戦前のカナダ・バンクーバーで、差別や貧困の中にあってもフェアプレーの精神でひたむきに戦い抜き、日系移民に勇気と誇り、そして希望を与え、さらには白人社会からも賞賛と圧倒的な人気を勝ち得た実在の野球チーム “バンクーバー朝日”。実際の記録をもとに、伝説の野球チームと、戦前の日系移民の壮大なドラマを描いた映画『バンクーバーの朝日』がこの度、カナダ・バンクーバーにて開催されている、第33回バンクーバー国際映画祭(9月25日〜10月10日)の【特別招待作品(ガラプレゼンテーション)部門】にてワールドプレミア上映されました。

主演・妻夫木聡と亀梨和也、監督の石井裕也は9月29日の公式上映にあわせて現地バンクーバーを訪れ、到着早々に映画祭の公式記者会見へ出席。今年は、伝説の野球チーム“バンクーバー朝日”創設100年ということもあり、現地マスコミからの関心も高く、会見には22の現地媒体が集まりました。今回で5回目のVIFF出品となる石井監督は「バンクーバー国際映画祭には7年前に初めて来てから何度か参加しており、親しみを持っていましたが、こうしてバンクーバーを舞台にした映画をつくることになり、非常に縁を感じています」とコメント。記者からは「(妻夫木、亀梨に対し)役者の道を進んでよかったことは?」や「(監督に対し)7年前の自分に何と声をかけたいですか?」など様々な質問があがりました。

続くレッドカーペットには、あいにくの雨模様にも関わらず、約1000人のギャラリーがつめかけており、妻夫木、亀梨、石井の3名は、辺り一帯を埋め尽くす熱狂したファンの声援に送られ会場入りしました。
現在でも日系移民の多い当地。「バンクーバーの朝日」の存在は早くから注目されており、ワールドプレミアの上映チケットは発売開始から48時間で完売に。ワールドプレミア上映の会場である『Centre for Performing Arts』の1800の座席も満席の状態。映画ファンや石井監督のファンだという人、日本文化に興味を持つ若者はもちろん、実際の“バンクーバー朝日”を知っていると見受けられる世代も多く、客層・年代ともに幅広い観客が集まっていました。

上映前には妻夫木、亀梨、監督の3名が登壇。それぞれ英語にて「ここに来ることができてとても嬉しいです。」(妻夫木)、「今とても興奮しています。映画を楽しんで行ってください。」(亀梨)と挨拶をしました。
さらにこの日、“バンクーバー朝日”で実際にプレーし、現在もカナダに在住しているケイ上西(かみにし)功一さんが会場に駆け付け、登壇しました。現在92歳の上西さんは、2003年に“バンクーバー朝日”がカナダ野球殿堂入りチームとなった際、かつての所属選手として表彰式に参加した一人。キャスト・監督と熱い握手を交わし、「この映画をつくるため何度も日本からカナダにおみえになり、私もインタビューに臨んだ結果、映画が出来上がり、このバンクーバー国際映画祭にて世界初公開されることを大変有難く思う次第でございます。また、朝日がカナダの時代の一点に加わったことを光栄に思う次第です。そしてこの素晴らしい映画をつくってくださったご一同に厚く御礼申し上げます。」と挨拶。その後、キャスト・監督とともに、完成した「バンクーバーの朝日」をこの日初めて鑑賞しました。

上映中は、登場人物たちのたわいもない、でもどこかおかし味のあるやりとりで何度も笑いが起き、また、本物の野球観戦さながら、朝日がぼろ負けしたシーンでは嘆息が会場を包んでいました。逆転すると拍手が起き、「うまい!」「がんばれ朝日!」などといった掛け声も。本編が終了すると、場内にはスタンディングオベーションが起こり、作品を称える声にあふれました。バンクーバーでのワールドプレミアが決定した際「現地の人に、朝日が持っていた誇りを伝えたい」とコメントしていた妻夫木。その想いが実現している確かな手応えをかみしめるように、あたたかな拍手の中で声援に応えていました。

以下、キャスト・監督のコメントになります。

バンクーバー国際映画祭ワールドプレミア上映後のコメント
≪妻夫木聡≫
きっと受け入れてくれると信じて今日ここにやって来ましたが、想像を越えていて、映画を観ながら応援する声や笑い声を聞いた瞬間に涙が出てきました。こんな映画に自分が関わっているということが誇らしいですし、僕たちが刻み込んだ想いは、確実にバンクーバーの人たちにも伝わっていると身をもって感じました。
会場の反応を聞いていたら、作品の中のレジーの気持ちと似ているのですが、生きててよかったという気持ちになれたんです。自分の出演作にこんなにパワーをもらったのは初めてのことです。必死になっている自分を観て泣いている自分っていうのもなんか嫌ですけどね(笑)。野球をうまく見せることよりも、いかに楽しんでいるか、彼らにとってどんな風に希望だったか、ということを自然と僕たちが体現できていたのだと思います。

≪亀梨和也≫
この地で、この映画をバンクーバーの方たちと観ることができ、とても嬉しいです。ここで改めて客観的に映画を観て、自分の中で色々なものがさらに色濃くつながっていったという感じです。こんな映画に参加させていただいていたんだなあと、幸せに感じました。チーム朝日のメンバーを演じたみんなとは今も親交があり、今日もみんなから「いってらっしゃい!」というメールをもらって来ました。

≪監督:石井裕也≫
バンクーバーで上映することで少なからず心配はありましたが、上映中、観客の皆さんも一緒になって朝日のことを応援してくれたのは嬉しかったですし、単純に、本当に来てよかったと思っています。
バンクーバーのお客さんたちの反応は「強くてでかい」という印象です。一生懸命なプレーへの声援ともいえる「笑い」があたたかかったです。

≪ケイ上西功一≫
この映画は野球だけではなく、戦前に実際あったことを見せていただいて、そのうえ朝日のプレーを見せていただいて、とても嬉しかったです。(妻夫木、亀梨に)お二人とも上手にバントもできていましたね。

観客の上映後コメント
・「GREAT」の一言!
・すごく素敵な映画で、ラストシーンは本当に泣けました。
・実際に、日系の方々と白人の間には喧嘩があったと聞いていますし、それを「朝日」というチームが、野球を通じてフェアプレーに徹することで、敵対していた白人を巻き込んでいくというストーリーに感動しました。最高の映画でした。また観たいと思います。
・しっかりと過去のバンクーバー、当時の時代を感じることの出来る映画でした。とても勉強になりました。
・石井監督のファンです。ストーリーの作りも素晴らしいし、カナダの歴史を感じる事が出来ました。監督がこの映画に込めたメッセージを感じる事が出来てとてもよかったです。
・私の親戚に朝日のチームに在籍していた人がいるのですが、その当時の時代を感じることが出来てとても感動しました!
・このような歴史があった事は全然知らなかったのですが、この映画を観て勉強させていただきましたし、とても感動しました!