本日も快晴となった17日(土)。15時からは、昨日が正式上映日であったヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督作『ウィンター・スリープ』の公式記者会見に出席。その後、カンヌのビーチ沿いのメイン・ストリート“クロワゼット大通り”の景観撮影に繰り出した。


◆トルコ映画界を牽引する鬼才ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の『ウィンター・スリープ』は3時間超の濃密作!

 2003年の『冬の街』と2011年の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アナトリア』でグランプリを受賞し、2008年の『スリー・モンキーズ』では監督賞に、2006年の『うつろいの季節』では国際批評家連盟賞に輝いたトルコの名監督ヌリ・ビルゲ・ジェイラン。5度目のコンペ参戦作となる『ウィンター・スリープ』は、奇岩の景観で有名な世界遺産のカッパドキアを舞台に、こじんまりとしたホテルを経営する元俳優の男が、歳の離れた若妻と離婚の後遺症に悩む妹と共に過ごす厳しく陰鬱な冬を静謐な映像美で描写した愛憎ドラマ。
 正式上映が16日(金)15時からのマチネのみで、それもプレス向け上映と兼ねられた『ウィンター・スリープ』は3時間16分の大作で、登場人物間の軽い会話がいつしか言い合いに発展、本音とエゴが剥き出しになり、やがて人間の本性を露呈させていく究極の会話劇であった。

 公式記者会見にはヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督とプロデューサー2名、撮影監督、監督の妻で本作の共同脚本家であるエブル・ジェイラン、キャストのハルク・ビルギナー、メリッサ・セーゼン、デメット・アクバグが登壇した。
 ロシアを代表する作家チェーホフの短編から構想したという本作は、文学的なセリフが多く、言い回しも難しいので素人ではなくプロの俳優を起用せざるを得なかったというヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督は、その繊細で衝撃的なダイアローグについて「脚本執筆時には、妻と何度も口論になりましたよ。でも、そのおかげで10倍ほど創造力豊かになれたわけで。今日のような場所では、作品のセリフは生みだせない。口論することで、生まれるんです」とコメント。さらにはロケ地に選んだ実在のホテルについても、寂しい場所にある物件が必要だったと言及。
 舞台畑出身のトルコの名優で、主人公を巧演したハルク・ビルギナーは「台本は、まるでニューヨークの電話帳みたいに分厚かったよ(笑)。そして舞台劇なみにリハーサルを重ねていったんだ。それもカメラを回しっぱなしにしてね」と撮影時の模様を振り返り、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督については「俳優とコミュニケーションする達人なんだ。俳優から欲しいものを引き出せる素晴らしい才能の持ち主だよ」と讃えた。


◆併催される“監督週間”と“批評家週間”部門は、ともに“クロワゼット大通り”に面した高級ホテルの施設で上映!

 プライベート・ビーチを有する超高級ホテルと有名ブランド・ショップが立ち並んでいるカンヌの目抜き通り“クロワゼット大通り”。フランス監督協会が主催する“監督週間”部門は、JW マリオット・ホテルの地下にあるクロワゼット劇場がメイン会場で、その事務局と記者会見場はホテルの隣接地に仮設されている。“監督週間”では毎年、この部門に貢献した監督を讃える「黄金の馬車賞」を贈与しており、今年は、去る3月1日に91歳で逝去したフランスの名匠アラン・レネに贈られた。
 “監督週間”の今年の上映作品は、長編19本と短編11本。この部門の唯一の日本映画出品作『かぐや姫の物語』は21日の14時半と20時半の2度上映される。
 監督の第1作目&第2作目を対象とする長編と枠に捕われない短編、そして特別上映作で構成される“批評家週間”部門は、フランス映画批評家組合(SC)の主催で、メイン会場はミラマー・ホテル。残念ながらこの部門には日本映画の出品作はない。
 また、メイン会場パレ・デ・フェスティバルにほど近いパブリック・ビーチの巨大な野外スクリーンで21時半から名作映画を鑑賞できるのが、映画祭の公式部門のひとつ“シネマ・ドゥ・ラ・プラージュ”だ。入場に制限は無く、一般の人も鑑賞できる好イベントで、今年は10作品がラインナップされている。
(記事構成:Y. KIKKA)