この度、ドキュメンタリー映画『旅する写真家 レイモン・ドゥパルドンの愛したフランス』(配給:アンプラグド)が9月9日よりシアター・イメージフォーラム他全国公開致します。この度、9月1日に監督来日記念トークイベントが行われました。

映画『旅する写真家』監督来日記念トークイベント
■日時:9月1日(金) 
■場所:アンスティチュ・フランセ エスパス・イマージュ
■登壇者:レイモン・ドゥパルドン監督、
クローディーヌ・ヌーガレさん(共同監督)
■司会:小柳帝さん(ライター・編集者・翻訳者)

本作は、フランスを代表する報道写真家・映画監督であるレイモン・ドゥパルドンが40年に渡って世界中を旅し、撮りためてきたフィルムの映像と、現在フランスの田舎町を撮り続けている姿を交互に編集したドキュメンタリー作品である。このように、彼の過去と現在をつなぎ合わせることによって、一人の偉大な写真家の人生を描き出している。
二つの時代を並行して構成した理由を問われると、今作の共同監督であり、レイモンの映像作品の製作・録音を担当してきたクローディーヌ・ヌーガレは、「2性の構成です。私たちは30年前から映像はレイモン、ナレーションは私が担当するのが当然でした。この作品を撮る前の10年間、私たちは農民の生活を映し続けてきたんです。でもここで、一度自分たちを振り返ってみることが大事だと思いました」と、この作品の意義を語った。ちなみにクローディーヌは、作品作りにおけるレイモンのパートナーだけでなく、妻としても公私ともに彼を支えている存在だ。一方レイモンは、「かなり前から保存していたアウトテイクのフィルムを、何かの役に立てたいと考えていたんだ。その時、大判カメラを持ってフランス国内の旅に出発する予定でいたし、こうした大きなフォーマットで何かしたいと考えていた。ちなみに、ためていたフィルムには音が無かったから、そこへナレーションをクローディーヌにお願いしたんだ。」とその秘話を披露した。

また、映画監督になった経緯に関し彼はこう答えている。「当時映画はとても苦労のいることだったし、決して便利な手段ではなかった。手持ちにするととてもブレてしまうし、そういった点では写真の方がよかったんだ。でも今ではカメラ一台で写真も動画も撮れますよね。私は当時映像の撮り方を知らなかったんだ」。また、「1967年に仲間とガンマ社を設立したとき、映像も写真もどちらも撮ることを方針としたけれど、当時私たちが期待していたテレビ会社は私たちの撮影した映像を決して尊重してくれなかった。だから、映画の内容にニュース素材を使用しようと決めたんだ。」と当時を振り返る場面も。
また、今までに映し出してきたテーマについても語った。選挙中の政治家や、砂漠でとらわれている人質、人けのないところに住む農民など、それらを撮影する共通項として、それは「最善の方法で彼らを撮影することだ」とレイモンは言う。「そこに介入しない精神を持って撮影をする。カメラがそこに存在しないような形で展開していくんだ。カメラの前でごまかしていない人々の姿だ。」とそのこだわりを見せた。
クローディーヌが本作の完成できた理由の一つに挙げたのは“デジタルの到来”。「70年代から今日に至るまでのアーカイブを作成することは、10年前では出来なかった。その点でいうと、本作は例外的に素晴らしいだろう」と自信をのぞかせ、また、映画作りの秘訣として「自分自身がプロデューサーであり自由であること」と話し、自由にテーマを扱えることの重要さを語った。
最後に、「夫婦で映画作りの出来ることを誇らしく思う」と微笑みあうレイモン・ドゥパルドンとクローディーヌ・ヌーガレだった。
映画『旅する写真家 レイモン・ドゥパルドンの愛したフランス』は9月9日(土)よりシアター・イメージフォーラム他全国順次公開。