数々のベストセラーを手がけている直木賞作家・重松清が1996年に発表した傑作小説「幼な子われらに生まれ」。『ヴァイブレータ』『共喰い』などの脚本家・荒井晴彦が重松と映画化の約束を交わし、その脚本が『しあわせのパン』『繕い裁つ人』などで幸せの瞬間を繊細に、丁寧に紡いだ映画で多くの観客の心に感動を届けてきた三島有紀子の手に渡り、ついに映画化が実現した。
本作8月26日の公開に先立ち、プレミア試写会を実施致しました。

●日程:8月2日(水)
●場所:ニッショーホール (港区虎ノ門2-9-16)
●イベント登壇者:浅野忠信(43)、田中麗奈(37)、宮藤官九郎(47)
南沙良(15)、鎌田らい樹(14)、新井美羽(10)、三島有紀子監督(48)

満席の会場の中に拍手で迎えられた浅野忠信さん、田中麗奈さん、宮藤官九郎さん、南沙良さん、鎌田らい樹さん、新井美羽さん。家族を描いた本作で、血のつながった親子、血のつながらない親子をそれぞれを演じており、親子の夢の舞台挨拶が実現しました。
バツイチ・再婚・連れ子のパパになったサラリーマン・田中信を演じた浅野さんは、「台本をもらってすぐにやりたいと思った作品。女性の監督と仕事をするのは初めてだったが、監督がとても面白い形で詰め込んでくれた」と本作の完成度の高さをアピールしました。
三島監督は「一瞬でもお芝居に見えるようなところがないようにしようと思った。セリフや動きが突然変わってもいい、そのとき感じた気持ちを大事にワンテイクで撮ろうというのを目指した映画でした」と明かしました。
さらに「浅野さんはお芝居というような瞬間が一瞬もない。子供のようにむき出しで向かって来られる役者さんは初めてでした」と続けると、浅野さんは「監督にさまざまな意見を出したり、どんどんわがままを言って困らせてしまって……」と申し訳なさそう。そんな浅野さんに三島監督は「でもそれがよかったんです。1人ひとりの気持ちを確認しながら、ぶつかり合いの化学反応をとにかく記録していった」と答え、浅野さんがいたからこそ実現できた作品なのだと明かしました。
また、浅野さんは「子供たちにすごく救われました。大人としてしみついてしまった何かがあって、それが子供と向き合った時にリアルにそのシチュエーションのままでいてくれた時に我に返った。自分でも想像していなかったリアクションが飛び出るので夢中になりました」と現場を振り返りました。
一方、田中さんは夫に頼りきった専業主婦という今までとは違った役作りへの苦労を話しました。撮影当時は新婚2か月ほどだったそうで、顔パックしながら夫を迎えるシーンには「その頃はパックして旦那さんを迎えるなんてありえないと思っていましたが、今は旦那さんの前でパックして髪をドライヤーで乾かしながら台本を読んでいるので、結婚ってそういうものなんだなと」と自身の生活と重ねて振り返りました。撮影中には手作りの中華スープを差し入れしたこともあったそうで、共演者から「現場で癒やされました」と褒められると、田中さんは「初めて50人分くらい作ったので、なかなか味の調整とかが難しかったです」と振り返りした。
DV癖のある奈苗の元夫・沢田を演じた宮藤さんは、「なかなかヒドい男の役で、好感度が下がるかも…嫌いにならないでください」と会場の笑いを誘いつつ、「奥さんや娘の悪口とか、思っちゃいけない事が(台本に)書いてあるので、逆に演じやすかったです」と苦笑い。劇中では初共演の浅野と対峙するシーンもあり「信と沢田は表向きは正反対ですけど、多分共感していく部分がすごくあるんだろうなと思います。(浅野さんとのシーンは)すごくやりやすかったです」とコメントしました。
「不安な気持ちはあったが、温かい現場でリラックスして現場に臨めたと笑顔で振返るのは、今回が演技初という南沙良さん。三島監督は「リアルな感情のぶつかり合いを撮りたいと思ったときに、南沙良さんみたいな反応力は重要。反射力が高く素晴らしい女優」と絶賛しました。
奈苗の次女役を演じた新井美羽さんは、「浅野さんと一緒に食べた神戸牛が忘れられない」と、浅野さんとの思い出を振り返りました。


またこの日の舞台挨拶では小学校に通う新井美羽さんの夏休みの宿題を手伝うことに。買い物の代金を計算するという算数の問題がだされると、浅野さんは「たぶん2千円で買える。おつりはおこづかいであげるっていうのが、うちのやり方」と浅野家のルールを明かしながら冗談交じりに語り、新井さんたちを笑わせました。しかし、その後しっかり計算を順序だって先生のように新井さんにも分かりやすく解説し解答。「家に来てもらって全部、教えてもらいたい」と新井さんからオファーを受けていました。
最後に浅野さんから「自分自身とても気に入っている作品なので、たくさんの人にみてもらいたい」、田中さんから「とても好きな作品。この映画を必要とする人はきっといるはず」、宮藤さんから「どこの家庭にも起こりうること、誰もが誰かに感情移入しながら見れる作品」、三島監督から「もがきながら、格闘しながらできた作品。観ていただけたら何か心にのこるはず」とそれぞれが本作に込めた思いや本作への自信、そして力強いメッセージを会場に送りました。