『ジミー、野を駆ける伝説』は、1932年灰色のアイルランドを舞台に、声をあげた実在の労働者
【ジミー・グラルトン】を主人公にした物語です。長年、労働者や農民、貧しくもたくましく生きる庶民を温かな目線で描くケン・ローチ監督の傑作です。
折しも12月14日は衆議院選挙。閉そく感漂う今の日本社会、いろいろと不満を抱えながらも、「何も変わらない」と選挙に行かない人々も多い中、今の日本の若者達にこそ、社会を変えようと孤軍奮闘したジミーの生き方をぜひ見てほしい、と学生とジミーを演じた主演俳優との討論会を企画致しました。
日本大学藝術学部では、4年前から現役学生が映画祭を企画・運営しています。
今年は<働く>をテーマに、「映画祭 ワーカーズ2014」が、12月12日から開催されます。
上映作品は、ケン・ローチ監督『この自由な世界で』、山田洋次監督『故郷』、石井裕也監督『川の底からこんにちは』、富田克也監督『サウダージ』など学生達がそれぞれの視点から選んだ計14本。
フリーター、パート、アルバイト、契約社員、派遣、日雇労働者、移住労働者、ニートや貧困に苦しむ自営業、農業者など。近年の日本の労働環境の劣悪さは、このプレカリアート(非正規雇用者、失業者)をめぐる問題が多くなってきています。このような中、【なぜ働くのか?】 を学生逹と考える映画祭です。
「社会に出て働くことの意味、そして今後、私たちの生活はどう変わるのか?」
昨夜12月11日、日本大学藝術学部 江古田校舎で行われた、主演俳優バリー・ウォードと、「映画祭 ワーカーズ2014」主催学生たち80人とのトーク&ディスカッションをご報告いたします。ぜひご掲載をよろしくお願いいたします。

【映画『ジミー、野を駆ける伝説』  ジミー・グラルトンとは?】
1960年代末に劇映画デビューして以来、労働者や移民などにまつわる社会問題をはらんだ骨太な映画を撮り続け、カンヌ、ベルリン、ベネチアの三大国際映画祭で受賞歴を誇る世界的な名匠となったケン・ローチ監督。ジミーの人間性に感銘を受けたローチは、史実にインスパイアされた“名もなき英雄”の物語の映画化に挑戦。
アイルランド・リートリム州出身のジミー・グラルトンは、混迷の時代にリベラルな思想を唱え、庶民の絶大な支持を得た活動家だったが、名の通った歴史上の偉人ではなく、むしろそのプロフィールの細かな部分はほとんど知られていない。弱者救済の政治闘争に身を投じるかたわら、アートや娯楽をこよなく愛した人物。その活動のため、裁判も開かれずに国外追放の身となった唯一のアイルランド人。

《登壇者》
 ゲスト:『ジミー、野を駆ける伝説』主演俳優バリー・ウォード(35歳)
 伊藤なつみさん(「映画祭 ワーカーズ2014」映画祭主催学生リーダー、3年生、22歳)
 聞き手:日本大学藝術学部 映画学科 古賀太教授(53歳】

《トーク内容》
Q 伊藤:今大学3年生なので、まさに就活してます。そこでいま考えることはなにか?と。働くこと、フリーターでいること、など身近な問題ですから、ワーカーズ映画祭を企画しました。まず、バリー・ウォードさんを今回ゲストに迎えることができて、色々話をしなくては、、と思うのですが、本当にとてもかっこよくてすごく緊張しています(笑)。
バリーさん、『ジミー、野を駆ける伝説』クランクイン前に、ロケ地で野良仕事をされたそうですね?

Aバリー:はい、自分はダブリン出身のやわなシティボーイなので、80年前の地方の労働者の気持ちになろうと、家々を回って、野良仕事を申しでました。日に焼けて、手がごつごつしてきた。筋肉も違ってきた。

Q学生:ダンス、デモなど感情の高ぶるシーンが多かった、監督の撮影プランは?

Aバリー:リハーサルでよく役者同士でディスカッションや、ディベートをしました。また、撮影中は、ロングレンズ多く、クルーが見えないので、本当の自然のなかでリアルに演じられました。

Qバリー:ほかのローチ作品を見た方、『ジミー、野を駆ける伝説』との共通点を聞かせてください。

A学生:『ケス』見ました。まず、『ジミー〜』を見て、『ケス』と同じ、緑、草原、の映像の美しさだと冒頭から感動しました!

Q学生:「麦の穂をゆらす風」の時代の問題点を、『ジミー、野を駆ける伝説』でも感じました。監督の意図は?

Aバリー:冒頭を見るとわかりますが、『ジミー、野を駆ける伝説』は「麦の〜」続編のムードを醸し出していると思います。

Q学生:ダンスシーンなど、触れないで愛情表現に感動しました

Aバリー:かつて恋人だったこの2人はまだ愛し合っているけど、もう一線をこえることができない。でもお互いを敬意をもちながら、そのフラストレーションを抱えながらダンスをする。そういった表現にダンスは一番最適ともいえます。私はダンスが苦手なので、このシーンに入るまでにかなり練習しました。皆さんに素敵なシーンだと言ってもらえるダンスシーンなのですが、私は必死で、相手役の女優さんをけらないように、などそちらに一生懸命でした。

Q伊藤:ジミーは活動家です。バリーさんは来日キャンペーンで、雨宮処凛さんと対談されました、日本の活動家の方はいかがでしたか?

Aバリー:雨宮さんから、日本の若者の選挙投票率が低いと聞きました。『ジミー、野を駆ける伝説』を見て、ジミーに触発されて、道を示せたらいいと思う。大きなことをしなくてもいい。まず日曜日に投票にいってください。その日々の小さな出来事が積み重なっていくのだと思う。