松竹配給にて12月12日(土)より公開となります、山田洋次監督の83作目となる最新作『母と暮せば』。
1948年8月9日、長崎で助産婦として暮らす母のもとへ、3年前に原爆で亡くしたはずの息子がひょっこり現れる。楽しかった思い出話や、残していった恋人の話をして過ごす二人の日々を描いた、山田監督が初めてつくる、やさしく泣けるファンタジーです。
作家・井上ひさしさんが、広島を舞台に描いた『父と暮せば』と対になる作品を、長崎を舞台につくりたいと発言していたことを井上さんの三女・麻矢さんを通じて知った山田監督が、終戦70年となる今年、その井上さんの想いに捧げ映画化にのぞみます。そして、母・伸子役に吉永小百合、息子の浩二役に二宮和也、浩二の恋人・町子役に黒木華という理想的なキャスティングが実現しました。

本作の音楽を坂本龍一氏が手掛け、山田洋次監督とは今回が初タッグ。昨年より療養中だった坂本氏にとって、今作が復帰第一作となります。
今作の企画が立ち上がってすぐに、山田監督から坂本氏の名前が挙がり、映画音楽の仕事をオファーしたところ、『男はつらいよ』シリーズの大ファンだという坂本氏もすぐさま快諾し実現に至りました。
企画が立ち上がって間もない2014年4月、山田監督は吉永小百合さんとともに東京芸術劇場で行われた坂本氏のコンサートを訪れています。吉永さんはライフワークとしている原爆詩の朗読で坂本氏がピアノ伴奏を担当するなど、坂本氏とは親交があり、このコンサートで山田監督に坂本氏を紹介したことが今回の話のきっかけともなっており、吉永さんが二人をつなぐのに一役買ったかたちとなりました。

この度、9月14日(月)に、東京オペラシティ コンサートホールにて、レコーディングが行われました。
東京フィルハーモニー交響楽団演奏による、坂本龍一の本作へ向けた音楽は、本作をより感動へと導くあたたかなものとなりました。坂本氏が、「今の日本で山田洋次さんと吉永小百合さんに何かをお願いされて断る勇気のある人はいないでしょう(笑)。光栄です」と語ると、オーケストラはあたたかい笑いに包まれました。
会場には山田監督も訪れ、レコーディング前、オーケストラに向けて、「この映画の音楽はどうしても坂本龍一さんにお願いしたかった」「長崎、広島の原爆の犠牲者を含めて戦争の犠牲者への鎮魂の思いをこめて、そんな気持ちでどうぞみなさん演奏なさってください。」と、作品や音楽へ込めた熱い想いを語りました。また演奏後には奏者も「坂本さんの復帰第一弾のお仕事にご一緒できて、感無量でした。いつもより思いの籠った演奏ができたと思う」と語りました。