5 月 30 日(土)の公開から連日、満席・立ち見の劇場が相次ぐなどその評判は広がり続け、全国で 77 館という小規模な公開からスタートしたにもかかわらず、6月9日(火)までに1億7454万3900円(観客動員数14万9988人)の大ヒットを記録している『あん』。女性客を中心に大ヒットしている『あん』だが、生きていく意味を見出していく千太郎(永瀬正敏)の気持ちになって、男性にも本作を観てほしいと願う河瀬直美監督自らが 3 夜連続『あん』大ヒット御礼トークイベントを企画。その第 1夜がシネスイッチ銀座にて開催された。

3 夜連続『あん』大ヒット御礼トークイベント
■日程:6 月 14 日(日) 21:10〜
■場所:シネスイッチ銀座<シネスイッチ 1>:中央区銀座4-4-5 旗ビル 地下 2 階
■登壇者:斎藤工(33)、河瀬直美監督(46) *敬称略

第 1 夜のゲストは俳優としてのみならず映画監督としても活躍する斎藤工。斎藤が河瀬監督をエスコートしながら登場すると観客からは歓声が!斎藤は「映画は余韻だと思うんですけど、その余韻を汚さぬようにしたい。監督とお話ができるということで、素敵な夜に出来たらと思います。」と笑顔で挨拶をした。実は 2 人が顔を合わせるのは本日が初めて。監督の前作『2 つ目の窓』のトークショーに、主演・村上虹朗と同じ学校の出身がきっかけで斎藤が参加した縁があり、対談が実現。そんな斎藤に対し河瀬監督は、「『あん』は希林さん(が演じた徳江さん)が力強いメッセージを贈られた。そのメッセージを工君が感じ取って下さっていれば。今日はじっくりお話ができればと思います。」と、対談に期待を寄せた。斎藤はイベント前、楽屋にて第 3 夜のゲストでもある写真家のレスリー・キーに「(河瀬監督は)工に壁ドンしてもらわないと。」と半ば強制的に河瀬監督に壁ドンをしたことを明かした。「初めましてで壁ドンって。ぼくの一発芸になっている。」と会場を沸かしつつも、「あまりにも僕が照れてしまい、河瀬さんはピクリとも心が動いていない。河瀬さんに“壁ドン返し”された。」と苦笑いした。

『あん』を観た感想について斎藤は「河瀬さんの作品は学生の頃から拝見しているんですけど、毎回更新される。『2 つ目の窓』を観て、一番好きと思ったけど、『あん』を観て「ちょっと待てよ!また上書きされた!」と思いました。」と大絶賛!「TV(ドラマ)は画(え)やセリフで説明を切り取っていくが、河瀬さんの作品は説明じゃない。役者さんたちも演技ではない、存在している。」と河瀬監督作品の印象を語り、「どう演出しているのか」と疑問をぶつけた。すると河瀬監督から「監督もされているが俳優さんにどう演出しているの」と質問返しが。斎藤は自身の演出方法について、「キャスティングをした段階で半分演出が終わっている。

映画のプロセスの知識があるわけではないので、変に背伸びするのはやめよう、と。(各パートのスタッフに)力を発揮してくださいという感じ。」と語った。一方の河瀬監督は「本作で(希林さん演じる)徳江さんが千太郎とワカナにぜんざいを振る舞うシーンは 360 度どこをみてもカメラ、スタッフが見えないようにした。私の現場はスタッフが仕事をさせてもらえないの。」と斎藤とは正反対の演出方法であったことを明かした。これには斎藤も「演技学校に行っている役者さんたちにとっては真逆のことですよね。」と驚きの表情。さらに河瀬監督はワカナ役の内田伽羅に、シングルマザーの元で暮らすワカナの孤独を感じてもらうために、2 日間だけ母親役の水野美紀と暮らしてもらい、その後は一人で暮らしてもらったと、徹底した演出へのこだわりを語った。

また先日河瀬監督は息子の授業参観日のときに、教師をしているママ友から「捨てられるあんこを千太郎さんは拾ったんだね。私は(知らない人からもらったものは)捨てるって教えていた。来週、もう一度息子と観に行って、これまでやり過ごしてきたことと向き合おうと思う。」と涙ながら声を掛けられたことを明かし、「私たちは見ないふりをしていることが多い。大人になればなるほど。ある種、映画が彼女の人生を変えたのかな。」と本作のメッセージが観客へと深く届いたことに感銘を受けた様子だった。

MC から河瀬監督に「斎藤さんを起用するとしたらどんな役?」と質問が出ると、「工君の魅力って何ですか?」とまさかの観客へと問いかけ!「工君が表現している何かを知れば知るほどファンになっていく感じですよね?」と河瀬監督が呼びかけると会場のファン全員が納得のうなずき!斎藤の役柄について明言しなかったものの、斎藤の第一印象は「かわいいなと思いました。壁ドンされた時もかわいいな、飼っておきたいなと思った。」と発言し、斎藤を困らせていた。最後に河瀬監督は「あっという間だった。
同じ映像業界で仕事しているので、どこかでご一緒できたら。その時までに役柄を決めておかないと!」と冗談交じりに斎藤との対談を振り、斎藤が主演している 6 月 20 日公開の映画、『虎影』のアピールでイベントを締めくくった。

『あん』は現在全国 80 スクリーンで公開、最終的に 5 億円興行を目指している。なお、世界ではすでに 28 地域、30 か国以上での販売が完了している。