朝から晴れ渡った18日。15時から“シネフォンダシヨン”部門に中編『オー・ルーシー!』が選出された平柳敦子監督を日本の報道陣が囲んだ。


◆映画を学ぶ学生の卒業制作を対象とする“シネフォンダシヨン”部門に選出された『オー・ルーシー!』

 “シネフォンダシヨン”は、新しい才能を発掘するために1998年に創設された部門で、対象は学生映画。今年は16本が選出され、21日&22日の両日に分けて上映される。第1席〜第3席には賞金も授与され、第1席に輝いた監督の長編第1作目はカンヌ映画祭での上映が約束されている。

 平柳敦子監督の『オー、ルーシー!』は、監督が出演を熱望し、直談判した桃井かおりが主演する22分の中編。
 東京で暮らす55歳の独身お局OLの節子は、ひょんなことから姪が行くはずだった英会話学校に通うことに。そこで風変わりな外国人教師から金髪のかつらを与えられ、“ルーシー”という人格になりきって英会話レッスンに臨むよう言い渡された彼女は戸惑うが、やがて眠っていた欲望を目覚めさていく。だが突然、外国人教師が姿を消し、独り残された彼女は自分自身と向き合わざるを得なくなり……。
 長野県に生まれ、千葉県で育った平柳監督は、サンフランシスコ州立大学に留学し、俳優を志すも、最終目的の監督になるために家族でシンガポール移住。現在、ニューヨーク大学ティッシュ・スクール シンガポール校で映画制作を学ぶ38歳で、バイタリティあふれる2児の母親でもある。彼女は2年生の時に制作した短編『もう一回』で、ショートショート・フィルムフェスティバル&アジア2012にてグランプリ&ジャパン部門オーディエンスアワードを受賞した実力の持ち主で、卒業制作映画『オー・ルーシー!』は、校内脚本コンテストで優勝し、映画制作補助金を受けて撮影した。本作は21日14時半からのプログラム2でお披露目される。


◆16時半から正式上映された『ザ・ワンダーズ』のマチネのレッドカーペットを俯瞰撮影!

 リラックスしたムードで行われた平柳敦子監督の囲み取材。その後、パレ・デ・フェスティバルの5階にある“シネフォンダシヨン”テラスに場所を変え、平柳監督の写真撮影を行った。その直後、折しもコンペ出品作『ザ・ワンダーズ』が正式上映される“リュミエール”劇場への入場が開始され、レッドカーペットの模様を俯瞰撮影する機会を得た。

 ところで、コンペ出品作は作品内容や観客の期待度、集客率、映画の言語と上映時間、監督の実績、出演者の顔ぶれ等々によって上映回数にも差がつけられている。
 基本的に1日2作品の上映(上映会場は大劇場リュミエール)が大部分だが、まず、3回上映される作品A群と2回上映のB群に区分され、ソワレと呼ばれる夜の正式上映は、A群がゴールデンタイムの18時半〜19時半の開始。B群は21時半〜22時半のスタートとなり、観客はともに正装を義務付けられる。だが、A群とB群のどちらにも当てはまらない作品があり、上映は昼間の中途半端な時間帯に設定されたマチネ上映の1回のみ。もちろんドレスコード無しなので観客の服装は全く問われず、ヘタをするとプレス向け試写も兼ねて行われる時すらある。そんな場合でも、監督&キャストは着飾ってレッドカーペットを歩くため、ちょっとチグハグな感じがするのは否めない。
 今年、正式上映がマチネの1回きりのC群は、上映済みの『ウィンター・スリープ』と『ザ・ワンダーズ』、そして河瀬直美監督の『2つ目の窓』、ジャン=リュック・ゴダール監督の『グッドバイ・トゥ・ランゲージ』の4本。しかしながら、このマチネ上映のみの作品が高位の賞に輝くことも多いので、全く侮れないのが実情だ。
(記事構成:Y. KIKKA)