『八甲田山』『復活の日』『誘拐』『鉄道員(ぽっぽや)』など、日本を代表する様々な監督とタッグを組み、珠玉の作品を世に生み出してきた名キャメラマン・木村大作。2009年には初めて自らメガホンを取った『劒岳 点の記』が観客動員240万人を超える大ヒットを記録し、日本アカデミー賞最優秀監督賞ほか数多くの賞を受賞するなど、監督としても高い評価を得ました。その木村監督が満を持して挑んだ最新作は、春夏秋冬・四季折々の雄大な自然の中で育まれる人の美しさ・優しさを描いた木村大作流“人間賛歌”。笹本稜平の「春を背負って」(文藝春秋刊)の映画化でもある今作は、標高3000mの立山連峰、大汝山にある小屋を舞台に、家族の絆と様々な想いを背負う人々の心の交流を描いた“居場所”を求める人間ドラマです。

 いよいよ今週末に公開を控えた『春を背負って』。原作とは舞台を変え、監督自らが“第2の故郷”と言う富山県で撮影されました。公開を前に映画の舞台となったその富山県で主演の松山ケンイチ、蒼井優、豊川悦司、木村大作監督による凱旋プレミアイベントが行われました。

 実際の撮影でもキャスト・スタッフが宿として使用していた室堂の山小屋に訪問。山小屋前で久々に訪れた立山の感想、撮影を振り返っての思い出を語りました。室堂周辺のこの日の気温は9℃。小雨がパラつき、雲が山にかかる生憎の空模様の中で取材がスタート。取材を進めるうちに空が徐々に明るくなり、大汝山をはっきり見渡せるほどに。撮影時も木村組には“天気の神様がついている”と言われていましたが、まさにそれを実証する囲み取材となりました。

 その後、富山市内にある富山県庁にてレッドカーペットアライバルを行いました。1935年に建てられた富山県庁。79年の歴史の中で県庁入口にレッドカーペットを敷いたイベントを行ったのは“初めて”。また、富山県庁に2513人もの県民が押し寄せた事も“初めて”と初めてづくしのイベント。イベント開始前には入口でイベントに駆けつけて下さった観客全員に木村監督自らが名刺を配り一人一人と挨拶を交わす一幕も。キャスト、監督の富山凱旋に富山県が熱狂に包まれました。富山市内の気温は28℃。快晴に恵まれ熱気溢れる舞台上に立った松山は「地元の方々の応援がなければこの作品は成り立っていない。こんなにたくさんの方に集まってもらって、富山の方々の熱を感じます。その期待に応えられる作品になっています。」と自信たっぷりに作品をアピール。豊川悦司は「僕、豊川悦司というんですが、明日から“富山”悦司にします!!」と会場の笑いを誘った。イベントには石井隆一富山県知事も登壇、木村監督へ花束を贈呈、「これからも是非富山を舞台にした映画を」と次回作の撮影をオファーしていました。

 最後にTOHOシネマズファボーレ富山にて舞台挨拶。この舞台挨拶には170組340名の募集に対し、7000人近くの応募があり、超プレミアチケットを手にした富山の皆さまへの感謝の気持ちといよいよ公開を今週末に控えた気持ちを語り、凱旋プレミアを締めくくりました。
 
■下記、各イベントでのキャスト・監督のコメントになります■
【室堂でのコメント】
松山:お世話になった人たちに会えて、あの時の気持ちがよみがえりました。(実際に撮影で登った大汝山をみて)見るとまた登りたくなる。(木村組には)天気の神様も映画の神様もついているなと思いました。実際に登って、本物の場所で撮影をする事は今回、絶対に必要だったと思うし、そのおかげですこくいい表現ができたと思います。

蒼井:山は気持ちがいいなという事を再確認しました。体が酸素の薄さとか2500m地点の環境を覚えてくれていたみたいで、ただただ楽しいです。山に来ると、ただの人になれる、色んな自分を作る要素が抜けて単体になれる感じが楽で、(キャスト・スタッフみんなが)ただの人対人でお話ができたのがすごく貴重な時間だったなと思います。

豊川:約10ヵ月ぶりに来て、汚れてしまった心がクリーンアップされて、胸のすくような良い気持ちになりました。木村監督という稀有な映画人に、映画の神さまが常に微笑んでいる感じがします。

木村監督:この映画で大汝までは13往復している。たた山は山でした強くならない。長く歩く事で強くなっていくのをこの年齢になっても実感したね。本当の場所に行かなきゃいけないんだっていうことだよ。今作の撮影で笑顔が絶えない現場を体現できたというのは素晴らしい経験です。

【富山県庁でのコメント】

松山:僕らも予想していないほどの沢山の方たちに来ていただいてビックリしています。自分が思っていた以上に富山の方々の熱を感じます。その期待に応えられる作品になっていますので、是非観て頂きたいと思います。

蒼井:私たちにとっても大汝、立山は特別な場所になったので、その場所を提供していただけた、本当にみなさんの力がなければ私たちは何もできなかったので、私たちを快く受け入れて下さった、色んな事を教えて下さったみなさまに感謝しています。

豊川:こんなにたくさんの方に集まっていただいて、胸が熱くなります。こういう風に集まって下さるっていうのは、僕ら映画を製作したものにとってはものすごく励みになります。僕、豊川悦司っていうんですが、明日から“富山”悦司にします。

木村監督:(実際に山で撮影する事について)効果絶大だよ。本当の場所にそれも3000mに俳優さん、スタッフと一緒に行くと、心が余計な事をやらない、自分の素を出せばいいんだってなるんです。撮影中、こんなに楽しく撮影したのは生まれて初めて。それが映画の中に全部出ています。

【TOHOシネマズファボーレ富山】

松山:公開一週間を切ってまたここに戻ってくる事ができてすごくうれしいです。(登山と人生の経験で重なるものは?との問いに)子供と一緒に遊んでいる時に遊んでから寝かしつけるまでがすごく似ていますね。電池が切れないですからね。必死になってくらいついているんですよ。(子供が)寝て、その寝顔を見た時に「あ〜今日も終わったか〜」というような。その感じが似ていますね。

蒼井:実は撮影中にこの映画館に映画を観に来ていて、まさか自分がスクリーンの前に立たせて頂くなんて思ってもいませんでした。
豊川:(登山と人生の経験で重なるものは?との問いに)映画作りに似ているなと思います。登って下るという事なんですけど、映画も(撮影)初日からクランクアップまで歩き続けていくというか、1人じゃなくその時々の仲間と歩いていくのが似ているかなと思います。

木村監督:富山はもう8年間通い続けている土地です。僕の故郷は富山です。富山の人は温かい。この映画も温かいです。その事を実感しながら観て下さい。