第146回芥川賞受賞作・田中慎弥の同名小説を、日本を代表する監督・青山真治が映画化、9/6より公開中の映画『共喰い』が、3日より韓国の釜山市で開催されている、アジア最大級とされる第18回釜山国際映画祭にて公式上映され、監督の青山真治さん、出演の木下美咲さん、脚本家の荒井晴彦さんが登壇、舞台挨拶を行いました。
映画祭初日の3日朝10時からの上映かつ、韓国では[19歳以下の青少年鑑賞不可]とされた本作でしたが、釜山映画祭のメイン会場である「映画の殿堂」の800席がほぼ満席となりました。前日に発売したチケットもその日中に完売しており、注目度の高さが伺えます。
壇上では、韓流映画が好きだという木下美咲さんが事前に特訓したハングルで、「釜山に来られて嬉しいです。共喰いをぜひ楽しんで観てください」と挨拶すると、会場から温かい歓声が上がりました。また上映後には、「映画祭初日の1本目の記念すべき映画です」と、登壇者全員に観客席の女性からプレゼントを渡される一幕もありました。質疑応答では、韓国の映画ファンから、映画の中で使われた「うなぎ」「川」といったモチーフについての意味論の質問も多く出て、本作らしい賑わいとなりました。また木下美咲さんは、同日夜に行われたレッドカーペットも歩きました。
なお、青山真治監督は、今回の第18回釜山国際映画祭にて、アジアの精鋭新人監督の作品で行われるコンペ「NEW CURRENT」の審査員を務めています。

■青山真治監督のコメント
釜山のお客さんは、若い観客が多いですが、本当によく映画の内容を凝視していて、質疑応答で出た質問も深く洞察力のあるものばかりで驚かされました。今回は脚本家の荒井晴彦氏と一緒の登壇とあり、原作から脚本化した課程なども話せて、映画祭ならではのトークができて嬉しかったです。
■出演・木下美咲さんのコメント
普段から映画をたくさん観ている韓国の映画ファンの皆さんが『共喰い』を観てくれて、昭和とか平成といった時代感や、様々な作品の意図を深く読み取ってくださっていたことに、とても驚きましたし、感動しました。ひとつの映画として『共喰い』を観てくださっていたので、私もそれにちゃんと応えていかなきゃと感じました。初めて歩いたレッドカーペットは、とても緊張しましたが、皆さんが声をかけてくれたので、嬉しかったです。

本作『共喰い』は、昭和最後の夏の山口県下関市を舞台にした、暴力的な性癖がある父をもった17歳の男子高校生の濃密な血と性の物語。人間の欲をあぶりだし、心の奥底に潜む闇を映す濃厚で豊穣な物語に、映画オリジナルのエンディングが用意されており、原作者の田中慎弥は完成品を観て「ああ、やられた」とコメント。いわゆる「原作ものの映画化」とは一線を画す、奇跡のコラボレーションが実現しました。
公開後には、観賞後の人々から「衝撃!」「まぎれもない傑作」とのツイートが相次ぎ大いに話題となっています。