いくつになっても理想を追う悩ましい“オールドルーキーたち”に贈る渋谷を舞台にしたアンチエイジング・ファンタジーが、関西では元町映画館と京都みなみ会館11/9から11/15まで公開、11/16から第七藝術劇場にて公開となった。

『元気屋の戯言』は、不思議な映画だ。
渋谷の街で一期一会を大切にしながらお節介に生きる男・元気屋エイジは、偶然出会った詐欺師の韓国人女性シオンのために奔走する。

元気屋とは何だ?元気を売る商売?何だかよく分からないけどポジティブイメージには違いない。人間というもの、真っ当な肯定的単語にはかえって反発したり裏を読んだりしたくなる天邪鬼な部分がある。
しかし映画を観ると“元気屋エイジ“という男のあまりの真っ当さ、不器用さ、元気屋でいるための強靭な意志に触れた時、素直な気持ちにさせられ、自分の世界の彩度すら一段鮮やかに見えてくる。

壇上に登場した上原源太監督は
「この映画は元気屋エイジというこの男から全てが始まりました」
盟友・元気屋エイジさんの“自分主演”という構想に、やめた方がいいと何度も止めたと語る。
「周りを巻き込むのがうまいんです。なんかしてあげたくなるような。面倒くさいところもあるけど(笑)。他にあんまりない古臭い、だけど渋谷を舞台にした不思議な都会の映画になったと思います」

今回エイジさんは1ヶ月前から関西に入り、地道に宣伝活動をしてきたが、当初関西に知り合いは多くはいなかった。
「そのうち関西が性にあうと言い出した。ビラ配りしても関西の人たちの反応が違う。ずっと関西の人たちに見て欲しいねって話をしてきました。長い道のりでしたけど、今日はありがとうございました」

ヒロイン・シオンを演じた菊池真琴さんは
「観れば観るほど面白いので懲りずに観てください」と挨拶。
可愛らしい天然ぶりに違うやろ!と突っ込みが入り笑いが起こった。

エイジを見守る店長を演じた加藤マサキさんは、
「色々な人が絡んで出来た渋谷でゲリラ撮影した映画です。関西とは違う風を感じて頂けたら」

シオンを追うホストのハイエナ役の牛丸亮さんは、『アンパンマン』のばいきんまん役を楽しんで演じたとのこと。
「インディーズ映画の聖地であるこの映画館で仲間と作った作品をたくさんの人に観てもらえて嬉しいです」

シオンの手管にかかる山口役は清水英彰さん。
「倉庫のシーンでシオンちゃんと二人きりになりました。できればもっとさきまでやりたかったな。冗談ですけど(笑)」と反省してない山口のようなコメント。
劇中でかかる『夢の三連単』は、清水さんがゲリラライブで巣鴨駅前で話題を集めたと言う歌。劇場では1日限定でCDの販売も行われた。

『元気屋の戯言』は、竹原ピストルさんの主題歌『オールドルーキー』とは別に、ガブリエル・リー・EROSHIKA・武市旬哉・黒髭・大羽洋子の5人の音楽家が劇中スコアを手がけているとのこと。その中の一人、DJ兼トラックメイカーである黒髭が東京から駆けつけてくれたとの紹介が上原監督からあり、歓迎の拍手が起こる。
「この映画の持つ軽妙な昔の昭和っぽい匂いと渋谷の情報屋ジョウ・ホウヤの特異なキャラクターは、黒髭さんの楽曲で作られたと思っています」

客席から花束のプレゼントを渡された元気屋エイジさん。この映画を作るまでは人に期待した人生を送っていて、ある日信号待ちの時に“人に期待するな、己に賭けてみろ”と音が降って来たことが映画制作のきっかけだったという。
「脚本も書けないのに書いてキャストスタッフ全部集めてしまったんです。ぐちゃぐちゃのままスタートして映画の完成まで一年かかりました。監督の上原と我慢大会で粘って粘ってここまで出来たんです」

2012年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭のコンペ部門に入賞し映画祭で上映され、その後渋谷の映画館を営業で回ったが中々手を上げてくれるところがなく、劇場公開できなかった。

「色んな奇跡が巡ってBSスカパーで劇場未公開作品を集めたコンペで、映画監督の崔洋一さんや『おくりびと』のプロデューサーの中沢敏明さんといった色々な方の支持を得て今年の2月に劇場公開できました」

会場の第七藝術劇場には作品が出来る2年程前に挨拶に来たというエイジさん。関西公開については周りから無謀と言われたように劇場との交渉が難航する中、熱意が実って関西3館の上映が実現した。

「普通劇場でビラを配ってもなかなか来てくれないものですが、
元町の映画館の宣伝では70代のファンキーなおばあちゃんが、出会ってすぐ映画館に来てくれたり。今日も大阪まで来て下さって」客席から声援を送る年配女性に「覚えてますよ!」と呼びかけた。

「ご縁と奇跡の連続でこうやって劇場公開に辿り付けました。僕は大阪の地理が分からないので、あそこでビラまきしたらいいよなどと教えてください。明日は心斎橋や戎橋でジヨウ・ホウヤと幟を振って配ろうと思ってるんで。
映画を一人でも多くの人に見て欲しい。どうか皆さん色々ご指導ください。
ありがとうございました!」

縁起担ぎにと観客全員が立ち上がっての三本締めが行われ、暖かい雰囲気の中舞台挨拶は終了した。
第七藝術劇場での上映は今週末11/22(金)まで。年齢に関係なくオールドルーキーの皆さま、劇場にお越しください!

(Report:デューイ松田)