7月16日(土)、テアトル新宿にて映画『アルビノの木』が公開され、キャスト・監督総勢10名が登壇しての初日舞台挨拶が行われました。構想8年、撮影から公開まで2年。劇場を埋め尽くす観客を前に、金子雅和監督は「感無量」と語り、出演者たちは自然の中での美しい絵作りに定評のある金子監督作品に参加した喜びと同時に、その裏側の過酷すぎる撮影エピソードを暴露しました。以下、コメント。

松岡龍平(主人公:ユク役) 命の危険すら感じた
この作品に出会えて、自分の等身大の役を演じられて、すごく幸せに思っております。(川の中で格闘するシーンについて)撮影が10月半ばから後半ぐらいだったのですが、寒くて風邪引くどころの騒ぎじゃなく、命の危険を感じるくらいの現場でした。撮影前日の夜おそくくらいまで監督とひざ突き合わせて煮詰めて煮詰めて撮ったシーンだったのでとても印象に残っています。監督は、ちょっとした手の置き位置とか立ち位置とか、歩くルートとかすごくこだわって撮られる方で、美しい絵ですごく感激しました。

東加奈子(ナギ役) 大変な現場に来ちゃった、という思い
撮影初日に長野県と群馬県の県境の山のてっぺんに連れて行かれました。1メートル先の視界も見えないくらい霧がすごくて車で待機していたんですけれど、晴れたら、軍手をわたされたんですね。「これでロープを伝って山を降りてください」と言われて。「大変な現場にきちゃったな」と思いました(笑)。この作品は2年前にとったもので、今日という日を迎えられて本当に嬉しく思っております。

山田キヌヲ(ユクの姉・イズミ役) 金子監督がどんどん大きくなった
10年以上前に金子監督と初めて映画をやって、それからこんなに大きい映画館でかかる映画になりました。金子さんがどんどん大きくなって、その背中を追いかけるのに一生懸命です。

増田修一朗(ユクの同僚・今守役) 幻想的な絵を撮る監督
ぼくは金子監督の作品には初めて出演したんですが、本当に幻想的な絵を撮る監督だなと思いました。そんな作品に僕も参加できてとても幸せです。

尾崎愛(役場職員・アヤ役) 須坂はとてもきれいでいい所
他の方みたいに登場人物同士のドラマっていうのはそんなになかったので、やはり景色の美しさと須坂の関係者の方々によくしていただいたのが一番の思い出です。須坂はとってもきれいな場所でした、夏休みのご予定決まっていない方はぜひ足を運んでください。

松蔭浩之(害獣駆除会社社長・根元役) 現代の問題がリアルに描かれた秀逸な脚本
金子監督とは第1作「すみれ人形」からおつきあいが始まりました。台詞回し、10年たって、どうでしょう?ちょっと上手になったかな?こんな大スクリーンで上映されて、ほんと10年間金子監督についてきてよかったなと思っております。2年前に脚本を見せていただいたときに具体的には言いませんが放射能もからんでいるし、現代のいろんな問題というのが金子流のファンタジーの中にすごくリアルに描かれている秀逸な脚本だと思ったので、これは何の役でもいいから出してもらいたいと思って、関わらせていただいています。

細井学(役場課長・群田役) 映画を見てびっくりして圧倒された
わたしは撮影に参加したのは役場の中だけだったので、映画を見て「ああーすごくきれいなロケーションで撮っているんだな」とびっくりして圧倒されたのをよく覚えています。

松永麻里(ユクの母・佑子役) 監督の真伨な人柄があらわれた美しい映像
金子監督は映画に対しても人に対してもすごく真伨な方なんですね。それが美しい映画にも映像にもあらわれているんじゃないかなと思いました。今後もぜひ参加させていただいて、いい映画づくりをしていけたらなと思っております。

山口智恵(アヤの祖母・チトセ役) 本作でおばあさん役デビュー以来おばあさん役のお仕事
80歳の役をやらせていただきました、いろんなメイクと衣装に助けられまして。この役の後ずっとおばあさんの役が延々と続いているんです。監督が撮られる絵が本当にきれいでビックリしました。才能のある監督だと思っていますのでいつまでもついていきます!

監督・金子雅和 人間以外のものも常に存在していることを感じてもらいたい
この作品は、2008年、自分の長編第1作目で山田キヌヲさんにヒロインをやっていただいた「すみれ人形」という映画が公開されまして、そこから次の長編をつくりたいと思ってずっと考えつつ、2008年の夏の段階で「アルビノの木」というタイトルと大きな形での構想が始まっていました。そこからみなさんの前で上映されるまで8年かかってしまいましたが、今日は本当に感無量です。本当にありがとうございます。劇映画の場合だと人間が主人公なので、人間が中心でその背景は背景でしかないとなるのが普通だと思うんですが、自分は背景の部分にこだわりたい、ひとつの絵としての美しさや、人間以外のものも画面のなかに常に存在しているということを、ドラマを追っている人がふとした瞬間に感じてもらえるように、ということをいつも絵作りの中で考えています。