感動のTVシリーズから12年―新たに描かれるレントンとエウレカの物語『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』が、劇場3部作として待望の映画化を果たします。
本作は2005年4月よりテレビ放送され大ヒットを記録した伝説のアニメ。英雄アドロックを父に持つ主人公レントンが、鬱屈な日々をおくる中、ヒロイン・エウレカと出会い、世界を知る旅に出る――というストーリーは多くの視聴者の共感を呼び、2000年代を代表する作品となりました。そして、2017年。『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』が、9月16日(土)より全国107館にてロードショーいたします。
この度、ニュータイプ、アニメージュ、そしてアニメディアの三誌がついに手を組み、奇跡の三誌連合試写会が開催されました。
場所はアニメの聖地・秋葉原にあるUDXシアター!上映後のトークショーには総監督である京田知己さんと、アニメ評論家の藤津亮太さんが登壇し、本作について熱く語っていただきました。これには会場に駆けつけたコアなファンの皆さまも大満足!

◆日   程:9月8日(金)
◆場   所:UDXシアター (千代田区外神田4丁目14-1 4F)
◆登壇者:京田知己総監督、藤津亮太(アニメ評論家)※進行 ※敬称略

京田総監督コメント
<連日、試写会など、映画のキャンペーンお疲れ様です。活動をされて、いかがですか?>
(当日は大阪キャンペーン戻り)こんなにやるんだ…みんなそうなのかな?こういう仕事を今まであまりしたことなかったので・・・(「楽園追放」でご一緒させて頂いた)水島(精二)監督の凄さを改めて感じました笑)

<ライバルの枠を超えて、今回アニメ誌連合試写が実現しましたが、ちなみにどの雑誌派でしたか?>
僕はアニメック派でした。(※1978年から1987年にかけて発刊)中学生の時に、都会の友達に見せられて(笑)そのころは
まだアニメックもセル画の表紙ではなかった時代でした。アニメの知識の基礎は、そこから始まっていますね。

<レントンがメインで話が進行していきますが、14歳のレントンは自分の感覚などを反映したりしていますか?>
基本的には距離があります。テレビシリーズの時も自分自身をレントンに反映しているつもりは無いのですが、無意識に反映している部分もあるかもしれませんね。でも今回、特にチャールズとのやり取りの部分などは『自分が中学生だったらこう反応するだろな』という部分も入れたりしています。

<一見、一部テレビシリーズの編集版のように見えるところもありますが、実はすごく細かい部分が進化しているんですよね?>
テレビシリーズの素材をそのまま流用することが技術的に不可能でしたので、もう一度撮影し直す必要があったのですが、
その際に背景などの素材を現代的にアップデートすることが出来ましたので、ついでに台詞を変えたり芝居を変えたりしました。
結果としてシーンの意味であったり、細かな芝居、目線の動きなどの細かい演出にもかなり手を加えることとなりました。

<では今回のレントン像はかなり新しいものになっているということでしょうか?>
そうですね、というより、“今の自分たち”からみた“過去の自分たち”という部分もあるかもしれません。

<レントンに対してはどんな思いで接していますか?>
もしかすると“自分のこども”に接する感覚に近いのかもしれません。今回の企画が立ち上がった時に(脚本の)佐藤大さんや(キャラクターデザインの)吉田健一さんたちとも『ぼくらはもうレントンにはなれないね』って話をしていました。なので
演出的にはレントンを観察するという感覚かもしれません。それが正しいのかは分からないのですが…。

<そういう意味では今回のレイとチャールズは“観察する”という枠組みを担っていた気がします。>
そうですね。それが今回一番変わった部分かもしれないし、実は難しかった部分でもあります。テレビシリーズでレントンのおじいちゃんのアクセル役を演じていただいてた青野武さんが亡くなられ、そしてこれはメインスタッフのワガママかもしれないんですけど、青野さんの声じゃないアクセル・サーストンは観たくないという気分で一致していました。ですが作品の構造を考えたとき、何らかの父権的な存在の話は避けて通れないだろうと考えて、必然的にアドロックの話をやろうということになったんです。ですが物語上、早くにアドロックはいなくなってしまうので、レントンという存在をこじらせ過ぎた存在にしないためにも、見守る人…レイとチャールズをちゃんと義理の“親”にしてあげる必要がありました。そうすることでテレビシリーズにもあった「いなくなった父親と自分」という話の構造を強化しつつ再構築することにしたのです。

<今回、レントンの父、アドロックを古谷徹さんが演じられていますが、なぜ古谷さんを起用したんですか?>
キャラの設定画だけを観ると、渋いおじさんですけど、ただ渋いおじさんにはしたくありませんでした。アドロックというキャラクターを考えていくと、実はすごく繊細でロマンチストなのではないかと思ったんです。そうでなければあれほどめちゃくちゃな作戦立てないし、“サマー・オブ・ラブ”なんて言葉を使わないですよね(笑)。そんなロマンティックで、ナイーブな精神の持ち主だと考えと単にしぶい声ではないだろうな、と。そういう彼の要素が声だけで分かるようにしたかった。ただ弱いのではなくいろんなものを背負って物事を解決する、ある種主人公にもなりえるような存在感がある人と考えると、僕には古谷さんの声しか思いつきませんでした。以前映画の仕事でご一緒した時にも、本当にプロフェッショナルな芝居をする方だったので、いつか自分の監督作品でご一緒にできたらと思っていました。

<エウレカというキャラクターはシリーズ全体を通してどのように描こうと思っていますか?>
テレビシリーズではヒロインでも、本作ではただのヒロインにはしたくなかったのです。ただ男の子と出会って恋に落ちて、終わり、にはしたくなかった。なので、エウレカに対しては試練をどんどん与えているのですが、やっぱりどんどん課題を与えることに臆病になっていますね。昔なら作品のためだ!と割り切れたのですが、自分も歳をとり、本当にこんなにつらい目にあわせていいのだろうか、と。作品的にはそれが正しくても悩んでしまいますね。

<(キャラクターデザインの)吉田健一さんに聞くとエウレカを娘のように想っていますよね(笑) 京田さんはいかがですか?>
エウレカは娘というより、憧れの女性であってほしいのかもしれません。特に今回はそれが明確になりつつある気がします。まぁ、いろいろ課題を与えすぎて、もう与えるものはないのかな、とも思うのですが。(笑)こういう女の子であってほしい、というより、人として、こういう強い生き様を持って生きてほしいという気持ちが強いです。

<最後にメッセージをお願いいたします。>
今回、色々な壁にぶつかるたびに色々な方に助けて頂いて、僕や現場のスタッフ達の間では、この作品は奇跡で成り立っていると話しています。「エウレカセブン」というタイトルは、すごく恵まれていて、すごくみんなに愛されていることがよくわかりました。なので、ここまでたどり着けました。そして、そこに至る以前に12年間好きでいてくれた方々のおかげだと思っていますし、感謝しています。それをちゃんとお返ししなくちゃいけないと思っています。「2」「3」に向けて、12年前に作ったものよりもっといいもの、もっと皆さんに喜んでもらえるものを作って、毎回さらに驚かせて、かつ「観てよかったなぁ」というものが作っていけたらよいと思っていますので、最後まで、お付き合い頂けると幸いです。