「ナカメキノ」12回目は中目黒を飛び出して、今や日本一の映画の街=新宿の中で、その特徴あるラインナップにより映画ファンの熱い支持を得ている映画館「シネマカリテ」のイベント「カリコレ」とのコラボレーション。しかもスニークプレビューで、『怪しい彼女』(7月11日(金)より全国順次公開)を上映しました。朝9時の受付開始時点で既に約30名の方が列に並び、11時の時点で83席分のチケットは全て配布終了。上映前のトークイベントでもタイトルは一切明かされず、お客様は映画が始まる瞬間まで何が上映されるか分からない、完全スニークプレビューとなりました。

 毎回好評のトークゲストは、テレビCMでの見事な頭突き瓦割りで話題の女優・武田梨奈さん、34年前に日本初のスニークプレビューとうたわれた『ブルース・ブラザース』の試写に参加した経験ももつ松崎まこと(映画検定1級・放送作家)さん、映画文筆家の松崎健夫さん、そして「ナカメキノ」ディレクターの中井圭(映画解説者)が登場。ようやく『怪しい彼女』について話せる状況となり、トークイベントは大盛りあがり。観客の皆さんもすっかり怪しい彼女=“あやかの”に魅了された様子で、会場は熱気に包まれました。

<「カリコレ」×「ナカメキノ」『怪しい彼女』スニークプレビュー概要>
日程 :5月24日(土) 会場 :シネマカリテ(東京都新宿区3丁目37−12新宿NOWAビルB1F)
トークゲスト: 武田梨奈(女優)、松崎まこと(映画検定1級・放送作家)、
     松崎健夫(映画文筆家)、中井圭(映画解説者/「ナカメキノ」ディレクター)

【上映後トーク】
中井:今回はスニークプレビューでしたが、作品はご覧いただいたとおり、『怪しい彼女』でした。予想が当たったという方、いらっしゃいましたか?(客席4〜5人挙手)
松崎まこと(松崎A):実は今日着て来たこの(オードリー・ヘプバーンの)Tシャツがヒントでした。
中井:泣いている方もいらしたようですね。ちなみに武田さんがこの作品をご覧になったきっかけは?
武田:まことさんに勧められて観たんですよ。

松崎A:敢えて言うなら、僕はこの映画の応援団長です!とにかく観てもらいたくてお誘いしました。

武田:タイトルだけ聞いて、最初はミステリー系なのかなと思っていたんですが、観たら全く違っていて。最後の最後まで立ちたくない、ずっと映画に浸っていたい、そんな作品でした。観た後すぐに、応援団になろう!と思いましたよ。本当に大好きな作品なので、何かやりたいなと思っていたら、今回こういう機会をいただけて嬉しいです。

松崎A:梨奈ちゃんが号泣しちゃったと聞いてびっくりしましたよ。しかも話している出で立ちが、稽古前だったからか木刀を抱えてましたしね(笑)。

武田:その後の稽古に集中できないくらいでした。。個人的には、私は元々おばあちゃんっ子で、おばあちゃんという存在が大好きなんです。時々健康ランドに行ったりもするんですが、おばあちゃんたちが集まるカラオケ広場で一緒にノるのが大好きで。そのあたりもツボでヤバかったですね。

松崎A:今回は『サニー 永遠の仲間たち』のご縁で、配給会社さんから「応援してくれませんか?」と声を掛けて頂きました。そして作品を拝見した後、こちらから「応援させてください」と頼みました。やっぱりシム・ウンギョンが素晴らしい。『サニー』の頃は15歳、そして今回は19歳。もうすぐ20歳になるウンギョンですが、この人すごいんです。歌も吹き替えじゃなくて全て自分で歌ってるんですよ。(客席驚き)聞くと8歳の頃から声楽もやってたそうです。女優業を始めてそちらに専念したそうですが、これからはまた歌もやってみたいと言っていました。先日来日したときにお会いできたのですが、まあしっかりした人で!一緒にお食事させてもらったけど、めちゃめちゃ緊張しました…^^。そのときスタッフの方が、韓国語で“おっサニー”(『サニー』を愛して止まないおじさんサポーター集団)の説明もしてくれて、感動してしまいました。

