6月6日(土)に日本公開が決まりました『奇跡のひと マリーとマルグリット』は19世紀末フランスに実在した三重苦の少女マリー・ウルタンと、彼女を教育したシスター、マルグリットという実在したふたりの奇跡の実話です。不治の病を抱え、近づく死の気配を感じながら日々を過ごす修道女マルグリットが、三重苦のマリーをひとめ見た時から彼女が放つ強い魂の輝きに導かれ、獰猛で野性児のようなマリーに限られた時間のなかで彼女に「世界」を与えようと奮闘し、二人は魂の絆で結ばれていきます。その感動の実話に試写会場も涙が溢れています!

バリアフリー上映を知っていますか? この映画で洋画のバリアフリー上映の輪を広げよう!
この度は映画本作の公開に向けて、バリアフリー上映の活動の輪を広げるために、洋画としては初めての、クラウドファンディングでバリアフリー版の制作費を一般公募するという試みを行うこととなりました。主演のマリーを演じた20歳の新人女優アリア—ナ・リヴォアール自身が聴覚にハンディキャップをもつことから、今回の来日会見時にクラウドファンディングの発表やフランスでのバリアフリー上映の反響などについて語る会見を行いました

『奇跡のひと マリーとマルグリット』アリア—ナ・リヴォアール来日会見
日程:4月21日(火)    会場:日本外国特派員協会
登壇者:アリア—ナ・リヴォアール 20歳(『奇跡のひと マリーとマルグリット』主演マリー役)
松田高加子(バリアフリー版制作の会社  パラブラ株式会社)

本作の製作国であるフランスでは、長編映画として初めて全国の映画館でフランス語字幕付きの上映を行い、大成功を収めた『奇跡のひと マリーとマルグリット』。日本でもその成功例を受けて、日本語版吹き替えと音声ガイダンスをつけたバリアフリー上映版を制作することとなりました。この度は、そのための制作費を興行用の洋画として初めてクラウドファンディングで募集することとなりました。
松田:映画のバリアフリーとしては、目の不自由な人には音声による解説ナレーションを劇場公開時には、希望する方にイヤホンで聞くような形での提供を行います。障がいのある人たちにも映画を楽しんでもらおうという意味で2000年代初頭から実施されましたが、外国映画の音声ガイダンス付き映画はいまだ立ち遅れています。邦画の音声ガイダンス付き上映を行う場合には、ある程度の告知ができれば、一定数の視覚障がい者の方々の来場が見込めます。映画は娯楽としての楽しみだけでなく、外国の文化を知ることができるなど、様々な楽しみ方がありますので、バリアフリー版によって皆様に楽しんでいただけるようになると良いなと思っています。

アリアーナ:皆さんこんにちは、私はアリアーナ・リヴォアールです。『奇跡のひと マリーとマルグリット』で、主人公のマリーを演じています。私はろうですので、私のアイデンティティである手話を言語として今日は皆様にお話をさせていただきます。この映画の重要なメッセージは、この映画は私のようにろうであるとか、バリア(障がい)をもった人たちにも観てほしいということです。フランスでは、本作をフランス語の字幕付きで観ていただくことができたんです。そのためにジャン・ピエール・アメリス監督は、様々なところに掛け合って、大変な努力をしました。皆さんに、そんな風にバリアフリーで観ていただく、違いをもっている人も含めて皆さんに楽しんでもらうのが映画という娯楽だと、私は思います。
フランスで字幕上映を実現するために、監督は非常に尽力しました。だから彼はフランスの映画市場でもパイオニア的な存在になりました。この映画の撮影現場でも手話通訳でのコミュニケーションを完璧にする、手話通訳を通すことで、ろうの人たちが撮影に参加することができると示しました。また、ろうあの人には触手話を通して、障がいをもつ人も平等に映画を観られることを実現しました。人間はそれぞれ困難をもっている、違いももっている。でも映画というものの前では、皆が平等に楽しめることが大切だと思います。たくさんの人たちが均等に機会をもらえるという、アメリス監督の尽力のもとにそのようにアクセスできたことは素晴らしいことです。この方法が、フランスのパイロットモデルとして世界中に広がっていくことを私は祈っています。

