本作は、行定勲監督がオール上海ロケで撮影に挑み、美しい双子の姉に恋をした日本人青年(三浦春馬)が迷い込んだ不可思議な愛の世界を描く、ロマンティックなミステリー。原作は、本多孝好著『真夜中の五分前 five minutes to tomorrow side-A/side-B』(新潮文庫刊)ベストセラー恋愛小説から、舞台をアジアへ移し、原作の良さを活かしながらも、妖艶さを加え、映像化に成功。主演は『永遠の0』やドラマ「僕のいた時間」で人気・実力を兼ね備えたスターとしてその輝きを増し、注目の話題作『進撃の巨人』の主演としての期待も高まる三浦春馬。共演に中国の国民的ドラマ「宮廷女官 若曦(ジャクギ)」のヒロインとして若手トップスターに登り詰めるリウ・シーシー(劉詩詩)、台湾で年間視聴率1位を獲得した「最後はキミを好きになる!」の主演や映画『GF*BF』で日本での人気も高まるチャン・シャオチュアン(張孝全)。アジアで高い人気を誇る行定監督のもと、日本・中国・台湾の注目スターが集結しました。

本日は神楽坂にできた新しい商業施設「la kagu」にて、原作者の本多孝好さんと行定勲監督が、小説と映画・映像表現についてトークショーを行いました。お2人のトークは以下の通りとなります。

※「la kagu」は10月10日にオープンし、ファッション、生活雑貨、カフェ、家具、ブックスペース、レクチャースペースをそなえた、スペシャリティストア。各カテゴリーの”キュレーター”(=目利き)たちが、自分の経験と感覚を頼りに”本当にいいもの”を厳選し、おすすめしていく商業施設。

【イベント概要】
◆日程 :12月4日(水)
◆登壇者: 本多孝好、行定勲監督

Q)本多さん、映画を観たご感想は?
本多:ストーリーがまったく原作とは違う。別のストーリーにも関わらず、見終わった後は、小説を書き終わった後の気持ちと、とてもよく似ていた、と思い、それに驚きました。この原作に、非常に時間をかけて、監督が映像にしてくださったからだろうな、と思います。

行定:ほっとしました。怖い作家さんもいらっしゃいますから(笑)。いい作家さんは、だいたい文句を言わないんですよ(笑) って、言っておくと今後も付き合いやすいかな(笑)
僕はこの作品にこだわっちゃったんですよね。

本多:2004年に本を出版しまして、その時に、ある映画会社さんから「映画化したい」と。その時の想定されてた監督が行定さんの名前が挙がってったんです。そしたら、脚本がうまくいかない、と。しばらくして、別の映画、また別の会社の方から、別の監督で映画化したい、というお話も頂きました。しかし、やっぱりうまくいかなくて、映像化は難しいのかな〜と思ってたんです。 そうしたら、行定さん個人から「あれを、私のやらせてくれないか」とご連絡いただいて。それが6年位前ですか。原作者としては、これ、本当に映像化できるのか、と。撮り終わった、と聞いても、まだ信用できないというところがありました(笑)約10年間こだわっていただいて、感謝しております。

行定:プロットだけをなぞるとやりやすい、と会社は考えたんだと思うんです。最近の日本映画では明快なものを求める傾向にあります。例えば、くっついた、離れた、障害を乗り越えてくっついた。明快なもの。
この映画はあいまいなんです。この話しは、誰が犯人かではない。
最近の日本映画界は、文学よりも漫画を映画化するようになっているので、日本でやるのは無理だ、と思いました。今から3年間の釜山国際映画祭の企画マーケティングに出したんです。これを、アジアで映画化しようと。そう思えたら、この小説の何が面白くて、何が言いたいのか、とても哲学的なんです。でも、これは、化学変化が起きるんじゃないか、と思ったんです。本多さんの原作は、何か異国情緒があるんです。
短編とか読んでも。それで海外で映画化するときに、アイデンティティとして日本の何かを残したい、と思って主人公は日本人にしようと、考えました。
僕は小説的なアプローチを映画でしたい。自分の結論を持ってそれを映像に残したい。
これは、他者と自分の関係がちゃんと描かれている小説なんです。認めてた他者が、自分を疑う。そして、自分は何者なのか、というのを描きたいと思いました。

本多:これを日本で撮ってたらどうだろう?と。この映画は、異国で浮遊している感じが、この作品にとって得だと思いました。僕はこの原作を、Side-Aの終わりから書いて、ここから始まる、という感じで書き始めました。
僕は映像よりは、静止画のイメージが先に出て来て、そのイメージから、何を、どんな主人公で、どこに向かていくかを考えてストーリーにつなげていきます。
愛する、または愛される曖昧さ。常に疑う事しかできない愛情を描きたいと思いました。僕自身、単純な恋愛(作品)には興味がないんです(笑) わからないものが成立しているのに、成立していない不確かさもある、という怪しさを描きたかった。それは、まったく相似形の人がいたら、なぜ、そっちに向かないのか、を描きたかったんです。

来場客からの質疑応答
Q)生活感がある主人公ですが、三浦春馬さんを主演にしたのは?
A)何物でもない人にしたかったんです。脚本も短くしたい。本多さんのここがすごい、というものだけを脚本では残しました。僕は、芝居がかった何かではなく、何者ではない感じ、というのが三浦さんには感じました。彼は面白くないくらい真面目(笑) 三浦さんは、一生懸命に考えてるんです。現場でも。
それで、「何考えてるの?」って聞くと、「面白くないです」って。「いいじゃない!」(笑)って僕は言いました。
そういうのがいいんです。三浦さんが演じたことが、この映画のリズムを作ったともいえます。
最初90分位にしようと思ったんですけど、2時間を超えてるのは、春馬君のせいです(笑)

Q)この10年で、やろうと思ってできなかったとのことですが、10年前と今、撮影の技術的なことでの違いはありますか?
A)10年前では、撮れなかったと思います。今回は、デジタルで撮影したので、この期間で撮れました。
10年前ではフィルムです。フィルムではこのスピードでは撮れないです。フィルムの場合、位ところだと大きなライトがないと映らないので、大きな照明を立てないといけない。
それと、今回双子を1人でやってますが、デジタルだったので、そのマッチングはよかったと思います。
個人的にはフィルムで撮りたかったです。そうすれば、もっと違うニオイがあったと思うんです。
でも、これは、昨年撮らないと成立しなかったと思います。