ペドロ・アルモドバル審査委員長

映画祭12日目の28日(日)。後は賞の結果を待つばかりとなった最終日も見事な快晴!
長編コンペティション部門に選出された全19作品が、パレ・デ・フェスティバル内の3会場および特設上映会場の“60回記念ホール”においてリピート上映された本日、長編コンペ部門で唯一見逃していたホン・サンス監督の『ザ・デイ・アフター』を13時30分からブニュエル・ホールにて鑑賞し、キャッチ・アップ!

怒濤の日々も過ぎてしまえば、あっという間。例年になく好天に恵まれたアニバーサリー・イヤーは、女優のリリー・ローズ・デップが開会宣言を行ったオープニング・セレモニーでイザベル・ユペールがアカペラで映画祭バージョンの“ハッピーバースデイ”を歌い、英語の上映作品にも“英語字幕”が付き、70回記念イベントも目白押しだった。

グラン・テアトル・リュミエールで19時15分から行われたクロージング&授賞式セレモニーに引き続いて上映されたパルムドール受賞作の終演をもって、5月17日から12日間にわたって盛大に開催された“第70回カンヌ映画祭”が閉幕した。

◆クロージング・セレモニー&授賞式が華やかに行われるも、残念ながら河瀨直美監督の『光』は賞に絡まず!

今年のクロージング・セレモニーは、司会のモニカ・ベルッチが過去の主要賞受賞監督の名前を列挙した後、直ちに授賞式が始まり、カメラドール(新人監督賞)の審査委員長を務めたフランスの女優サンドリーヌ・キルベランが賞を発表。続いて“短編パルムドール”の発表となり、“短編コンペティション”部門の審査委員長を務めたクリスティアン・ムンジウ監督とアメリカの女優のユマ・サーマンがプレゼンターとして登壇した。

次いで“長編コンペティション”部門の授賞式に移り、まずはペドロ・アルモドバル審査委員長とモニカ・ベルッチが審査員一人一人を名前を呼んで紹介。今年の映画祭の様々なハイライト映像がスクリーンに映し出され、男性シンガーがピアノとギターとバンドネオンの伴奏でシャンソンをしっとりと歌うステージが挟まれた後、ペドロ・アルモドバル審査委員長が各賞を発表していった。

脚本賞のプレゼンターはパク・チャヌク審査員とスペインの女優マリサ・パレデス。審査員賞はマーレン・アデ審査員とフランスの男優ギヨーム・ガリエンヌ。女優賞はパオロ・ソレンティーノ審査員とフランスの女優イレーヌ・ジャコブ。男優賞はジェシカ・チャスティン審査員が一人で担当。監督賞のプレゼンターはファン・ビンビン審査員とガブリエル・ヤレド審査員。

グランプリのプレゼンターはアニエス・ジャウィ審査員と名匠コスタ・ガブラス監督。第70回記念名誉賞はウィル・スミス審査員で、最高賞パルムドールはペドロ・アルモドバル審査委員長とフランスの女優ジュリエット・ビノシュがプレゼンターを務めた。

 

〈第70回カンヌ映画祭〉長編コンペティション部門受賞結果
☆パルムドール:『ザ・スクエア』リューベン・オストルンド監督
☆第70回記念名誉賞:ニコール・キッドマン
☆グランプリ:『BPM(ビーツ・パー・ミニット)』ロバン・カンピヨ監督
☆監督賞:ソフィア・コッポラ『ザ・ビガイルド』
☆男優賞:ホアキン・フェニックス『ユー・ワー・ネバー・リアリー・ヒア』
☆女優賞:ダイアン・クルーガー『イン・ザ・フェイド』
☆審査員賞:『ラブレス』アンドレイ・ズビャギンツェフ監督
☆脚本賞:ヨルゴス・ランティモス/エフティミス・フィリップ『ザ・キリング・オブ・セイクリッド・ディア』
☆脚本賞:リン・ラムジー『ユー・ワー・ネバー・リアリー・ヒア』

◆授賞式後には審査員メンバーの記者会見が行われ、引き続いて受賞者たちが会見!

授賞式後の審査員会見

クロージング・セレモニー&授賞式の余韻が残るなか、長編コンペティション部門の審査員団による記者会見が行われ、今回のカンヌでの経験および選考についての感想が審査員の口々から語られた。下馬評が最も高かった『BPM(ビーツ・パー・ミニット)』が何ゆえ次点のグランプリなのかとの質問に、審査委員長のペドロ・アルモドバル監督は「審査員全員がこの作品を大好きではあったが、民主的な投票で決まったんだ」とコメント。最高賞のパルムドールを受賞した『ザ・スクエア』については、「とても現代性に富み、想像力にあふれ、面白い上におぞましかった」と賛辞を贈り、記者会見を結んだ。

(Text & Photo:Yoko KIKKA)