昨日(6月27日)、8月8日の劇場公開に先立ち、フランソワ・オゾン監督最新作『彼は秘密の女ともだち』が、開催中のフランス映画祭にて上映され、上映後に来日中の主演女優アナイス・ドゥムースティエによるトークショーが行われました。

日時:2015年6月27日(土)14:00(本編開映時刻)
場所:有楽町朝日ホール
登壇ゲスト:アナイス・ドゥムースティエ(27歳・本作主演女優)

昨年も今年も、年間5本ずつ出演作があるほど、今フランス映画界で一番の売れっ子であるアナイスが登壇すると、その27歳のキュート且つ美しい顔立ちに、報道陣や満席の観客から起きる歓声とシャッター音が鳴り響きました。アナイスも、あっという間にチケットがソールドアウトとなった満席の会場を見渡し、「こんなにたくさんの人がこの映画を見に来てくれて、本当にありがとうございます。フランソワ・オゾン監督はこんなにも愛されている監督で、その監督の作品を携えて皆さんの前に登壇出来ることを嬉しく思っています」と、彼女もその歓迎振りに感動し切り。また、初来日である日本の印象を「全く違う惑星に来たような感じ」と語りました。
フランソワ・オゾン監督ならではの予測不可能な本作のラストシーンについて、見終えたばかりの観客から熱い質問が飛び、アナイスの機転で急遽、ラストシーンについてどう思うか、挙手による緊急会場アンケートが実施されました。結果は見事に真っ二つに割れ、その光景に観客自身からも、どよめきが起きるほど。オゾン監督と彼女の見解も思い掛けず発表され、会場は笑いの渦に!

<トークイベント概要>
司会: 昨年も今年も、年間5本ずつ出演作があるほど、今フランスで一番の超売れっ子ですが?
アナイス: フランソワ・オゾン監督は、フランスでも最も才能がある監督のうちの一人ですし、その監督のオファーがいただけることは、女優にとってはすごい喜びですし、しかもとても女性を選ぶのが上手な監督ですので、モチベーションがあがりました。

観客: 女装しているロマン・デュリスの髭の濃さに、演技中、吹き出してしまったことはない?

アナイス: ちょっと変わったラブストーリーですし、完璧な女性になり切れていないロマン・デュリスの男っぽいところ(男性性)がオゾン監督の狙いです。だからこそ、より衝撃的に、より感動的になるわけです。オゾン監督はオーディションで多くの俳優に会っていますが、その中にはロマン・デュリスより女性的で、女装すればより繊細で女性的シルエットが活かせるような俳優もいました。でも敢えてロマン・デュリスのような、より男っぽい顔をした俳優を選んだんだと思います。私が演じる主人公のクレールが(ロマン・デュリスが演じる)ダヴィッドになぜあんなに恋をするのかというのは、ダヴィッドのルックスとかフィジカルの部分ではないんですね。ダヴィッドが持っている自由なスピリットに彼女は惹かれていくんだと思います。クレールは最初、内気で自分の居場所を見つけ出せない女性ですが、ダヴィッドに触れることによって少しずつ自分を解放していって、彼女の真実を、彼を通してようやく見つけ出すことができたわけです。

観客: 自分が主人公と同じ立場になったら?

アナイス: ええ、もちろん、私の周りに女装したいという人がいたら喜んで一緒に時を過ごすと思います。私はそのことに対してネガティブな意見を持っていません。この映画が素晴らしいのは、クレールがダヴィッドに対する接し方を観客に理解できるように作られていることです。この映画を観ながら(女装する人を)クスクスと笑ったりすることがあるかもしれませんが、それは彼を馬鹿にしているのではなく、彼に寄り添いながら一緒に楽しむことなのです。オゾン監督が目指したのは、とても遊び心に溢れた、とても軽やかで深刻さのない作品を、このテーマで作ることだったと思います。こういうテーマだと、ちょっと悲壮感があったり、ドラマチックになったりしがちなんですが、オゾン監督は軽やかなトーンで描いたんです。そこが私も気に入りました。

司会: ロマン・デュリスも役作りが大変だったと思いますが?

アナイス: ロマン・デュリスとの共演はとってもとっても素晴らしい体験でした。というのも彼は女装することに凄い快感を感じていて、昔からこういう役を演じたいと思っていたそうです。今回のこの女装の役をまるで子供のように楽しんでいたということが目に見えるんです。カツラを被ったり、高いヒールを履いたりすると、彼の瞳がキラキラと輝き出すんですね。それが私にも伝わってきて、クレールという役柄を演じる上でも凄く助けになりました。エピソードとして愉快だったのは、普通は女優の方が化粧時間が長いですが、彼は美しくなるために2時間位かけて女装していましたから、私の方がその“女優”を待っているということが度々ありました。(会場、笑)

司会: 彼の素の喜びが伝わってきましたね。(笑)

アナイス: ロマン・デュリスが凄く喜んでいるのが分かったから、オゾン監督も彼を選んだんだと思います。

司会: クレールが、ロマン・デュリスの役と関係を持つ時に、男性としての彼が好きなのか、女性としての彼が好きなのか、あるいは亡くなった親友とのある種レズビアン的な関係を求めているのか、その三つが交差しているように、そしてどれともつかないような描き方になっていたと思うんですね。

アナイス: 不思議な感覚でこの撮影を過ごしました。ロマン・デュリスの瞳を見ていると、確かに他の映画でよく見ているあの男っぽい視線というものを感じながら、片や、(ロマン・デュリスが女装したキャラクターである)ヴィルジニアにも対面しなくてはならない。非常に心が動揺するような撮影でした。

司会: 最近、たくさんの作品に出られて、いろいろな監督と仕事をされているわけですが、オゾン監督の特徴は?

アナイス: 他の監督と全く違います。とてもスピーディに仕事を進める監督です。それは1年に1本、彼が新作を撮っているという事実がありますね。撮影現場でも彼の映画に対するパッションがとても感じられて、子供のように映画を楽しんで作っているし、いつもエキサイティングしていて、まるでアイスクリームを早く食べたいという堰を切った子供のように感じます。(笑) 技術上でもオゾン監督は、他のフランスの監督とは違うところがあります。それは彼自身がカメラを回す、構図を決めているということ。
そうすることによって俳優との関係性がとても親密になります。俳優たちは演技をしているときに、カメラを覗いているのがオゾン監督だということを意識できますから、見られているという快感を感じることができるんです。それはとても気持ちの良い関係性です。

観客: ラストシーンについて教えてください。

アナイス: 会場のみなさん、●●●●●(←結末部分ですので非公開)だと思う人、手を上げてください。

【会場の半数が挙手】
アナイス: それとも、○○○○○だと思う人、手を上げてください。

【見事に会場の残り半数が挙手。その様子に会場中がどよめく】
アナイス: 不思議で、変わったラストシーンですよね。きちんと説明がされていないから、わざとオゾン監督が疑惑を残したオープンなラストになっていますよね。それはオゾン監督が、観客の皆さんそれぞれに想像してもらえたらいいなと思ったわけです。でも私も、監督も、あれは●●●●●だということで納得しています。(場内大爆笑)

※伏せ字の部分は、「劇場のスクリーンでお確かめください」