6月24日(水)、全国公開中の『攻殻機動隊 新劇場版』とただ今放送中の『シドニアの騎士 第九惑星戦役』とのSFコラボイベントが開催されました。
舞台には、『攻殻機動隊 新劇場版』の総監督・キャラクターデザインの黄瀬和哉、本作の脚本の冲方丁、そして『シドニアの騎士 第九惑星戦役』の監督の瀬下寛之、『シドニアの騎士』原作者の弐瓶勉が登壇いたしました。

■日にち:6月24日(水) ■場所:TOHOシネマズ日本橋 スクリーン7
■登壇者:
黄瀬和哉(『攻殻機動隊 新劇場版』総監督・キャラクターデザイン、50歳)
冲方丁(『攻殻機動隊 新劇場版』脚本、38歳)
瀬下寛之(『シドニアの騎士 第九惑星戦役』監督、47歳)
弐瓶勉(「シドニアの騎士」原作者、44歳)

映画『攻殻機動隊 新劇場版』と『シドニアの騎士 第九惑星戦役』の10話、11話、そしてTV放送直前である最終回の12話の上映後、興奮冷めやらぬ場内に黄瀬和哉、冲方丁、瀬下寛之、弐瓶勉が登壇いたしました。お互いのSFの世界観や魅力などをクリエイターならではの視点で語り明かす熱い一夜となりました。

Q まずは「攻殻機動隊 新劇場版」の感想を。

S(瀬下) すごい良かったです。本当に「攻殻」のコミックスを普通に買って、リアルタイムで見ている筋金入りのファンなので。
今回の作品が「攻殻」のオリジナルの世界観へ、本当にきれいにまとめて繋げてくれたなというのが最初の印象です。ファンとしては、あのシーンで繋がるんだ!という喜びがある作品だと思いました。

N(弐瓶) 原作が好きだったんで、今回の雰囲気がすごく原作に近くて楽しめました。花見のシーンが良かったです。

Q 続いて「シドニアの騎士」の感想を。

K(黄瀬) 光合成って良いなって。男の光合成は見たくないですけどね。

N 絶対にそのシーンは無いと思います。

U(冲方) こう形にするかって思いましたよね。弐瓶先生の作品って色彩を入れるだけで印象変わっちゃうじゃないですか。「シドニア」の色の入れ方はどうでしたか?僕はイメージとぴったりだったんですが。

N ぴったりですね。

U つむぎの色彩が、グロになる直前の食虫植物みたいな、あの色合いが。可愛さと気持ち悪さの合体がこんなに映像化されると思わなくて。
史上最大級のヒロイン誕生みたいな感じですね。可愛いんですよ、けなげだし。あと星白とつむぎと紅天蛾と、キャスト1人で良いんだなと、斬新だなと。画期的でしたね。

Q みなさんにとってのSFの定義とは?

K あまり考えてないですね。SFだからとか、現代物だからとか線引きをしてなくて。アニメーションってロボットが出てくるだけでSFになっちゃうことが多く、そういった作品にも仕事柄携わってたので、定義については何も考えて無いです。

U 個人的に科学技術が現代にものすごく追いついてしまったと。たぶんサイエンスという言葉自体も古くなってるんですよね。たぶんこれからはシンギュラリティファウンデーション、つまり限界を突破したときに現れる新たな文明というものを描いていくのが今後のSFになってくんじゃないのかなと。

N 僕が創作で目指しているのは、現実では絶対ありえないような状況や世界観を描いて、そこに人間を置く。というのをすごいやりたいなと思っていて。遠未来なんですよ、近未来はずっと避けてきたんです。「攻殻」は数十年後の近未来ですが、「シドニア」は千年後です。

K (数十年後、現実が「攻殻」の世界には)絶対なっていないなと思いますもんね。

N 特に遠未来モノが好きだったので、それをやりたいなと。絶対に日常ではないような文化とか民族とかを描いていきたいなと。

S 原点は「スターウォーズ」で、遠い昔の話、日本的に言うとむかしむかしの話。僕は遠未来か遠過去、とんでもない日常を描きたいだけなんですよ。
とんでもない未来かとんでもない過去、今の常識でとらえないで下さいと言った方が描きやすくなる。今の科学的な理屈を付けて、物語の面白さを阻害されるのが嫌なんですよ。現実から切り離したい。そういう作る楽しみを楽しませてもらっています。

Q 今後の日本のSF表現はどうなっていくべきだとお考えですか?

S  ハードSFの世界だと化学的考証とか物理的考証の設定が必要になる分、必要になればなるほど純粋に楽しめなくなる、縛りにもなっちゃうんですよ。
だから1回、SFという可能性で皆が楽しむために、もう少し柔軟にいろんな選択肢があって良いんじゃないかなと。そこらへんのバランスをとっていければ日本のSFの楽しみが増えるんじゃないかなと思います。

K ぼくは地に足が付いたものを作ってきていたので、個人的には藤子(・F・不二雄)さんのような、少し不思議なもののほうが好きですね。日常なのに日常じゃないんだ、みたいな。

U 必要なのは素直さですよね。こうなったらこうなるっていうのがSFの基本なんです。たとえば寿命があるのが嫌だと、じゃあ人間全員の寿命が無くなったらどんな社会になるのか、みたいな一種の大喜利のようなものがSFの根本で、それが娯楽化される一番のポイントなんですが、最近その大喜利感が窮屈になっている気はします。

Q 最後に一言ずつ SFの未来に向けて

U 最近は作品のボーダーが外れてきて、交流をはじめている。だから今、新たなモノが生まれていて、生まれてくるものに制作者として追随していかないといけないんですけど、このムーブメント、素晴らしいムーブメントが起こっているので、SFにはものすごい人間性に訴えるものがあると、少しでも皆さんに届くと良いなと思います。

K 今後どういった作品に携わるかも分かりませんが、まずは家に帰って残りの「シドニアの騎士」を読みたいと思います。

N SFについては、光合成みたいなことをこれからもやっていきたいです。脱がすためにどういう設定にすれば良いのかを考えていきたいと思います。

S 現実の方がSFの世界に近づいて来ちゃったので、現実から離れて楽しむことがやりづらくなっている時代だと思いますので、もう一回現実から切り離して楽しむためには、どうするべきなのかを考えて行ければなと思います。