(笑)」と、一年近く劇場に掛かり続けていることを紹介した。

「みなさんの口コミパワーで、今後も一週間ぜひ大阪でも応援していただきたいと思っております」

ミスムーンライト』は映画祭でも注目されており、昨年は和歌山県の加太で行われた【Kisssh-Kisssh(きしゅーきしゅー)映画祭2017】では、自主制作映画コンペティションの長編映画部門にてグランプリを獲得した。
映画祭には山崎さんがゲストで参加したが、今日の客席には映画祭に続いてのリピーターも駆けつけ、二人から感謝の言葉が贈られた。

最近では3月に【ゆうばり叛逆映画祭2018】で上映プログラムに選出された。
「怖い主催に映画の感想を聞いたら、”お前はアホか!俺は全部観て選んでるんだから面白いに決まってんだろう!”って褒められてるんだか怒られているんだかよくわからない状況があって(笑)」

ゆうばり叛逆映画祭の上映用に松本監督が再編集したニューバージョンが、今回劇場初上映となった。シネコンではデジタル納品した作品を変更すると費用が何十万円もかかる。プロデューサーの許可が出ず今まで叶わなかったが、今回は新たに再編集したバージョンで更に観やすくなっているという。

大阪弁の生意気な後輩・ナッツのこと

2年前の撮影について山崎さんは、
「懐かしい。大合宿でしたね。桜と雪が同時にあってなかなか撮れない画でしたね」
山崎さん演じるナッツの役をお気に入りだという松本監督。映像部は作る映像も含め組の色が出来上がっていくに従って、何が正解か目的が曖昧になっていく。そこに新たに人が入ることによって、自分たちを見直すきっかけになる。
「ナッツは『ミスムーンライト』っていうタイトルが出る後半から出てくる重要な役で、はっきりズバズバ言うんですね。
“あの先輩、かき回し型なの?”とか。大阪弁のキャラクターで」
山崎さんの神戸出身というキャラクターが生かされたという。

「そして決め台詞の “でたらめやん”。ちょっと照れながら言う別の“でたらめやん”もあるんですね」
山崎さんもお気に入りというこのシーン、ぜひ注目して欲しい。

「高校生って、つい最近でしょう?」と松本監督。
「最近じゃないですよ。誰か気づかれないことがあります。髪の毛もツインテールですし、ほぼすっぴんですもんね。
女子高生役なんですけど、終わったら日本酒飲んでましたけどね。新潟なので美味しかったです」

 

『ミスムーンライト』はお月様たちのお話

松本監督は作品のテーマについて、
「お月様たちの話にしたかった。太陽じゃないんですよね。マキもそうなんですけど、クラという憧れの存在がいて、いかに自分がどう輝くか。太陽の光で自分も輝けるかもしれない。そういう月の感じ。そんな人達が春休みに一歩でも進めたら、みたいな。脱いだりしてますけど(笑)」

観客から松本監督が、野本梢監督の映画でも同じような役柄を演じていたという指摘が。目が笑っていない役柄との共通点について、
「俺もやはりどこか真っ直ぐじゃないんですよ。この映画のテーマでもあるんですけど、まっすぐなだけじゃ人間ね。やっぱり自分に優しく人にも優しくと(笑)。やっぱり屈折した人ほど何かいいですよね」

商業映画はイケメンと美女の恋愛ものが多いが、松本監督が魅力に感じるのは、そういった太陽と太陽の世界ではないという。
「月は一人では輝けないけど、実は輝く世界があるんじゃねえかって思いたいですよね。そういう意味ではプロデューサーに感謝していて。自分が書きたいものを書かせてもらえて。プロデューサーからは裏テーマとして水着を入れろと言われてたんですけど、それなら老若男女で出た方がいいだろうと(笑)こちらからも追加提案しました」

そして映画に何が起こったかは、ぜひスクリーンで確かめて欲しい。

 

青のパーカー効果を探る

観客から、青のパーカーを脱いだマキの姿に意外性があって良かったという感想が。
松本監督はそういった隠し玉も想定しての設定だったと語る。
「プロデューサーが、昔のグラビアをプロデュースしていたので“今のグラビアは健全じゃない”と。健全な水着を撮れ!と」
衣装に関して、パーカーを着ているのがマキとナッツだけだったという。
「あれも意味があって、マキに一番近いのがナッツなんですよ。制服は着なくてもいいよという校風で、それでも大抵の生徒は制服を着るんだけど、なんとか個性を出したいと思うタイプがあの二人で。ナッツはクラ先輩に憧れて映像部に入ったから、マキに対しては近親憎悪があるのかも」
個性を出したい二人だけに許されたパーカー、そんな意味を知った上で映画を観ると更に発見があるかもしれない。

様々なエピソードが飛び出した舞台挨拶。最後に山崎さんが、
「電車もギリギリの時間なのに来ていただいてありがとうございました。今日初めて観た方も、あと一週間あるので2回3回と足をお運びください」とアピールした。

シアターセブンの上映は3月30日まで。最終日には再び山崎佑奈さん登壇予定となっている。

(レポート︰デューイ松田)