Q:この映画に出演しようと思ったきっかけを教えてください。
アリアーナ:人生の中では、自分たちの進む道にはいろいろな障害がありますね、そういうことは誰にでもあると思うのですが、私の場合は今回アメリス監督が、私にこの映画に作品に参加する素晴らしい機会を与えてくれました。私自身も、ろう者のための活動家のような気持ちをもっています。私たちのように障がいをもっている人々は、檻に閉じ込められたような人生は送りたくないと思っているのです。学生である私が映画に出るには勇気が必要でしたが、マリー・ウルタンという実在した人が障がいを乗り越えたということを伝える映画なので、私が出演する意味があると思いました。それまで、女優になりたいと思ったことはなかったですが、映画『奇跡の人』を観た時に、障がいをもちながら闘っている人々に共鳴をもっていましたから、監督に「映画に出ないか」と言われた時は、夢をかなえたという感じではなかったですが、チャンスがやって来て、私はそれをつかんだと思いました。

Q:フランスでもバリアフリー上映は珍しいということですね。あなた自身は、これまで映画館で映画を観る機会は多かったですか?
アリアーナ:フランスではろう者に対するリスペクトが足りない気がしています。ろう者から「字幕をつけて下さい」という欲求はあるけれど、実際にはあまり字幕を付けてはもらえません。だから、ろう者としてはあまり映画館には行くことができないのです。そういうわけで私たちは、映画を観るにはDVDが出るのを待たなければならないのです。でもそれで字幕があれば良いですが、今度はあったとしても字幕のクオリティ自体があまり良くなんです。もし字幕が付いていたり、しかもちゃんとした字幕が付いていれば、私たちはもっと頻繁に映画館に行くと思うし、DVDもたくさん観ると思うんです。映画は皆にとっても現実ですが、「皆」と言う中にはろう者や盲の人も入っていますよね。でも障がいのある人が観るなら、健常者と違う場所や違う方法でというのは、少し違うのではないか、と思います。私自身は、他人のもっている困難さをリスペクトするようになれば、社会はもっとうまくいくし、そこにお金がかけられればもっと良い世の中になるのではないかと考えています。

Q:映画の撮影中に感じたことはどのようなことでしたか?
アリアーナ:人間は誰でも、困難の前では平等というか、困難は誰にもありますよね。仕事がうまくいかない、コミュニケーションがうまくいかない、勉強ができないなど。マリー・ウルタンの場合はコミュニケーションがとれないという困難で、彼女をその悩みから救い出してくれる人を待つしかなかったのです。彼女には幸いマルグリットという修道女が現れて、救ってくれました。マリーの役は、実生活で私自身がコミュニケーションの困難を経験していたからできたと思います、美容院やパン屋さんに行くにしても日常生活の中で、なかなか私の要求していることが分かってもらえないことがあります。私たちろう者にとっては、皆さんが理解してくれないことがさらなる困難になってしまうのです。そんなことを理解していただけたらと思います。

バリアフリー映画の現状と課題(2014年度の報告書より)
聴覚障がい者に配慮した日本語字幕付き作品は66本(11%)、視覚障がい者に配慮した音声ガイド付き作品はわずか6本(1%)だった。聴覚障がい者からは、字幕が付く洋画は観るが、邦画は「あきらめていた」という声が聞かれており、また洋画に字幕が付いていても、多数の登場人物が話すシーンや画面に映らない人物のせりふなどは、分からないとの指摘もあった。視覚障がい者からは、せりふが全くないクライマックスなどは正確に理解できず映画の内容についていけないと、日本語字幕や音声ガイドを求める声が挙げられ、「会社の同僚や家族と映画の話題を共有したい」「映画館で皆と一緒に笑ったり、泣いたり楽しみたい」という声も聞かれていたおり、聴覚障がい者からは映画館での割引よりも字幕を付けてほしいという要望があった。
せりふや物音・音楽表現を文字にする日本語字幕に対して、場面転換や動作・表情などの映像表現を言葉にするのが音声ガイドだ。視覚に障害のある人と映画館で映画を楽しもうと、2001年にこの活動が始まったが、字幕や音声ガイドの製作費・オペレーション経費などの負担が増えることが課題となっている。

◎4月21日(火)バリアフリー版制作のクラウドファンディングを開始しました!
◆本プロジェクトのタイトル
映画『奇跡のひと マリーとマルグリット』バリアフリー版を作ってみんなで映画を楽しもう!!