5 月 30 日(土)の公開から連日、満席・立ち見の劇場が相次ぐなどその評判は広がり続け、公開から 14 日間で 2 億円を突破し、16 日間で 20 万人動員(有料入場者数)興行収入 2 億 4 千万円に達するなど、公開規模 100 館以下の映画としては超ハイペースな広がりをみせている『あん』。女性客を中心に大ヒットしている『あん』だが、生きていく意味を見出していく千太郎(永瀬正敏)の気持ちになって男性にも本作を観てほしいと願う河瀬直美監督自らが 3 夜連続『あん』大ヒット御礼トークイベントを企画、その第 2 夜がシネスイッチ銀座にて開催された。

3 夜連続『あん』大ヒット御礼トークイベント
■日程:6 月 15 日(月) 21:10〜
■場所:シネスイッチ銀座<シネスイッチ 1>:中央区銀座4-4-5 旗ビル 地下 2 階
■登壇者:浅野忠信(41)、河瀬直美監督(46)、サプライズゲスト:永瀬正敏(48) *敬称略

第 2 夜のゲストはいまや国際派俳優として世界で活躍する浅野忠信。「(千太郎役の)永瀬さんとは親しくさせていただいていて、カンヌ映画祭でも色々話をして僕の中でも盛り上がっている作品。応援させていただければ。」と挨拶をし、続く河瀬監督も「憧れの浅野さんとお話ができるのを嬉しく思っている。宜しくお願いいたします。」と、ともに対談を楽しみにしていた様子。浅野と永瀬の出会いは 2001 年の『ELECTRIC DRAGON 80000V』での共演。しかし浅野は 10 代の頃、『ミステリー・トレイン』に出演した永瀬を見て、「海外の監督の作品に出る俳優が日本にいるんだ。」と強烈な憧れを抱いていたそう。河瀬監督も「そんな二人に憧れていました。過去形ではありません、今も憧れています。」と対談への意気込みをみせた。浅野は河瀬監督作品に出演したことはないものの、ともに今年のカンヌ国際映画祭に参加している者同士。実は 2 人は 20 代の頃にカンヌ国際映画祭ですれ違っており、河瀬監督はカンヌという大舞台に同じ日本人がいることが嬉しく、浅野に親近感を覚えていたそう。その出来事は浅野も覚えており、「女性の監督と仕事をしたことがないので。是非、(一緒に仕事)させてください。」と河瀬監督にアピールした。浅野が出演している黒沢清監督の『岸部の旅』がカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門の監督賞を受賞した話題になると、会場から祝福の拍手が贈られた。河瀬監督も黒沢監督の受賞を「嬉しかった。」とコメントし、「(他の日本人監督を)同志と強く思っているわけではないけれども、一緒にパワーを世界に発信してもいいんじゃないのかな。中国や台湾は自分たちの国はこうだ!とアピールしている。」と日本人にも自分たちの文化や自分のアイデンティティにもっと誇りを持ってほしいことを訴えた。これには浅野も「海外の監督と仕事をすると、「君はどうしたい?」と必ず聞かれる。」と明かし、皆同じことがいいとされる日本の教育にも触れながら、「答えが出ないことは悲しいこと。」と河瀬監督の意見に共感した。さらには「映画は俳優の力が大きく影響している。日本人の俳優は本来の力を発揮できていないのでは?」という河瀬監督の考えから 2 人のトークはヒートアップ!これまで多くの監督と仕事をしてきた浅野は、「心の中で、あなたの演出はつまんないですよ!と思う時がある」と大胆発言で観客を驚かせた。河瀬監督も「実は本作の撮影中に永瀬君に泣かされた」と暴露。実はあるシーンで永瀬に「好きにやっていいよ」と言ったところ永瀬がとてもいい表情をし、思わず泣いてしまったそう。これには映画を観終わったばかりの観客らがそのシーンを思い出したのか涙ぐむ姿も。すると、「そんな千太郎がこの会場に来ています!」という河瀬監督の呼びかけで永瀬がサプライズ登場!観客だけでなく、浅野も永瀬の登壇を知らなかったようで、「全く聞かされていなかった、嬉しい!」と満面の笑みで出迎えた。永瀬は「皆さん、わざわざ来て下さりありがとうございます。」と深々とお辞儀をすると浅野の坊主頭をさすり、会場の笑いに包まれながら浅野との再会を喜んでいた。永瀬は台湾で自身の写真展の初日を迎えていたが、浅野がイベントに登壇することを聞いて、急遽台湾から帰国。お土産のパイナップルケーキを浅野にプレゼントした。

トークも終盤に差し掛かり、MC から浅野と永瀬の共演作を撮る可能性があるのか聞かれた河瀬監督は、「浅野君が良ければ」とコメント。すると浅野は「その為に来たようなもんですから!」と今回のイベントに参加した理由を明かし、会場からは割れんばかりの拍手が沸き起こった。最後に浅野は「(本作を見て)なんでこの人たちはこんなにリアルに生きているんだろう。どんなことが現場で行われていたんだろうと疑問だったので、とてもいい時間だった。」と対談を振り返った。サプライズ登場した永瀬は浅野に対し「本当にありがとう。僕は『岸部の旅』観に行きます!」と感謝の辞を述べ、無事にイベントは終了した。
『あん』は現在全国 80 スクリーンで公開、最終的に 5 億円興行を目指している。なお、世界ではすでに 28 地域、30 か国以上での販売が完了している。