今夏の「18歳選挙権」の施行、学生による緊急アクション「SEALDs」の活動への注目を踏まえ、<若い世代へ戦争を語り継ぐ>をテーマに開催された本イベントには、国際基督教大学の学生の他にも、他校の学生やSHIELDsのメンバーなどが参加。

上映前には、戦争の語り継ぎを行っている高橋文雄さんが登壇。オルミ監督とほぼ同世代、1933年生まれで、少年ながらに、開戦から敗戦までの記憶は今もハッキリしているという高橋さんは、野坂昭如の『火垂るの墓』で有名な神戸生まれ。終戦の数カ月前に瀬戸内海の小島に祖母と姉と疎開、広島に原爆が落とされたことを知った祖母が、親戚を探しに広島へ行ったものの、誰もみつけることができず、戻ってから漏らした「まるで屠殺場のようだった」というたった一言を今でも強烈に覚えていると語り、「屠殺場」という言葉に参加者の学生たちもショックを受けていた。あまりにも辛い光景を見て、その後は二度と戦争を語らなかった祖母の記憶と、自分自身が戦場には行ったわけではないという理由から、昨年地元FM局に出演するまで、戦争のことをほとんど語ってこなかった高橋さんだが、安保改正法案の採決以来、安保法改正などにより日本が再び戦争への道を進むのではないかという懸念から、後世に戦争の記憶を語り継ぐことの大切さを認識したという。会場に集まった学生たちも「何も知らされないまま」若者が戦争に巻き込まれることを懸念する高椅さんの言葉に真剣に耳を傾けた。

上映後には、学生たちとの意見交換会が活発に行われた。敵の姿を見せないのは何故か?という質問からはじまり、映画を観て何かを考えなければと思うものの今は砲撃のシーンが怖かったとしかいえないという率直な感想や、輝く木や動物が登場するシーンの意味、タイトルに込められた意味などをディスカッション。積極的な発言が続き、イベント終了後にも感想を語り合う学生の姿が多くみられた。

本国イタリアでは、第一次世界大戦開戦100週年にあたる2014年に公開され、高校生や大学生など多くの若者が観たという『緑はよみがえる』。名匠オルミが、現代にあらためて平和を問いかけ、戦争の記憶が薄れゆく中で、今こそ語り継いでいかなくてはならないと強く訴えかけたメッセージが、確実に日本の若い世代にも伝わったことを感じさせるイベントとなった。