本作は、2011年に映画化された「八日目の蝉」をはじめ、女性を中心に抜群の信頼性と人気を誇る直木賞作家、角田光代の長編小説『紙の月』を映画化。
平凡な主婦が起こした巨額横領事件。真っ当な人生を送っていたはずの彼女が、なぜ横領に手を染めたのか。彼女が本当に手に入れたかったものは何だったのか—。
感情ゆさぶる衝撃のヒューマンサスペンスが誕生しました。

会見では、宮沢りえ、大島優子、小林聡美の豪華キャスト陣と、昨年の日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞した傑作『桐島、部活やめるってよ』を送り出した鬼才・吉田大八監督、原作者の角田光代が登壇いたしました。

『紙の月』完成報告会見イベント 概要

【日程】8月21日(木)
【会場】パーク ハイアット 東京
【登壇ゲスト】宮沢りえ、大島優子、小林聡美、角田光代(原作者)、吉田大八監督

銀行で働く平凡な主婦から横領犯へと変貌していく衝撃的な主人公・梅澤梨花を演じられた宮沢りえさん、梨花の先輩社員で次第に梨花を追い詰めていく厳格な事務員・隅より子を演じられた小林聡美さん、梨花の同僚でしたたかな銀行の窓口係・相川恵子を演じられた大島優子さんの豪華キャスト3名、そして原作者の角田光代さん、吉田大八監督をお迎えし、映画『紙の月』完成報告会見を行いました。

キャストの皆さんはご自身で演じられた役柄について真摯に語りつつも、お互いにツッコミを入れて場を和ませ、角田さんからは映画の完成度の高さにお墨付きをいただき一同安堵の表情に。
そして紅一点ならぬ黒一点の吉田監督は、映画オリジナルの要素について真摯に語りつつ、この豪華キャストを集められたことを自画自賛。黒のシックな衣裳で揃ったキャスト・スタッフの団結力の高さが伺える会見となりました。

<代表質問>
MC:一言ずつご挨拶をお願いいたします。

宮沢さん:こんにちは、本日はお集まりいただきありがとうございます。改めて7年ぶりの主演ということに驚いています。
7年の間に溜めておいたものを出し切った作品です。今までにやったことのない役で戸惑いもありましたが、監督のリードで梨花という役の輪郭がはっきりしていって、楽しいだけではなく濃密な撮影になりました。

小林さん:お暑い中お集まりいただき、ありがとうございます。宮沢りえさんと私、2人ともキャリアは相当なんですが、実は初共演なんです。
素敵なスタッフ・キャストの方といっしょに緊張感のある楽しい撮影でした。

大島さん:こんばんは、お集まりいただきありがとうございます。先輩方のお芝居を間近で見て、空気感や芝居への取り組み方、姿勢などを勉強させていただきました。感化されながら、緊張感を持って、一つ一つ繊細に演じさせていただきました。
また、監督に相川というオリジナルキャラクターを作っていただき、そしてキャスティングしていただいたこと、とても嬉しく思っています。
宮沢さん演じる梨花とどう関わっていくか楽しみにしていてください。

角田さん:初めまして。映画に関しては特に何もしていません。素晴らしい作品にしていただいて、きっと私がいちばん嬉しいと思います!

吉田監督:皆さん、お集まりいただきありがとうございます。一人でも多くの方に映画を観ていただけるよう、よろしくお願いいたします。

MC:宮沢さんは7年ぶりの映画主演となりましたが、普通の主婦が横領犯になるというセンセーショナルな内容です。
オファーがあったとき、どう思われましたか。

宮沢さん:7年間サボっていたわけではなく(笑)、舞台中心に仕事をしていました。私はタイミングってすごく大事だと思っていて、映画もそろそろやりたいなと思っていたら、オファーをいただいたんです。すぐに「やる!」という感じではなく、今までにやったことのない役を始めるにはちょっと時間がかかりました。でも吉田監督と仕事がしたい、見たことのない自分を見てみたいと思って、受けました。案の定、見たことのない自分の顔があって衝撃でした(笑)

