現在新宿ピカデリーほかにて全国公開中の『の・ようなもの のようなもの』。その公開を記念して、森田芳光監督の輝かしい伝説の幕開けとなった劇場デビュー作『の・ようなもの』がこのたび期間限定で再び上映。そのトークイベントに輝きを放った主演でエリザベス役の秋吉久美子さんと、当時志ん魚としてデビューした伊藤克信さん、『の・ようなもの のようなもの』の杉山泰一監督が登壇しました。

—ひと言挨拶

秋吉:(公開当時の)35 年前とは、今観ると全然違う新しい気持ちで観ることができました。
あの時は全然気付かなかったけど、見直すと本当に伊藤くんは上手かったんだね。
伊藤:人間ってのは 35 年経つとこんなに変わるんです。秋吉さんは相変わらず怖い人ですね。(笑)
杉山:僕は助監督でカチンコ打っていましたが、つい昨日のように覚えているので今日はなんでも聞いてください。

—撮影時の印象、エピソード

秋吉: 『の・ようなもの』のスタッフは、所謂アンダーグラウンド系じゃなくてとても品の良い人たちでした。森田さんとは、そんなに細かなやりとりはしなかったけど1回だけ呼び出されて「(秋吉さんは)監督への尊敬のまなざしが欠けています。このままでは女子高生役の人たちからもなめられてしまうから変えてください!」と言われました。いちいち考えたり、カメラ位置で悩んだり、(当時は)なんなんだ、と思っていたんだけど見直すと世界観がジグソーパズルみたいで、青春の感受性に溢れて、輝きや屈託のなさ、それゆえの残酷さが描かれていて、森田さんも伊藤くんも天才だったんだね!(笑)
森田さんは、(フランシス・フォード・)コッポラで、伊藤くんはアル・パチーノ。もう『ゴッドファーザー』パート1、パート2みたいなものじゃない?!
伊藤:当時は、もう無我夢中でしたから。秋吉さんは大スターで怖かったし。でも今思うと俺、良い役だったよね!
秋吉:嘘だよ、最初から伊藤くん図々しかったよ!(笑)
杉山:ソープ嬢のエリザベス役は森田さんになんて口説かれて演じることになったんですか?
秋吉:口説かれてないです。脚本をみて単純に面白いと思ったから出ただけ。ソープ嬢をあんな風に描いているものがそれまでなかったと思うし。影を抱えているような事件的な女性ではなくて彼女含め青春感があった。

—『の・ようなもの のようなもの』を観て

秋吉:人間の感受性が前に出ていて、そういう世界感が共通していた。志ん魚と志ん田(松山ケンイチ)の世代交代だよね。前作でエリザベスが志ん魚の前からそっと身を引いていくように今度は志ん魚の番がきたんだって思いました。
もし10年前後でさらに次回作ができるとしたら、エリザベスは養老院の園長さんになって、そこに脳梗塞の志ん魚ちゃんが入院してくる!
どうかしら!