シネアストオーガニゼーション大阪(CO2)の第8回助成作品『蒼白者 A Pale Woman』(監督・常本琢招)が関西に帰って来た。主演は韓国の実力派女優『息もできない』のキム・コッビ。コッビが愛を捧げる幼馴染のピアニスト役に『ヘブンズ・ストーリー』の忍成修吾、“血は水より濃い”あまりの確執でコッビと対決する母親役に久々にスクリーンに登場した中川安奈、忍成修吾の恋人役に『先生を流産させる会』の宮田亜紀、『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱(こ)を使う』長宗我部陽子、ピンク映画界の重鎮・渡辺譲監督らが出演。

東京・仙台では一般公開されたが、関西では2012年3月の第7回大阪アジアン映画祭のインディ・フォーラム部門での上映以来、約1年ぶり。
1週間の限定ながら十三・第七藝術劇場、神戸・元町映画館、京都みなみ会館の同時公開だ。
11/2の公開初日、常本監督と宮田亜紀さんは元町映画館での舞台挨拶を終え、第七藝術劇場の舞台に登壇。

生業のTVディレクターとして大阪で仕事をする機会が多く、気取りのない地元の人々に引かれたという常本監督は、49歳(制作当時)の新人監督としてCO2での映画制作に取り組んだ。
キム・コッビさんの起用については、2011年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭で紹介されたことがきっかけだった。
「物腰が柔らかくて可愛らしい感じなんですけど、“感情の埋蔵量が大きい人”だなと感じました。
ニコニコ笑っているけど、この人に拳銃を持たせたらどうなるか。狂気を持ってる役柄を与えたらどうなるかという妄想が膨らんでオファーしました。撮影では思った以上に応えてくれて、後半は細かく指示しなくても僕の考えを察して演じてもらえました」
宮田亜紀さんの起用については「コッビさんの柔らかさに対して、シャープさを求めてオファーしました」と語る。

忍成修吾さんを巡ってコッビさんと女の意地をかけた対決をした宮田さん。コッビさんについて宮田さんは、「普段の可愛らしいんですが、お芝居が始まるとキリッとして変わる、自分の意見を持っている人」
「撮影現場では、待ち時間に大阪弁のセリフをiPhoneに入れて欲しいと頼まれて、あれもこれもで結局全部吹き込みました(笑)」
劇中コッビさんが完璧なアクセントで大阪弁を話すシーンがあり、日本語指導の担当者は付いていたが、大阪出身の宮田さんの協力もそれをサポートしたようだ。

忍成さんを救うため、狂気すら感じるほど徹底的に邪魔な相手を罠にかけるコッビさんの役柄。愛ゆえの行動に共感できるかという質問に宮田さんは、
「 コッビさんが、“1人の男性に対して女性が気持ちを貫いて行くという行動をどう思うか”という質問に、これは映画なので重い表現ですけど“あると思う”と答えていました。私も自分の好きという感情を分かりやすく伝える方なので、そうでない愛し方がわかりません(笑)」と少し照れながら率直に語った。

最後に常本監督は「自分が小さい頃から観てきた犯罪映画を再現したかったんですが、今の世の中ですとこういう犯罪映画の枠組みが見られない、広まらない状況です。気に入ってくださった方がいれば広めて頂けたら」と締めくくった。

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★上映バージョンについて
大阪アジアン映画祭での上映では時間との戦いになったという常本監督。その後編集でシェイプアップし、カラコレを再調整したバージョンが今回上映されたものだ。東京公開からも20秒ほど手を加えられ、シンプルになった分各キャラクターの葛藤が伝わり易くなり、既に観た方も楽しめる再編集版となっている。

★お得な<キム・コッビ割>
同じく関西公開されるキム・コッビ主演の人物・スプラッター共に激辛描写が冴え渡る映画『クソすばらしいこの世界』(監督・朝倉加葉子)と当日連続鑑賞で2本3000円になる<キム・コッビ割>も各劇場で実施中!
この機会にキム・コッビが演じる『蒼白者』の“愛ゆえの狂気”、『クソすばらしいこの世界』の“血まみれアイデンティティバトル”をぜひ一緒にご堪能頂きたい。

★シネアストオーガニゼーション大阪(CO2)とは
映像制作者の人材発掘を行い、大阪を映像文化の創造・発信拠点とする事を目指して、2004年にスタート。劇映画企画を募集し、その制作に対して助成金や制作協力でバックアップを行っている。目指すところは作品の完成ではなく、作品の認知と才能を持つ人材の今後の飛躍とし、「CO2上映展」の開催や2011年度からは「大阪アジアン映画祭」でのプレミア上映の場を設けている。

(Report:デューイ松田)