6月18日新宿ピカデリーにて映画『ぼくたちの家族』のトークイベントが行われ、プライベートでも親交の深い妻夫木聡とリリー・フランキーが登壇した。

 リリー・フランキーは5分前に現場に到着し自らの鞄を持ったまま登場。リリーは妻夫木を「ブッキー」呼ぶほど仲が深い。会場には月に1度は家族旅行をしているとても仲の良い家族のひとりである妻夫木の父の姿があった。イベントにはほぼ出席しているということがリリーから明かされた。リリーは妻夫木だけでなく家族とも顔見知りだそうだ。

 リリーが「ブッキー、この役は辛い役だね」と言うと、妻夫木は「僕は次男なので実の兄貴の気持ちを考えながら演じました」と答えた。自らの母が入院していた経験を持つリリーと、父が昨年入院していた妻夫木は双方「この映画を観た人で似たような経験をしたことがあるひとはたくさんいると思う。自分のことと重ね合わせながら観たのではないか」と語り、母を亡くしたリリーが「1番悲しいことは人の死である」と話すと会場にいる方々は縦に顔を振った。映像を観ているとするはずのない病院の匂いがするというリリーと妻夫木。妻夫木は「映画を観て、色、匂い、温度が伝わるかどうかはとても大事なところだと思う」と語り、この映画はそれを果たせていると絶賛。

 本作はある日突然母・玲子(原田美枝子)に「脳腫瘍」が見つかり、余命1週間を宣言され、父(長塚京三)、長男(妻夫木聡)、次男(池松壮亮)の男たち3人が身も心も限界に近づきながらも奇蹟を信じて動き出すというあらすじなのであるが、それを踏まえてリリーは「女親の一大事の時、男はいざというとき頼りにならないということがよく分かる」と言い会場にいる主婦であろう方々に「そうですよね?」と尋ねると会場からは大きな頷きと笑い声が返ってきた。そういうリリーが人生でいちばん頑張ったのは母が入院したときだそうだ。

 長男(妻夫木聡)は元ひきこもりなのであるが、リリーはそれに対し、「ブッキーが元ひきこもり役と最初聞いたときは違和感があったが、映画を観てみるとひきこもりを経験していた人の所作をしっかりと表現できていて、お芝居できちんと整理してくれた」と褒めた。妻夫木は「この役は笑顔も涙も見せない役なので難しかった」と語った。確かに妻夫木をイメージすると笑っている顔を思い浮かべる人が多数であろう。トークイベントでは終始きらきらとした笑顔だった。

 次男役の池松壮亮について、リリーは「人間と子犬の真ん中。天才だ。」と絶賛。妻夫木も同様「この俳優が好きでたまらない。」と語った。次男は大学で留年している役なのであるが、リリーは「プー太郎だからこそ病院に通えるし、こういう一大事の時すぐに動けるプー太郎は得をしている」と笑いを交えながら話した。

 石井監督についてリリーは「デビューからこんなに安定している人は珍しい。」と絶賛。何度も撮影を一緒にしている妻夫木は「全く異なる視点から描く監督で、型にはまるのが嫌なようだ。」と監督をよく理解しているようだった。

 最後に妻夫木は「自らがこの映画に関わっていること抜きにして、ひとりでも多くの人に見てほしい映画です。ここがみどころだというより、全て観て感じてほしいと思います。」とコメントを残し、2人はこれから食事に行くことも明かして笑顔で会場を去った。

 

(Report:浜野真里)