2015年のトロント国際映画祭で26歳(当時)のステファン・ダンが監督し最優秀カナダ長編映画賞を受賞し話題になった映画『さよなら、ぼくのモンスター』 が新宿シネマカリテで開催中の「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション 2017」にて公開されました。自身もゲイであることを公言しているステファン・ダン監督の半自伝的な要素を持った本作は、大人になる一歩手前で自分自身を探しもがく主人公を繊細な映像とスタイリッシュな音楽で描写。その新鮮な輝きは観客を一瞬で虜にし、見事2015年の第40回トロント国際映画祭で最優秀カナダ長編映画賞を受賞。さらにアトランティック映画祭では監督賞、脚本賞、マイアミ・ゲイ&レズビアン映画祭審査員賞、メルボルン・クイア映画祭審査員賞を受賞するなど一躍若手有望監督の仲間入りを果たしました。 本国カナダでの初上映から2年という、満を持しての日本公開に、カリコレのラインナップが発表されると本作も大きな注目を集め、発売からわずか数時間で完売するほどの人気ぶり!
 そしてこの度、主演を務めたコナー・ジェサップがカリコレに合わせ緊急来日!上映終了後に舞台挨拶に登壇しました。

□日程:7月16日(日) □場所:新宿シネマカリテ(新宿区新宿3-37-12 新宿NOWAビルB1F)
□登壇者:コナー・ジェサップ(23)  聞き手:新谷里映

6年間でなんと7度も来日しているというほど日本好きのコナー・ジェサップは「おはようございます。コナーです。はじめまして」と流暢な日本語で挨拶。日本の魅力を聞かれると「どうしてこんなにも日本に惹かれるのか自分でもわからない。でも日本に着いた瞬間、ここが僕のいるべき場所だと強く感じたんだ。」と語り、「今回は5週間滞在するよ。能登に行こうと思っている」と通な発言も。日本の映画作品も大好きで「是枝裕和監督、高畑勲監督の作品が好き。俳優では樹木希林さん。皆、本当に素晴らしい。小津安二郎の『晩春』は初めて僕が接した日本映画で、すべて理解できているとは思わないけど、大好きだ。何度も見返してしまう」と目を輝かせる。俳優だけでなく監督やプロデューサーとしても活躍していることもあり、「宮沢賢治が好き。いつか「銀河鉄道の夜」を題材に作品を作ってみたいと思っているんだ」と夢を語った。

本国カナダのみならず数々の映画祭で賞を受賞している本作については「監督の人柄が感じられる脚本で、彼の人生観や喜び、ユーモア、誠実さにとても感動したんだ。きっと映画を見た人たちも同じように感じたんだと思う。」とコメント。監督のステファン・ダンの自伝的要素も強い内容のため、撮影中に監督が感情的になる場面も多かったといい、「監督からはすごくインスピレーションをもらったよ。でも、演じるときは、彼(の自伝要素)に引っ張られないように気を付けていた。模倣になってしまうのはよくないから」と演技の苦労を語った。自身のセクシャリティに葛藤するという難しい役どころだったが、「感情的な場面はゴールが見えるからやりやすいんだ、でも日常の何気ないシーンのほうが難しかった。好きな男の子(アリオシャ・シュナイダー)と車の中で普通の世間話をするシーンとか。」と明かす。
彼の心の声を代弁するかのように登場するハムスター(声を担当したのは『ブルーベルベット』の名女優イザベラ・ロッセリーニ!)とのやり取りは「とにかく待つ、待つ…待つしかないんだ!ハムスターはカメラを向けられるとフリーズするから…ものすごくフラストレーションのかかる時間だった!」と苦笑い。「撮影中は本当に形になるのか?と半信半疑だったけど、完成した作品を観たら素晴らしい場面になっていた。温かくて、悲しいけれど、観た人が何か自分自身の幼い頃の思い出を重ね合わせられるようなシーンになったと思っている」と自信をみせた。

この日はコナー本人の希望で、急遽観客からの質問タイムが実現!「俳優だけでなく製作にも意欲的に取り組んでいるが、どちらをやっていきたいと思っているのか」という質問には「日によっていろいろな気分になるけど、今は製作かな。役者は作品に関わるのは一瞬で、やっている間はすごく孤独。製作はそのあとも作品にずっと関われるから・・」と率直な思いを吐露。
「日本の邦題『さよなら、ぼくのモンスター』(原題はCloset Monster)をどう思うか。」という質問には「日本のタイトルは直截的でシンプルだから気に入っているよ。原題の“Closet monster”という単語は、英語では自分のセクシャリティを隠すことを指しているけど、よく知らない人は、超自然的なものやホラー映画と感じる人もいるかもしれない。いろいろな意味に取れるところも原題の魅力かな」と語った。
「日本が大好きなので、日本で公開されたことが本当にうれしい。日本の皆さんに楽しんでもらえたら」と作品をPR。上映後は詰めかけた観客との写真撮影やサインに丁寧に応じ、その気さくで誠実な人柄がみえるイベントとなった。