<お客さんから質問1> 鈴木常吉さんが映画のスパイスになってました。オファーのいきさつを教えてください。
山下:「深夜食堂」というドラマで会った時に、常吉さんから「山下、俺を出せ」って言われたんですよ(笑)今回企画が上がった時に、勝間田役は常吉さんだ!と思ってオファーしたんです。
鈴木:気楽に言ったことだと思ったかもしれないけど、映画に対する思いはあって。何でもかんでもって訳にもいかないし、俳優だけで仕事したいってことじゃないし。ただ、山下さんの映画に出たいってのがあったね。
山下:常吉さん、プロデューサー、キャスティングと4人で飲んだ時に、なぜかずっと横浜聡子しか褒めなかった。ちょっとショックでしたね(笑)

渡辺:常吉さんへの演出は?
山下:このままの雰囲気で来て欲しいんだけど、方言というハードルもあって、常吉さんは悩んでいましたね。“らしさ”がなくなるのが嫌だなと思ってました。それに、ZICCOさんが鬼教官でしたからね(笑)
ZICCO:打ち解けたのはつい先月くらいですよ!常吉さんは相当根に持ってたと思う(笑)避けてるのもわかったし。目を観て、今だから言うけど、あの時は嫌いだったんだよって言われて。
鈴木:俺はね、人間性が嫌だとかじゃないの。あの時は顔を見るのも嫌だったの!(一同爆笑)

<お客さんからの質問2>オダギリさんだけ標準語だったのが気になりました。どういう意図でそうしたのでしょうか?
山下:オダギリさん演じる白岩と北村有起哉さん演じる原だけ標準語なんですよ。人生の半分以上を東京で生活していた人、という設定で。疎外感というか、居場所がない男というのがテーマにあって。聡と大げんかするシーンで方言が出てしまう、っていうのを考えたこともあったけど、あざといかなって思って、結果標準語にしました。

高田:僕は標準語で脚本を書いていて、ZICCOさんに函館の方言に変えてもらったんですよ。
ZICCO:僕が入って表現が変わったところはありましたか?
高田:表現が変わるというか、温度が上がる感じはしましたね。
山下:標準語の頃は忘れちゃいましたが、聡は見え方が違うんだろうなと。あれで標準語だと角があってきつい気がする。「オーバー・フェンス」は函館っぽくないって言われることがあるけど、僕は今の函館を切り取ったと思っています。前二作が強烈だったけど…でも、地元の人たちは喜んでくれているんですよ。

<お客さんからの質問3>優香さんが意外なキャスティングでした、なぜ優香さんに?
山下:優香さんは白岩の元妻の役ですが、実はなかなか決まらなくて。この役にはちょっと怖い人が良いかなと思ってて…優香さんとは、前々からいつか仕事したいと思ってたけど,この役にふさわしいかはよく分からなかった。実際は会って決めましたね。優香さんはやわらかいけど、真顔になるとちょっと怖いところがあって、そこで決めました(笑)でも現場では“みんなの優香”でしたね。結果的に、今までに見たことのない優香さんが出たかなと思っています。

渡辺:現場での印象的な事件とか?
山下:函館でお借りした職業訓練校の中に、ある先生がいて。建築科の先生なんだけど実際には大工をした経験がない人なんですよ。その人が面白すぎて、高田さんが中野さん演じる青山教官の役柄に取り入れましたね。
高田:その方に大工の経験はないんですよね、って言ったら「でもそういう学校の先生っていますよね」って怖い目で言われた(笑)で、台本の中に、生徒から「あいつ現場出たことないんだってよ」って言われる、というくだりを追加しました。だから次に会ったら怒られるかもしれない(笑)
鈴木:いい人なんだけどね。
山下:「映画的には〜」って話してくるのに若干イラッとしましたね(笑)僕の方が映画知ってると思うのにな、って。
中野:満島くん演じる森がヘルメットをいじっているのを見て僕がイライラする、っていうシーンがありましたが、テストの時に、その先生が、こっちのヘルメットの方がいいですよって、カメラ回ってるのに入ってきたんですよ!
山下:すっごいいい人なんですけどね(笑)それが青山教官という役柄に反映されました。
渡辺:隣のクラスの教官役で出てますね、その先生。見つけてみてください。

<ここで、鈴木常吉さんのLIVEが!>
1.思ひ出(「深夜食堂」主題歌)
2.とんでいけ(「オーバー・フェンス」挿入歌)  演奏:鈴木常吉さん/歌:山下敦弘監督)

(山下監督が歌う貴重な場面もあり、その後鈴木さんはアンコールにも応え、盛大な拍手に包まれてLIVEは終了!)

渡辺:最後にご挨拶をお願いします。
ZICCO:是非劇場でご覧いただいて、どうにか僕を見つけて欲しいです。地元・函館は盛り上がっています。函館の人間としては嬉しいです!
中野:僕も撮影を通して函館が大好きになりました。是非劇場でご覧ください!
鈴木:そんな映画あったっけ、て言われる映画の方が多いと思う。でも、この映画は残る。日本映画史に残ったと思ってる。僕はそんな映画に出ることができて嬉しいです。じゃ、どうも!
松澤:17(土)に公開ですが、同じ日に公開する映画がたくさんありまして…そんなタイミングで、しかもこっちは初日に主役もいない(笑)!ですが、常吉さんが言った通り良い映画だと思います。長く愛されていって欲しいです。宜しくお願いします。
高田:僕もこの映画が好きです。感動するんだけど、どういう種類の感動なのかがよくわからなかった。普段見ている映画で味わえない何かをお求めの方は是非!
山下:オダギリさん蒼井さん松田さん満島さんなど今日は不在ですが、今日のこのメンツだけでもこれだけ盛り上がる映画です!“全員主役”の気持ちで作った映画です。それくらいこのメンツは魅力的ですし、どこを切り取っても自信を持ってお送りできます。スタッフ・キャストにとっても、その後の人生に影響が出てくるような映画になりました。今、劇場で見ることに価値がある映画だと思っています。自信のある映画です。DVDじゃなくて、劇場でご覧いただきたいです。今日はありがとうございました!