本日は、第67回カンヌ国際映画祭の開幕前日の5月13日の火曜日(現地時間)。今年も時間を有効に使える12日の夜便で日本を発ち(パリ滞在は空港でのトランジットのみ)、ニース空港には同日12日の朝(8:45am)に到着する便を利用。到着後、タクシーの相乗りでカンヌ駅近くにある宿へと向い、荷ほどきもソコソコに映画祭のメイン会場パレ・デ・フェスティバルへと向う。
 公式プログラムを始めとする諸々の映画祭資料とIDバッジ(カテゴリー別にランク付けされ、コレがないと何処にも出入りできない)を受け取るためなのだが、世界中から集う報道陣の多くは映画祭前日にカンヌ入りするため、メイン会場パレ・デ・フェスティバルの地階にある受取場所は午前中から大混雑で、長蛇の列となっていた。
 IDバッジを受け取った後、まだエスカレーターも作動していないメイン会場の階段を駆け上がり、3階に設置されているプレスBOXをチェックしに。これは、プレス(ジャーナリスト)向けの資料が、毎日どっさりと投入される“私書箱”みたいなもので、各個人専用のモノがあてがわれるのだが、その数には限りがある。カンヌには毎年、4000人以上のプレスが参加しているのだが、プレスBOXの数はその半分ほど。BOXのないプレスは一々資料を貰いにいかなければならないから、その手間と労力の差は大きい。
 実は、カンヌ映画祭のプレス登録には歴然たるヒエラルキーが存在し、ランクによって待遇に大きな差がある。優遇度は一目で判るようにIDバッジの“色”で区分され、最高位の色はホワイト(日本の媒体では4名のみが取得)。次いで黄色の◯印が付いたピンク、ピンク、ブルー、イエローと続く。プレスBOXの有無も含め、このバッチの色によって入場時等の優先順位が全く異なるから、実にシビアである。


◆今年の映画祭公式ポスターの図柄は、イタリア映画の名作『8 1/2』の主演男優マルチェロ・マストロヤンニ!

 毎年、注目されるカンヌ映画祭の公式ポスターの洗練された図柄だが、今年はイタリアが生んだ巨匠監督フェデリコ・フェリーニの代表作『8 1/2』(1963年)に主演したマルチェロ・マストロヤンニのサングラス姿がフィーチャーされている。本作は創作に行き詰まった映画監督の苦悩を現実と虚構を交えて描いた幻想的な作品で、アカデミー賞外国語映画賞を始め世界中で絶賛されたフェリーニの自伝的要素の色濃い名作だ。
 ポスターにはフェリーニ監督の分身とも言える映画監督のグイドを演じたマルチェロ・マストロヤンニの粋でニヒルな上目遣いのカットが使用されており、実にスタイリッシュな仕上りだ。なお、デジタル修復された『8 1/2』は、“シネマ・ドゥ・ラ・プラージュ”部門のオープニング作として15日の夜21時半から上映される予定になっている。
 メインの上映会場“リュミエール”に掲げられているのが、そのポスターの図柄なのだが、“ある視点”部門の上映会場である“ドビュッシー”に掲げられたモノは、文字のレイアウトが変えられており、こちらも洒落ている。
 ところで、例年はポスターと同じ図柄が表紙に使用されていた映画祭の公式プログラムだが、今年の表紙はオレンジの単色になっていた。エンボス加工が施されており、そこはかとなく高級感を醸し出してはいるけれど……残念ながら、評判はあまり芳しくない。


◆今年の長編コンペティション部門の出品数は18本、カンヌの常連監督が揃った豪華ラインナップ!

 さて、映画祭の華といえば、何といっても“長編コンペティション”部門だが、今年は欧州議会選挙が行われる関係で日程が繰り上がり、授賞式が現地時間の24日(土)に行われるため、今回の出品本数は18本(昨年は20本)に絞られている。
 だが、さすがはカンヌ。名匠、ビッグスターたちが居並ぶ超豪華なラインナップとなった。最高賞受賞歴を誇るベルギーのジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ(1999年の『ロゼッタ』と2005年の『ある子供』で2回)、英国のケン・ローチ(2006年の『麦の穂を揺らす風』)、英国のマイク・リー(1996年の『秘密と嘘』)を始め、デヴィッド・クローネンバーグ、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン、オリビエ・アサヤスといったカンヌの常連監督、そしてヌーヴェル・ヴァーグを代表する名匠のジャン=リュック・ゴダール等々、名だたる監督がひしめきあっており、豪華な面子で沸かせた昨年に全くひけを取らない布陣となった。
 昨年は三池崇史監督の『藁の楯』と是枝裕和監督の『そして父になる』(審査員賞を受賞!)の2本が選出されて話題を集めた日本映画だが、今年の出品作は1本。昨年は審査員に名を連ねていた河瀬直美監督が『2つ目の窓』(正式上映は20日)で参戦する。

 また、日本映画は他部門にも出品されており、高畑勲監督のアニメ映画『かぐや姫の物語』が“監督週間”部門で、東京藝術大学大学院の教授と教え子4人が共同監督した『八芳園』は“短編コンペティション”部門で、平柳敦子監督の中編『オー・ルーシー!』と早川千絵監督の『ナイアガラ』は学生映画を対象とする“シネフォンダシヨン”部門で、それぞれ上映される予定だ。
(記事構成:Y. KIKKA)