映画祭12日目の24日(日)。後は賞の結果を待つばかりとなった最終日。長編コンペティション部門に選出された全19作品が、パレ・デ・フェスティバル内の4会場においてリピート上映された。怒濤の日々も過ぎてしまえば、あっという間たが、今年は好天続きだったことが何よりも有り難かった。
 グランド・シアター“リュミエール”で19時から行われた授賞式セレモニーに引き続き、クロージング作品に選出されたフランスのリュック・ジャケ監督による環境ドキュメンタリー映画『アイス・アンド・ザ・スカイ』が2回(20時15分からと23時から)上映され、5月13日から12日間にわたって開催された“第68回カンヌ映画祭”が閉幕した。

◆ランベール・ウィルソンが司会を務めたクロージング・セレモニーは、驚くほど華やかにショーアップ!

 オープニング・セレモニーに続き、クロージング・セレモニーの司会をフランスの人気俳優ランベール・ウィルソンが務めた今年の授賞式セレモニーは例年に比べ、格段にショーアップされてたので驚いた。オープニングアクトは日本人パフォーマンスユニット“enra”が映像と人間の動きをシンクロさせた鮮やかなライブパフォーマンスを披露。さらにはコンペ2作品に出演したアメリカ人俳優ジョン・C・ライリーがダンシングしながら歌ったり、しっとりしたビアノの弾き語りがあったり……。そして華やかな顔ぶれのプレゼンターが次々と登場し、正装で身を固めた観客たちを魅了した。
 “短編コンペティション部門”のプレゼンターは中国の女優チョウ・ユンで、この部門と学生映画を対象とする“シネフォンダシヨン”の審査委員長を務めたアブデラマン・シサコ監督とともに登壇。部門の垣根を超えて審査される新人監督賞の“カメラドール”は、審査委員長の女優サビーヌ・アゼマがアメリカの男優ジョン・C・ライリーを伴って登場し、受賞者を発表した。
 続いて、“名誉パルムドール”がアニエス・ヴァルダ監督の映画人生に対して授与され、プレゼンターとして登場したジェーン・バーキンが、「兵士であり、戦う者であり、我々の中で最も強く、ヌーヴェルヴァーグ唯一の女性」と称賛。感激したアニエス・ヴァルダ監督は亡き夫ジャック・ドゥミにオマージュを捧げ、「このパルムは我が家に置きます。ジャックのパルムの隣に。彼とのバーチャルな生活の中、2つの本当のパルムが波打ちます。それはクロワゼットと 天使の湾の中に 」とコメントした。

 “長編コンペティション”部門の脚本賞のプレゼンターはイタリアとフランスで活躍する女優ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ。女優賞はフランスの男優タハール・ラヒム。男優賞はメキシコ人女優のミシェル・ロドリゲス。審査員賞のプレゼンターとして登場したのはフランスの女優レティシア・カスタ。監督賞はイタリア人女優のヴァレリア・ゴリノ。グランプリのプレゼンターはデンマークの男優マッツ・ミケルセン。そして、ベルギー出身の女優セシル・ドゥ・フランスが、最高賞パルムドールのプレゼンターとして登場した。   
 我々報道陣は、その模様を授賞式会場のリュミエールではなく、ドビュッシー・ホールのスクリーン映像で観るので、賞が発表される度に気兼ねなく歓声をあげたり、ブーイングしたりと喧しいのだが、英語作品が非常に多く、コンペ初参加の新鮮な顔ぶれを常連監督が迎え撃つ構図となった今年は、下馬評の高かった作品『キャロル』や『ユース』に対して順当な賞が贈られなかったことで、不満の声とどよめきが広がった。受賞結果は下記の通り。

〈第68回カンヌ国際映画祭〉長編コンペティション部門受賞結果
☆パルムドール:『ディーパン』ジャック・オーディアール監督(フランス)
☆グランプリ:『サン・オブ・サウル』ラズロ・ネメス監督(ハンガリー)
☆監督賞:ホウ・シャオシェン『黒衣の刺客』(台湾)
☆男優賞:ヴァンサン・ランドン『ザ・メイジャー・オブ・ア・マン』(フランス)
☆審査員賞:『ザ・ロブスター』ヨルゴス・ランティモス監督(ギリシャ)
☆女優賞:ルーニー・マーラ『キャロル』(アメリカ)/エマニュエル・ベルコ『モン・ロワ』(フランス)
☆脚本賞:ミシェル・フランコ『クロニク』(メキシコ)

◆授賞式直後の20時15分からイーサン&ジョエル・コーエン兄弟ら審査員団の記者会見が行われ、引き続いて受賞者たちが会見!

 クロージング・セレモニーの余韻が残るなか、20時15分より長編コンペティション部門の審査員団による記者会見が行われた。この会見で、審査委員長のコーエン監督は、選考作における審議の過程が明かし、パルムドール作品について「『ディーパン』に最高賞を授与しようという決断はすぐについたんだ。我々はこの作品にとても熱くなったからね」と手放しで絶賛。ギレルモ・デル・トロ監督はグランプリ受賞作と監督賞に言及した他、残る審査員メンバーも今回のカンヌでの経験と心動かされた作品について、口々に語った。
(記事構成:Y. KIKKA)