中森)松江監督はアイドルの映画は撮らないんですか?

松江)僕は『童貞。をプロデュース』なんて作品を撮っているくらいなので、
キラキラした人を観ると恐くて恐くて(笑)。僕が撮ったら歪んだ視点の作品になると思います(笑)。
90年代は、アイドル映画がどこかダサいものとされていた時代で、
2000年代になってAKB48が出てきてこの映画が出来たのは時代と呼応している思っていて、
だからこそ紅白が終わって年明けに公開というかたちや、その年にグループに起きた事件が全て描かれていたりすることが凄いと思うんです。
起きたことを全て入れて行くのはドキュメンタリー監督にとってすごく恐いことなんです。
だから高橋監督は凄いと思います。

中森)AKB48そのものでもあるんですが、プロレスとか格闘技に近いものがありませんか?

松江)そうそう!そうなんです!
そういう被写体ってドキュメンタリーに合うんですよ。本当に美しくて完璧なものをそのままに撮るのがドキュメンタリーには多いんですが、虚実入り交じったものはドキュメンタリーに凄く合うし、実際にドキュメンタリーって虚実入り交じったものなんですよね。
現実を撮っていても、フレームを向けた瞬間に隠しているもは絶対にあるんです。
そこの部分を想像させたり、そこを敢えて描かない事で真実を見せるというのがドキュメンタリーの手法なので、プロレスとかボクシングは近いですね。

中森)AKB48にとってその部分は“運営”っていう言われ方をするんですが、
この作品に対しては、ファンの間ではしばしば「運営がよく許したよね」っていう表現がされます。
綺麗なところだけ見せたいっていうだけじゃないのが分かりますよね。

松江)多分、僕を含めて普通のドキュメンタリー監督がこの映画をとったら運営に取材をしたいと思うはずです。

【最後に一言】
松江)僕はこの作品は日本のドキュメンタリー監督が“お約束”で守っていたものを踏み越えた作品だと思います。
2011年に撮影していたということがそうせざるを得なかったという状況や、AKB48という被写体がそこまで撮ることを許したということが凄い革命的で斬新な作品だったと思います。
それが3作目から4作目にどう引き継がれていくのか楽しみです。
高橋監督にもお伝えしましたが正直なことを言うと、この作品にはとても刺激を受けましたし僕自身がこういったドキュメンタリーが作れないかと思っていたんですが、この作品があるから僕はできないと思いました。だったら別のことをやろうと今は考えています。

中森)イッキに3本を劇場で公開するのは初めてのことなので、ここにいる皆さんは未知の体験をすることになると思うと楽しみです。