MC:小林さんは梨花とは対照的に厳格でストイックな先輩社員・隅を演じられましたが、どんなことを意識して役作りされましたか。

小林さん:普段親しみやすいキャラなので(笑)、お局で20年以上のキャリアがあって仕事のできる銀行員ということで、取っつきにくい人になるように頑張ってやってみたら、想像以上に怖くなりましたね(笑)

大島さん:怖かったです(笑)

MC:大島さん、吉田監督の元で女優大先輩の宮沢さん、小林さんお二人との演技というのはいかがでしたでしょうか。

大島さん:間近で、監督と宮沢さんや小林さんのやりとりを見ていて、監督の言うことを体に入れてそれを噛み砕いてやってみる、大先輩でも監督の的確な指示を調理して提出するということをやっているんだ、私もやっていいんだと、とても勉強になりました。

MC:ご自身の作品が映画化されてことへのお気持ち、そしてすでに映画をご覧になったとのことですが、
よろしければ映画のご感想もお聞かせください。

角田さん:映画になるのは嬉しいです!映画を拝見したら、もの凄い映画になっていて度胆を抜かれました。
女性は言い訳したくなると思うのですが、この映画はそんなことしないですし、個人の正義もないんですよね。
これを作り上げた監督はすごいです!良いことは起きないけれど、観たあとは爽快な気分になります。
私には書けないです(笑)

宮沢さん:書いてください(笑)

MC:映画オリジナルの役、小林さん演じる隅と、大島さん演じる相川が加わったりと、監督は原作を大胆に脚色されていますが、映画化にあたり、どのような思いで臨んだのでしょうか。

吉田監督:原作を読んで、世の中に牙をむいている作品だと感じました。そんな原作を映画化するにあたっては、挑戦する姿勢を見せなければならないと思い、映画の表現として隅・相川というキャラクターが出来ました。

<マスコミからの質問>
Q.映画を拝見して描写がリアルで一歩間違えれば自分もそうなるのでは、という怖さを感じたのですが、梨花を演じられて、共感できる部分はあったでしょうか。

宮沢さん:あることがきっかけで物事が大きく動き出すことは誰にでもあること。狂気というタンクを満タンにしながら、梨花は悪に手を染めているのに真っ黒じゃないのが不思議なんですよね。共感するとしたら、到達点を脇目に見ながらまだまだ先に進む生命力、貪欲さですね。自分にもそういったものがある気がします。

Q.梨花と隅という二人の対峙は、怒鳴り合うような激しさもないところが、逆に怖さ・緊張を感じさせる印象深いシーンでしたが、どう挑まれていたのでしょうか。

小林さん:あのシーンは他のシーンとは違いました。スタッフも私たちを気遣ってくれて、空気を作ってくれました。
素直に対峙して、見方は戦っているように見えるのですが、互いに共感している部分もあるんです。役柄だけでなく、宮沢さんと分かり合えたような気がします。

宮沢さん:完全な順撮りではなかったのですが、このシーンは最後のほうに撮りました。
梨花という役が染みついていて、そこだけが特別ではなかったです。
ただ、小林さんとはいつか共演してみたいと思っていたので、本当はもっと和やかな間柄の役をやりたかったなと愚痴を言ったりしました(笑)

Q.登壇されているキャストの皆さまが演じた、3人の女性が非常に印象的でした。
この豪華女優陣の皆さまを演出されていかがでしたでしょうか。

吉田監督:宮沢さん、小林さんが初共演なのは意外で、今までになかったんだと驚きでした。
そこに大島さんまでいるというのは…この3人を揃えられたことを褒めてほしいですね。
これを実現しただけで、「仕事したな」と自己満足しています(笑)。

Q.「こんなに繊細な現場は初めてでした」と仰っていた記事を拝見したのですが、吉田組の現場、吉田監督の演出はいかがでしたか?

大島さん:1対1でコミュニケーションをとりながら繊細に的確に指示されるのが、『紙の月』を見るともっともっとわかると思います。

Q.原作とはまた違った主人公となった、宮沢さんの演じる梨花はいかがでしたでしょうか。

角田さん:凄い迫力で怖かったです。どんどん悪になっていくにつれ、反比例に透明な美しさが出てきて素晴らしかったです。

宮沢さん:やったー!