中井:それってただのファンじゃ・・・笑

松崎健夫(松崎B):僕は皆さんより遅めに観させていただいたんですが、観る前に噂もいろいろ聞いたし、イニシャルトークもされてしまって、、だから今日みたいに、何も知らずに&聞かずに観るのって本当に良いなと思いました。スニークプレビューに向いている作品ですよね。物語が思った方向に進まなくて、そこがまた良い。先日シム・ウンギョンが来日したとき、幸運にも僕もお会いできたんですが、映画とはまた違う印象でしたね。最初に映画を観たとき、正直ちょっとやり過ぎかなと思っていたんです。でも極端にやることで、おばあちゃんと摺り合わせていたんですね。最後は見た目が若いまま、“息子と母親がいる”と観客に思わせなければいけない。でも冒頭からウンギョンが出て来るまでの時間が長い。限られた時間の中でオ・ドゥリが70歳のおばあちゃんであることを刷り込ませる必要があったんですね。一見オーバーかと思われる演技も、役作りとしてやっているんだろうなと思わせるところがすごいですね。若干19歳。末恐ろしいですね!

松崎A:おばあちゃんを演じたナ・ムニの演技との擦り合わせは、相当やったらしいですよ。話し方や仕草、訛りも。その上であんまり70歳しすぎると不自然だから、コピーしつつアレンジしたそうです。

中井:おばあちゃん状態になったときの強弱もありますよね。強の部分を強めにしていた方が、弱のシリアスな部分がぐっと良く
なる。すごく印象的になりますよね。
松崎A:だから恋しちゃうところもすごくかわいく見えちゃうんですよね^^
武田:役柄で女性を的にまわしてしまう女優さんも多いけれど、今回は本当にだれもが愛するキャラクターですよね。下品なことも言うけれどすごく魅力的で。

松崎A:実はこの作品、“韓国映画あるある”もいっぱい詰まっているんですよね。例えば(内容に触れているので中略)…などなど。あるあるがあるうえで、もうひとひねりもふたひねりも加えられていて、その上でさらにあの存在観ですよ!実際に起きた児童虐待を描いた『トガニ 幼き瞳の告発』の監督が、シム・ウンギョンでコメディを撮るということで、一体何を撮るんだ?と思っていたけれど、他のキャストも素晴らしいはめ方で、どれだけ演出力あるんだろうと思いましたね。

中井:それから時代背景を知っていると、より深く観れますよね。
松崎A:朝鮮戦争の後、韓国は朴大統領時代に入り、外貨を稼ぐため西ドイツにはたくさんの出稼ぎ労働者を送り込まれ、実際に過酷な労働で亡くなった方もたくさんいたそうです。日本人はその歴史についてあまり知らないけれど、韓国の母の歴史がちゃんと入っているんですね。韓国では動員860万人を越える大ヒットを記録しています。

松崎B:監督の演出でいうと、『トガニ 幼き瞳の告発』では、霧に包まれた山道を走るシーンから始まりますよね。映画ではよくある演出ですが、この映画はこういう(五里霧中な)映画なんですよという宣言がされている。『怪しい彼女』でもまさに同じことがされています。なんてことないボールのやりとりから始まりますが、そこには恋愛が表現されていて、映画全体を観終わったときに、ああ最初にそういう宣言がされていたんだなと感じる。これはすごいなと思いますね。

中井:シム・ウンギョンの印象もあるけれど、そのほかの演出も堅くやっていると。

松崎A:観終わったら、オ・ドゥリ(主人公)を演じるのはシム・ウンギョンしか考えられないですよね。でも主人公以外の脇役までしっかりと演出が行き届いていて。監督もスゴいんだよね。

中井:改めて韓国映画のレベルの高さを感じますね。

松崎A:『トガニ 幼き瞳の告発』の監督がこんな映画を?と思わせるくらいやりたかったそう。求められるものにちゃんと答えられる監督なんですね。ネタ的には日本でリメイクしても良いんじゃないかなあ?

中井:日本でリメイクやるとしたら…。梨奈ちゃんどう?
武田:・・・あまりにもオリジナルが完璧すぎてて(苦笑)。。。歌も素敵ですよね、全部。
松崎A:3曲ほど韓国の懐メロが使われていますが、なんとなく日本の歌謡曲とも似てますよね。
中井:歌の歌詞を読んでいくと、そのときの心情を表していて、歌の使い方がうまいなと思いました。かなり歌詞を意識して曲を選んでいますよね。

松崎A:相当考えてると思うよ。
武田:19歳であの歌が歌えるってすごいなあと。
松崎A:振り付けも細かいところまで気を遣っていて、相当すごいよね。

中井:衣装は『サニー』の人ですよね。ちなみに…ちょっと照れてしまいますが、皆さんの一番好きなシーンは?