11月8日(土)、9日(日)に『竜宮、暁のきみ』の関西上映スタートの舞台挨拶が行われ、初日は青木克齊監督と主演の谷内里早さん、2日目は青木監督が登壇しました。その様子をご紹介します!

●竜宮伝説に彩られた
三豊市・荘内半島

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『竜宮、暁のきみ』は、さぬき映画祭2013年優秀企画作品。香川県にゆかりのあるテーマをモチーフにした映画の企画を応募するに当たって、青木監督は、香川県の西に位置する三豊市の荘内半島一帯に竜宮伝説、いわゆる浦島太郎の伝説が残っていることを知った。浦島太郎が玉手箱を開けたとされる場が「箱」と言う地名だったり、浦島太郎の両親のお墓があったり、伝説が息づく数々の地名や遺跡を知ったことが発想のきっかけとなった。

故郷の香川に帰省した大学生の太郎(石田法嗣)は、遊びに来た鴨の越の海で溺れ、助けようとした親友・正彦(落合モトキ)が命を落としてしまう。 一年後の夏、喪失感と罪悪感から自分の殻に閉じ籠り続ける太郎の前に、一人の不思議な少女・乙武みずき(谷内里早)が現れる。

●“玉手箱企画”が日替わりで
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 オール香川ロケの作品らしく、『竜宮、暁のきみ』の前売り特典にはオリジナルの“丸亀うちわ”が用意された。“丸亀うちわ”は、うちわシェア80%の生産を誇るといわれている。

「竹の柄付きの貴重なものを配ってしまいました。(映画のヒット祈願という)縁起を担ぐ上では、うちわに柄が付いているのは、良くないらしいんですけど。思った程笑いが来なくて、動揺しています(笑)」
 うちわ問題で辞任した松島みどり大臣に掛けて、ここぞとばかり放ったネタがいまひとつ不発に終わった青木監督。
「舞台袖でこれは爆笑間違いなしと言ってたんですけど、残念な結果になってしまいました(笑)」
谷内さんのダメ押しに会場から笑いが起こった。

 作品公開にあたっては、香川県の企業が、“玉手箱企画”として日替わり入場者プレゼントを提供し強力サポートを行っている。
 初日は本作のロケ場所となった三豊市の“三豊クリアファイル&浦島伝説ガイドマップ”に、“竜宮オリジナルえびせん”が配られた。このえびせん、なんと踊る谷内さんがプリントされた特別仕様となっている。

「お煎餅になった感想はいかがですか?」
 青木監督が谷内さんに尋ねると、
「お煎餅になったのは初めてだったので、色々緊張したり動揺したり。プレッシャーがありました」
との素直な回答が観客に受ける谷内さん。率直さがウケを狙う青木監督よりも一歩リードしているようだ。

●谷内里早、2年前との変化を語る!?
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 本作は撮影が2年前に行われ、昨年完成。上映の準備に1年かけ、今年夏に新宿、名古屋公開を経て関西へ到着。
今年21歳の谷内さんは撮影時19歳。

「2年前と比べてどうですか?」
 青木監督が改めて作品を観た感想を尋ねると、
「そんなに変わったことはないですが、こんなにキャピキャピすることはなくなりました(笑)。
あまり人と関わらなくなりましたね(笑)」

 猫とばかり喋っているという谷内さんに青木監督も吹き出す。
「人との出会いや縁の映画なので、人と関わって欲しいですね(笑)」

●現代の浦島太郎こと石田法嗣さん、竜宮を探しに!?
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もう1人の主演、石田法嗣さんは東京公開の折にも姿を見せていない。
「竜宮城に行って来ますという書き置きと共にいなくなって。4日ぐらい前にメールが入って、ロンドンにいると。ロンドンで竜宮城を探しているという(笑)」

 印象的な人形浄瑠璃のシーンでは、『浦島太郎』が人形浄瑠璃の演目にないため映画のためにオリジナルで制作。
人形浄瑠璃用の亀の人形も実在しないため、青木監督は亀の剥製を使う事を思いつく。
「ヤフオクで5800円でした。他の人に入札されたらどうしようとドキドキしていたら、入札していたのは僕だけでしたね(笑)」
 撮影後には、その亀を気に入った石田さんが実家に持ち帰ったという。

●初日特典は瀬戸内海のサンセットクルーズ!
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 初日特典として高松から出発するサンセットクルーズのペア招待券の抽選が行われた。青木監督がうちわのネタに気を取られて、控え室に招待券を忘れて来るというアクシデントがあったが、無事幸運な観客1名が選ばれた。
 現地までの交通費はお客様持ちではあることを差し引いても、粋なプレゼントではないだろうか。ぜひ美しい瀬戸内海の夕日をお楽しみいただきたい。

「暖かい=温かい映画になっているので、大切な方と見ていただけたら大変嬉しいです。よろしくお願いします!」
 最後に谷内さんから挨拶があり、初日舞台挨拶が幕となった。

●香川の映画でもあり、日本の原風景でもあるように
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 そして公開2日目。青木監督のトークのお相手は第七藝術劇場の松村支配人。
「観光映画という感じではないですね」

 太郎の両親を演じた松本明子さん、西山浩司さんは香川出身。香川県の映画であるし、方言も出てくるが、映画全体としてはあえて香川色を出そうとせず、逆のアプローチをしたと青木監督。
「日本人が誰しもが知っているおとぎ話の世界観を大事にしました。極力、日本の原風景といったイメージで作品が捉えられたらいいなぁと思って作りました」

 また、脚本の段階からこだわった水中撮影については、
「水中撮影のサポートの方に、これを本当にやるなら俺に役者さんを一週間預けてもらって、一週間水中の訓練してから3日かけて撮るもんだって言われました」
資金も日程も足りない中、俳優、スタッフの執念によって結局半日で撮影を終えたという。

 企画の段階では文楽は組み込まれていなかったと語る青木監督。
「プロデューサーと現地でロケハンした時に、約150年の伝統を誇る讃岐源之丞保存会の存在を知りました。地元・讃岐で義太夫の三好富太郎さんという方が始めた人形浄瑠璃と人形を保存しようとするもので、映画に活かそうと思いました」
 讃岐源之丞保存会の技術指導が、徳島出身で大阪で活躍する吉田文司先生。宇崎竜童さんやオペラ、ゴスペルと文楽をコラボレーションするなど既成の枠に捕らわれない活動を積極的に行っている。本作でも監督のこだわりを受け、人形の衣裳もオリジナルで讃岐源之丞保存会の方が制作、着付けを吉田文司先生が行った。

 音楽を担当したのは三豊市出身・在住であるtonari session’sのミヤタケタカキさん。エンディングを飾る主題歌「海街アーカイブ」では、同郷の曽我部恵一さん(曽我部恵一BAND/サニーデイ・サービス)がボーカルを務める。

『竜宮、暁のきみ』は、第七藝術劇場にて12月21日まで公開。京都みなみ会館では11月24日(月)の祝日スタートで12月5日まで上映。関東では千葉県の千葉劇場にて、11月15日(土)から1週間の上映予定となっている。

 パンフレットには青木監督と谷内さん、石田さんのインタビューが掲載されており、石田さんの不在を補うように映画制作時の裏話満載となっている。こちらもぜひ、映画と一緒にお楽しみいただきたい。

(Report:デューイ松田)